[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2012年06月05日

仔猫の季節

　５月はじめからちょうどいまごろにかけては、毎年、路地にも漁村にも、春生まれの仔猫たちがいっせいにデビューする季節です。

　人目につかないところで必死に子どもたちを育てていたノラ母さんは、ころあいを見極めて、ちゃんと餌をもらえる場所に子どもたちをつれてきます。東京の下町の路地でも、うら若いノラの黒母さんが、ハチワレの仔猫が路地の人のくれる餌を食べる間、そばでずっと見守っていました。

　路地に仔猫が走り回るのは微笑ましい一方で、ノラのままで大きくなるのは寿命も短いだろうし、切ない思いもいっぱいするのだろうなと、複雑な思いです。それでも、あとひと月もしたら、このはちわれちゃんも、いっぱしの路地猫の顔になるのでしょう。「やさしい人間」と「いじわるな人間」の分見け方も、ちゃんと母さんから教わって、母さんに子離れされるのでしょう。生まれてきたからにはしっかりたくましく生きるんだよ！

　以前、このブログで２回紹介したことのある、中房総の花はなの里にある喫茶店「ダム」にも、母さんプラス５チビちゃんのあわせて６匹が増えていました。なんと、ダムはいま、犬５匹、猫２０匹の大所帯です。

　「ダム」のマリコさんの話では、４月半ばに迷い込んできたノラが、ガツガツガツと餌をたいらげた翌朝、５匹の仔猫を出産したのだとか。母さんもキジトラで、仔猫たちもみんなキジトラ。

　「里親を探そうと思ってたんだけど、仔猫たちを見てるうちに、キジトラきょうだいが５匹

いるのも面白いかな、と、うちにおくことにしたの」と、マリコさん。きっと、情が移って可愛くてたまらなくなったにちがいありません。それにしても、以前には半身付随のさっちゃんをひきうけ、今回も母子６匹を一気にひきうけるなんて、なんともどーんと懐の深い女性です。スレンダーで優しげなかたなのですけどね。

　母さんはマミちゃん、仔猫たちは「ミント、バジル、うめ、しそ、はっぱ」という名前をつけられました。ピザの美味しいこの店にぴったりの、なんて可愛いなまえ！　「窓から見えた植物のなまえをそのまんまつけたのよ」とのこと。「このこは、ミント」「このこはたぶん、しそ」「このこはバジルかな」と紹介されたものの、私にはまったく見分けがつきませんでした。だって、全員キジトラで、全員しっぽが長くて、全員器量よしで、ごちゃごちゃ動き回っているんですもの（笑）。

　でも、このつぎ、ダムに行くときには、個性がはっきりしてきて、見分けることができるでしょうか。ダムを訪れる楽しみが増えました。

写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹茉莉子（さたけまりこ）

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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