浦安の漁師町、猫実(ねこざね)を歩いていると、自転車が一台やっと通れそうな細い路地の入り口に、「はなや この裏です」という手書きの小さな看板が。路地をひょいとのぞくと、黄色い太った猫と目が合いました。
民家の庭先を借りて開いているちいさなお花屋さんでした。黄色い猫は、「夕方まで天気がもつかなあ」と心配げに曇り空を見上げていましたが、私が客だとわかると、うれしげに庭に先導してくれました。
「このこはね、お客さんが来てくれるのがとってもうれしいの。いつも路地で客待ちして、呼び込みしてくれるんですよ」と、お花屋さんの女性。
黄色い猫は、次郎くん7歳で、座布団の上には茶太郎くんというキジトラ8歳もいました。猫の話をしてるうちに、お花屋さんは、ぽつりぽつりと、身の上ばなしを。
その方は、通りに面した店をかりて、ご主人と一緒に花屋をなさっていたそうですが、再開発のため、立ち退きを迫られました。立ち退きの心労もあったのでしょう、ご主人が急死。奥さんと猫たちが残されました。
「ここを使ったらいいよ」と言ってくれた人がいて、奥さんは庭先で小さな花屋を再開。営業時間ちゅうは、猫たちも庭を離れません。
茶太郎は、8年前、道ばたで自転車に乗っていた奥さんの足に必死で這い上がってきたのを、拾われたそうです。次郎は、ゴミ集積場に捨てられていたとか。2匹とも、うまれたての命を夫妻に育てられたのでした。だから、猫たちは、亡きご主人の忘れ形見。
「いろんなことがいっぺんにあったけどこうして花屋をやっていられるのも、猫たちのおかげ。この子たちを育てなきゃ、と思うから、明日もがんばろうって力が湧いてくる。ちゃーんと猫って恩返しをするんですよ、人の気持ちがわかってね、わたしを励まそうと一生懸命。おかあさん、元気だしてね、僕たちがついてるよ、って」
奥さんが種から育てるという、ここのお花は、とてもいきがよく、長持ちすると評判です。猫好きもお茶を飲みに集まってきます。茶太郎くん、次郎くん、これからもしっかり奥さんをサポートしてね!また、お花買いに行くね。
我が家のわけあり5匹たちも、食っちゃ寝、食っちゃ寝、の毎日ですが、しっかり飼い主の元気のもとになっています。 猫って、そこにいるだけで、恩返ししてるのだ(笑)。
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
Instagram
私も、小さい時に保護した子(5匹)達にいつも元気をもらってます。人間である私達の言葉をわかっているかのような目で見てくれます。うちの子達はたまたま我が家に来たわけで可愛そうな子達は他にもたくさんいるんですが、その子達の分までずっとずっと一緒にいれたら良いな~、といつも思っています。ホントにうちの子達も食っちゃ寝、食っちゃ寝の生活です(笑)
by りんりん 2012-05-29 20:19
涙が・・・
猫達って、やさしい・・・。
新聞の折込広告のタウンニュースに「里親さん募集」のコーナーがあります。猫は大好きだけど、うちでは飼えません。
どうか新しい出会いがありますように、と祈らずに入はいられません。
by りょう 2012-05-30 08:14