きのうは夜になって、都心でも雪がふりだし、夜の集まりを早めに抜け出しました。我が家は、坂をおりてまたのぼるので、雪が積もるとバスもとまります。坂上から20分ほど歩きになります。粉雪が音もなく降り積もっていくなかを、ときどき立ち止まっては「キレイ・・・」とためいきをつきながら坂上から歩いて家に着きました。
猫たちは、5匹とも、思い思いの場所でぬくぬくと寝ています。
「雪だよ。ほら」。そういって夜の窓を開けるまでは、猫たちはまったくそとの変化に気づいていないようでした。
うわっ! 3歳のケンジと1歳の菜っ葉が、窓辺で目をまん丸にしました。積もった雪は彼らははじめて。「なに、これ」とビビりながら問いかけます。
17歳のナツコとスーは窓辺にきません。まるで興味がないのか、なんとなく怖いのか。20歳のトラばあさんは、「えらいこっちゃ」といったふうに、いったりきたり。
私が庭に出ると、まずケンジがおそるおそる庭に出てきました。さすが唯一のボーイです。つられて菜っ葉が。そのあとが意外な展開でした。
猫は雪が苦手だとばかり思っていたのですが、ケンジと菜っ葉が雪の上で追いかけっこを始めたのです。2匹はどんどん浮かれ出し、木登りまで始める始末。じっと見ていたトラばあさんが我慢できずに追いかけっこにいつのまにか仲間入り。
3~40分ほどさんざん遊びまわって、菜っ葉とトラは満足げに家に入ってきました。が、ケンジはよほど雪が気にいったようで、通りの向こうへ出かけ、明け方まで帰ってきませんでした。帰ってきたケンジの肉球がまっ赤っかになっていたのはいうまでもありません。そして、よほど遊びつかれたのか、ぐたっと爆睡してしまいました。
観察するに、猫のからだは、防水の毛皮を着た状態のようで、雪はさして冷たくないようです。ただ、耳に雪がかかるのは、いやなようでした。
数年前、小林一茶の、未発表のこんな俳句が発見されたというニュースがありました。
猫の子が 手でおとすなり 耳の雪
この子猫ちゃんも、雪のなかをお出かけして帰ってきたのでしょうか。なんだか人間のこどもも、猫も、かわらないなあ、自然界のプレゼントに無邪気に浮かれるんだなあ、と思った雪の夜でした。じつは、私も浮かれてしまった一員なのですけどね(笑)。
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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猫'Sの反応の違いが可愛いらしいですね。
一茶の句も納得です。
by hyo 2012-01-24 22:42