ページ内を移動するためのリンクです。
ここからメインコンテンツです

[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2014年02月18日

「人のいない町」で生まれた子

nekoblog235-1.jpg

 ぼくの名は「りく」。2か月半前に生まれた男の子。ぼくが生まれた町は「ケイカイクイキ」といって、ニンゲンがいない町だったよ。母さんはぼくたちきょうだいを育てるために、必死で食べ物や水を探して灯りのない町をさまよったよ。そのうち母さんとは離れ離れになって、ぼくたちきょうだいは、寒くてひもじくてさみしくて、心細くてたまらなかったとき、あの人に会ったの。
 ぼくたちは、ニンゲンに抱かれたことも話しかけられたこともなかったけれど、防護服を着たあのニンゲンの女の人は、ぼくたちのために、ひとりで餌場にごはんをいつも配ってくれた。そして、ある寒い日にその人にきょうだい1匹ずつ順番に保護されたの。
 それで初めて「おうち」という暖かいものの中に入ったんだ。だけど、ぼくたち兄妹はみんな風邪をこじらせていて、その人のおうちには保護した猫が60匹もいて、「その子たちの風邪をこちらで治して里親をみつけましょう」という助っ人があらわれたんだ。
 それが、ぼくたちが今いる、浦安市の「キャットラウンジ猫の館ME」。最初は、ニンゲンと一緒に暮らすのは怖かったよ! だけど、ここには、運命の糸で結ばれてるに違いない里親さんが現れるのを待っている先輩保護猫がいっぱいいて、その半分以上がぼくと同じ被災地福島の「人がいない町」からやってきた猫。先輩に遭えて、ぼくたち、ほっとして、あっという間にやんちゃな子猫の「素」に戻っちゃった。福島では、ひもじくて遊ぶどころではなかったもん。
 ずっとのおうちが見つかるまでの名前を、ぼくたちきょうだいは保護された時、つけてもらったんだ。キジ白のお兄ちゃんが「ころ」で、黒白のお姉ちゃんが「めい」、ぼくが「りく」。3匹の頭文字を合わせると、保護した大型店舗の名前になるんだって(笑)。

nekoblog235-2.jpg

 暖かいおうちと仲間のあるのがうれしくて、ころにいちゃんとぼくは毎日毎日プロレスごっこをしてるよ。いろんな猫好きがきて、いっぱい遊んでくれる。ころにいちゃんはもう「ずっとのおうち」が見つかってもうすぐ卒業しちゃうの。だから、プロレスごっこにも気合が入ってるんだ。

nekoblog235-3.jpg

 めい姉ちゃんは、やさしいまどか先輩に甘えて、一緒に猫ちぐらの中で眠ったりしてる。母さんのこと、思い出してるのかなあ。まどか先輩は、シャムミックスのガクト先輩と兄妹で福島で保護されたんだって。兄妹揃って恥ずかしがり屋さんで、ガクト先輩はカメラが苦手なんだ。あんなにイケメンなのになあ。

nekoblog235-4.jpg

 キジ白の玉三郎先輩も、茶トラのふたば先輩も、福島生まれ。優男同士、気が合うみたいで、しょっちゅうつるんでる。

nekoblog235-5.jpg

 やっぱり福島から来た黒キジのにゃんぴー先輩は、ぼくたちよりちょっとお兄ちゃんの10カ月。ニンゲンも遊びも大好きで、館にお客さんがくると、真っ先に迎えに行くんだよ~。

 そうそう、ぼくは会わなかったんだけど、この前まで館にいた、みん先輩とひさまろ先輩のハッピーエンドの物語を聞いた時は、うるうるしちゃった! みんお姉ちゃんは、福島のシェルターからここにくるまでに、すでにもらわれていくお家が決まってたんだって。可愛がってた猫を亡くした人が、館に来て、オーナーと一緒にシェルターの保護猫の写真を見てて、亡くした猫にそっくりのみん先輩を見初めたってわけ。それで、館まで連れてきてもらって人に馴らしたうえでもらわれていくことになったんだって。 
 でも、みん先輩には、シェルター時代、いつも2匹で寄り添ってた仲良しの雄猫がいたの。みんお姉ちゃんと同じくらいものすごくビビりのひさまろお兄ちゃん。その話を聞いた里親さんは、「ひさまろくんも一緒に」と言ってくれたの。

nekoblog235-6.jpg

 今じゃ、こんなにラブラブでしあわせそうなふたり。ひさまろお兄ちゃんは、NHKのニュースを観るのがマイブームなんだって~  被災地のことが気になるんだね、きっと。

 ぼくたちきょうだいが館にやってくる2か月も前に、福島からやってきて、全然人に馴れず、ケージに閉じこもってた先輩がいたんだよ。まさはる先輩。「フクヤママサハル」ってニンゲンに似たイケメンだからその名前をもらったのに、シェルターにいたころからまったく人に馴れず「狂暴」 で鳴らしたつわもの。だけど、館のオーナーが「シェルターにそのままいたら、こんなタイプの子は里親はまず見つからない。引き取って、心を開かせて、おうちを見つけてやりたい」と連れてきたんだって。

nekoblog235-7.jpg

 ここにきても、シャ~!って脅すし、手は出るし、「ダンッ」って足踏みして仁義は切るし、スタッフのひとたちを手こずらせたまさはる先輩。だけどね、ラウンジで他の猫たちが愉しそうに遊んでいるのをケージ越しに眺めているうちに、自分も加わりたくてたまらなくなったみたい。

nekoblog235-8.jpg

 おとといなんて、自分でケージのカギを開けて、ラウンジに出てきたの。それで、僕たちと一緒に遊んだんだ! ニンゲンがまだちょっとこわくて、椅子の蔭にすぐ隠れてたけどね。
 ぼく、知ってるよ。まさはるお兄ちゃんは、ほんとうは、ものすごく甘えん坊なんだってことを。人のいない怖いことだらけの町で、必死に生き抜いてきて、ニンゲンの優しさに出会ったことがなかっただけなんだ。
 ぼくは、きのう、まさはるお兄ちゃんと一緒にボックスの中でくっついてお昼寝したよ!ぼくにも、めい姉ちゃんにも、まさはるお兄ちゃんにも、先輩みんなにも「ずっとのおうち」が見つかりますように!

 この前の吹雪の日も、ぼくたちはぬくぬくと眠っていられた。でも、福島の「ケイカイクイキ」では、まだまだたくさんの猫たちがひもじくて凍える冬を過ごしてる。餌置きや保護活動を頑張っているボランティアさんたちを応援するために、猫の館では今度の、22日土曜日に、福島で保護した猫たちの譲渡会を開くんだって。被災地で家をなくした猫や被災地で生まれた猫たち約20匹がエントランスとショップのスペースにやってくるよ! 東京近辺で「猫を家族に」と思ってる人がいたら、ぜひ、会いにきてね。ついでに、ラウンジにいるぼくたちにも会いに来てくれたら、うれしいな。

 そして、みんなを代表して、ぼくからのお願い。被災地にいま生きているいきものたちのこと、けっして忘れないで、見捨てないでほしいんだ。

(キャットラウンジ猫の館ME・・・浦安市堀江6-9-1
  福島猫譲渡会・・・2月22日13時~16時
  現地ボランティアへの支援物資も募集します)

 

写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

Instagram

カテゴリ: 道ばた猫日記
  • ツイート
  • いいね!

みにゃさまのコメント

読んでて涙が出てきました。
まだまだこちらにも沢山の子が寒さや飢えで辛い思いをしてるんですね。
一匹でも多く、『ずっとのおうち』が見つかりますように。
さぁ、私たちもできる事をしましょうよ!
日本中に大勢の保護活動を頑張ってる人や団体さんがいるんですよね。

by くま 2014-02-18 13:35

涙があふれて来ます。
大雪に見舞われて、寒さと空腹と戦うケイカイクイキの子供達。。。。

たくましく迎えが来るのを待っててくれますように・・・・

そして、救えますように。。。

by すずおんち 2014-02-18 15:33

生まれながらのノラちゃんを引き取ったことがあります。獣医さんに連れて行ったら’歯はぼろぼろ、腎臓系の病気がある、脱水症状もある、年はというと、どう見ても10歳以上?なのに5~6歳だ言われ、どれだけ厳しいにゃん生を送ってきたのか、と思いました。慣れるのに半年かかりました。それまでは顔を見るなりシャーシャー、ごはんを差し出す私の手にトリプルパンチ、ゲージから出せば家具の下に「引きこもり」、汚れた毛を何とかブラッシングだけでも、とブラシを見せた途端ブラシめがけてシャーッ+マルチパンチ(^o^;) でも、そういう子に限って慣れたらとっても甘えん坊で、名前を呼べばびっこの足を引きずりながら、犬のように寄ってくるのです。慣れたらその心地よさに、ブラシを出した途端に寄ってくるまでになりました。引き取ってから1年半の命でしたが、ちゃんと埋葬もしてあげられたし、厳しかったにゃン生の最後は幸せだったかな、と....どんなに凶暴な猫でも惜しまず愛情を注いであげたらきっとわかってくれます。時間はかかるでしょうけど。一つでも多くの命が助かりますように

by けいこ 2014-02-18 15:52

猫だいすき❗白いのいいね

by えりか 2014-02-18 19:09

FBにシェアさせていただきました。
週末、ラウンジに行ってきます♪。
みんな、幸せになれますように。

by ぽんきち 2014-02-18 20:58

読んでいて、涙が止まりませんでした。
ウチにも拾ってきたにゃんこ6匹いますが、みんな個性派揃いです(^ω^)
譲渡会場へ行くことはできませんが、みんにゃ里親さんが見つかるといいですね

by じゅん 2014-02-18 21:17

猫が大好きだけど、まだまだ飼える環境じゃないけど、猫にゃん達に会いに行ける日を探して行けたら行きたいと思います。

by さよ 2014-02-19 00:57

>みなさま

 猫は、人に寄り添って暮らす生き物。「人のいない町」で生まれて、ニンゲンを知らずに生きていかなければいけない猫がこれから増えていく前に、前線のボランティアの方たちは、待ったなしの危機感を持って、日々心を砕いて活動していらっしゃいます。直接活動に参加できなくても、いろいろな後方支援はできます! 
 けいこさんの元ノラちゃんも、最後の日までけいこさんのそばで安心して暮らせて、幸せだったと思います。人がいっぱいいる町でも誰も手を差し伸べない「人のいない町」にはけっしてしたくないですね!!

by 道ばた猫 2014-02-20 15:19

人のいない町で生まれて、なんとか生き抜いてきた子たち。
みんなに素敵な「ずっとのおうち」と家族ができますように!
そしていまでも「人のいない町」で震える子(猫に限らず)にも、暖かい手が届きますように。
それぞれが、それぞれのできることで支えていきたいですね。

by みゆ 2014-02-25 09:16

>みなさま

 まさはるくんはいま、ラウンジ内探検中。子猫を舐めてやるなど優しい一面をみせています。まさはるの名は、保護場所の○○ゴスポーツからとったそうで、保護した方は「フクヤママサハル」のファンというわけではないそうです~

by 道ばた猫 2014-02-28 09:00

とっても感動しました(涙)
(ずっとのおうち)見つかるといいですね。

by にゃんこ 2014-03-18 22:17

まさはるくんは、我が家のノアにそっくりです。
イケメン君だし、少し人慣れしてくれたら、きっとすぐ優しい飼い主さんが見つかる気がします。

リクちゃんも、可愛いし幸せになれるように心から願っています。

by めい 2014-04-26 00:20