あたたかな日が続いていますが、ここ古本の街神田神保町には、震災以来まだ客足が戻っていません。路地を歩けば、ごらんのとおり、閑散としたもの。
久しぶりに会ったのに、遠くから「しろちゃーん、ゆきちゃーん」と呼ぶと小走りに走ってきました。遠くから見ると、見分けのつかない白い2匹。兄と妹の路地猫です。切れ長の目元が印象的で、お兄ちゃんのしろちゃんのほうが尻尾が短く、より切れ長の目をしています。
3年前に初めてこの路地で会ったときは、お母さんのはなちゃんと3匹いつもいっしょの仲良し白猫家族でした。去年の冬、、17歳くらいだったはなちゃんが天国に旅立った後も、きょうだいは、2匹仲良く暮らしています。
2匹とも、17歳近く。白い毛並みは、灰色っぽくなっていますが、水色のきれいな眸は変わらず。民家の玄関先に発砲スチロールハウスを作ってもらい、近くの印刷所のおじさんや、食堂の板前さんや、古書店のお姉さんや、通りがかりの会社員やたくさんのひとたちに可愛がられています。路地猫たちのつつましい一生をそっと見守る神保町という街が、わたしは大好きです。
神保町に猫の多いわけは、戦後、ねずみたちが高価な本をかじってしまったので、ねずみ退治のため、古書店で猫を飼いはじめたということです。
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
Instagram