のっけから、驚かせてすみません。コブラではありません(笑)。ここまで豪快なおおあくびをする猫さんも珍しいでしょう。
紹介します。千葉県松戸市の大河原梅吉くんです。彼の家は、梅林とハーブ園を持つ、広い広い農家です。以前は、赤塚不二夫さんの愛猫菊千代にそっくりでその名も「菊千代」というフレンドリーな雄猫がいて、ハーブ園を訪れる人の人気を一身に集めていました。
その菊千代が死んで、おばあちゃまがさびしがって「猫が飼いたい、猫が飼いたい」というのでもらわれてきたのが、処分される直前の運命だった子猫。口の両脇のちょび髭がご愛嬌で、梅林のある家に来たから「梅吉」と名づけられました。
おばあちゃまの溺愛を浴びて育った梅吉、朝から晩まで一緒で、寝るときもおばあちゃまのマタのあいだ。梅吉がいたずらをすると「こらああ~~、梅吉~」とどなるおばあちゃんですが、すぐに「うめちゃんや~~」と猫なで声になるという、名コンビ。広い敷地の外に出て、行方不明になったことがあったので、いなくなっては大変と、外に出るときは長いリードつきの猫になり、1日に4回の散歩がふたりの日課となりました。
大あくび写真は、梅吉が来て1年くらいたった5年前の写真です。1歳というのに、すでにどっしりとエラそうな(笑)猫でした。
おととい、ひさびさにそのハーブ園を訪ねました。「梅吉くん、元気にしてますか」と奥さんに聞くと、「梅吉は元気なんですけどね」という返事。おばあちゃまがこの3月に急に亡くなられたとのことでした。
いつも「梅吉が死ぬまでは先に死ねない」というほど、梅吉を可愛がっていたおばあちゃま。なくなる前日まで普段通り働き、満開の梅のなか、小さなお孫さんと梅吉がビニールシートの上でおままごとをするのを目を細めて見守っていたそうです。
翌朝おきてこなかったというおばあちゃま。家族のかたはもちろんですが、梅吉の混乱はいかばかりだったでしょう。いまも、おばあちゃまの匂いの残る座布団や布団で寝ているとか。
いまは、リードなしの身になった梅吉くん、朝からのひとりの長い散歩を終えて、戻ってきました。おお、すっかり中年の貫禄。歩き方もじつにエラそうです。
「梅吉はおばあちゃんがいないってわかってるのかしら。全然変わらず、元気そのものよ」と、奥さんは言うのですが、梅吉の目の奥に、私はたしかに「悲しみ」を見たのでした。
でも、美しいハーブ園の四季と、みんなからの愛で、梅吉は少しずつ癒されていくでしょう。
おばあちゃまも、天国で見守っているよ! ちなみに、豪快でエラそうなのは外見だけで、おばあちゃまの秘蔵っ子だった梅吉くん、じつは、超ビビリのお坊ちゃまだそうです(笑)。
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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きっと、おばあちゃまが亡くなっているのは分かっていますよね。
それでも、梅吉くん元気でよかったですね。
by しのりゅう 2012-05-22 17:06
梅吉くんを残して逝かれたおばあちゃま、さぞ心残りだったでしょう。愛猫の最期を看取るのとどちらがつらいのだろう、なんてふと思ってしまいました。
今はただ、梅吉くんがずっと元気でいられるように祈ります。
by たこやき 2012-05-22 23:52
梅吉くんには、お空から見守っているおばあちゃまが見えているのではないでしょうか。
梅吉くん、元気で長生きしてね。
by なお 2012-05-24 00:12