新宿ゴールデン街での写真展が無事終わりました。足を運んで楽しんでくださったかた、ありがとうございました!
展示写真のなかで、「この写真がすき!」と言う声の多かったのは、この写真でした。夕陽のなかで影猫が啼いている写真です。「物語のよう。どんなシチュエーションですか?」とたびたび尋ねられました。
これは、先月、火事から復活したばかりの房総・明鐘岬の喫茶店「岬」を訪ねた日の写真。すぐ近くに房総の海水浴場発祥の海岸があるので、岬に行くまえにちょっと立ち寄ってみたのでした。
冬の海岸通りは、誰ひとりいません。海岸沿いの民家の庭先や塀のうえで、ひとなつこい猫さんたちが「にゃっにゃっ(退屈してたんです。かまってください)」と、話しかけてきます。
海岸線に沿って堤防のほうへ歩いていくと、コンクリートの長い塀の前で啼きながら行ったりきたりしている1匹の猫がいました。ちょうどオレンジ色の夕陽があたり一面を染めて、壁もオレンジ色に。壁に映る猫の影は、グレー。絵本のようでした。
堤防と反対の人家のあるほうを、人待ち顔で見ては、しきりに啼いています。お腹がすいているのかと思い、カリカリを何粒か(ゴハンを待っているのなら、あまりあげてはいけないと思って)あげても、心ここにあらずの風情で啼き続けます。
ちょうど通りかかった地元の人らしき女性に「このコはノラなんでしょうか?」ときいてみると、その女性は、「おうちはあるんですけどね」と言って含み笑い。
「この時間に毎日、おばあちゃんが犬を散歩させに通るんです。その猫は、その犬が大好きで、毎日ここで待っていて、いっしょに堤防の先端まで散歩して、またここで別れて家にかえっていくのよ」
そうだったんだ! にゃあにゃあ啼いて訴えていたのは、「まだ来ない、まだ来ない!」と言っていたのね。なんて一途な猫さんでしょう。
日が暮れるまでに岬に行きたかったので、おばあちゃんと犬と猫の散歩姿はみることはできませんでした。またいつか出会って写真を撮りたいものです。
影猫さんでない、本体の猫さんは、こんなべっこう猫さんでした。
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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猫が犬を待って一緒に散歩するとは、なんてラブリーなんでしょう!
その姿を見てみたいですねー。
by しのりゅう 2012-03-15 15:51