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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2011年11月29日

路地生まれの子

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 東京・中野の中野ブロードウェイ周辺には、飲食店が立ち並ぶ雑多な細い路地がひしめいていて、夕刻からにぎわっています。そのはずれの、人の流れのふっと途絶えた一角に、山桜の木が佇っていて、なんともレトロな不思議な空間があります。
 
 「新仲見世商店街」というのが、その空間の名前。戦後、長屋が分譲されたときに開いたいくつかの商店が始まりらしく、いまも昭和の匂いをぷんぷん発散しています。
 
 ここには、数匹の路地猫がちょろちょろしていて、この秋も、おちびちゃんが生まれました。とうに閉店してしまったもとスナックの扉の前にぽつんとすわっていた、ねずみくらいの大きさのこの子を見かけたときは、そのあまりの小ささに、胸がきゅんとなりました。
 
 そして、そっと心の中で話しかけずにはいられませんでした。「一緒に暮らしている地球を、人間が汚してしまって、ほんとうにごめんね。ここは、やさしい人がいっぱいいそうな町だから、寄り添って元気に生きていってね。りっぱな路地猫になるんだよ!」
 
 しばらくして、子猫のそばに駆け寄ってきたまだうら若い黒猫がお母さんのようでした。連れ立って焼き鳥屋わきの隙間に入っていきました。
 
 写真を撮っていると、ラーメン屋さんから年配の女性がでてきて、にこにこ笑いながら「まあまあ、おまえたち、写真とってもらってよかったねえ。皆さんがかわいがってくださるから、この子達はノラなのになつっこいんですよ」と話しかけてきました。
 
 「ごはんはね、このへんのみんなでやってるの。となりも、そのとなりも、その向かいも、みーんな猫がすきだから」ということで、ひと安心。よく見れば、あちこちにお水や餌皿が置いてあるのでした。
 
 ちょうどラーメン屋に、宅配が届き、宅配業者にも奥さんは「お寒いなかを、ありがとうございます」と何度もお辞儀をして受け取っていました。
 
 路地にあたりまえに猫がいて、人々も思いやりあいながら暮らしていた昭和の時代に、ふと紛れ込んだようなひとときでした。
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写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

ステキな写真とステキなお話、ありがとうございます。
心温まるひとときをいただきました。たくましく育ってほしいです。

by ダメかあちゃん 2011-11-30 23:51

なんて可愛いこと!
昭和レトロの飲食店街のような場所がまだ残っているのですね。
大都会ならではの光景かもしれませんね・・・

by たこやき 2011-12-02 21:13

本当に素晴らしいお話と写真です!!
感激してしまいました。
地域猫と言う取り組みでなくても自然にそうなるってすごいです。

しかしおちびちゃんのかわいらしさといったら!

by ぞのこ 2011-12-03 22:05