大きなダンボールに入れられて公園に捨てられていた、生まれたばかりの三毛猫3匹。見つけたのは、ルイさん。(そう、先月ご紹介した「盲目のラブリー福ちゃん」も、ルイさんが見つけて助けてくれたのでした)。
11年前のクリスマスイヴの日でした。ルイさんは、小さいときに接種したポリオワクチンによる後遺症を結婚後に発症、愛妻のからだを気遣う旦那サマから「もうこれ以上捨て猫を拾ってはダメ!」と言われていました。でも、この寒空の下に、見捨てるわけにはいきませんでした。
3匹を連れ帰ったルイさんは、チラシを配るなどして、懸命に里親探しをし、2匹の三毛はすぐに里親がみつかりました。残る1匹の三毛も、お父さんに連れられた小学生の男の子が訪ねてきて、「かわいい!」と気に入り、もらってくれました。
ところが、次の日、男の子は猫を返しにきました。連れて帰ったら、お母さんが「口の周りが白くない猫はいや。ヘンな模様で可愛くないから返してらっしゃい」と言ったとのこと。
たしかに、その猫の口周りには、いわゆる「しょうゆ染み」模様がハンパなくあります。ほかの2匹にはなく、拾ったとき、ルイさんは汚れかと思ってゴシゴシ拭いたほどです。
返されたいきさつを聞いた旦那サマが怒りに怒って言うには、「そんな家にもらわれなくてよかった。うちのこにする!」。
かくして、その三毛はルイさんちの4匹目の猫になりました。ルイさんは、イヴの日にやってきたから「イヴ」という名を考えたのですが、旦那サマは「まりや」にすると言います。
大ファンであるシンガーの名前です。そんなトクベツな名前をつけるとは、きっと仔猫に少なからぬ愛着が芽生えたのでしょうね。だって、まりやは、こんなに愛らしい模様の三毛ですもの。
「ヘンな模様」なんていう人は、まるで見る目がないのです。まだ2等身だったチビまりやの面倒を見始めたのは、片目が見えなくて不治の病を持ったオス猫のルビーでした。せっせと舐めてやったり、一緒に抱き合って寝たり。でも、ある朝、ルビーは廊下で冷たくなっていて、その顔をまりやが懸命に舐めていたそうです・・・。
ルビーなきあとのまりやは美しく成長。でも、旦那サマは、まりやのしょうゆ染みを眺めながら「まりやはブスだから、お父ちゃんちの子になったんだよね~」とうれしそうに話しかけるのだとか。ルイさんちはマンションの5階ですが、旦那サマが仕事を終え、エレベーターで上がってきて5階へ踏み出す一歩を、まりやは居間にいても聞きつけ、玄関に走り、いそいそとお出迎えするそうです。
3年前・・・まりやがやってきて8年たったある日のこと。玄関の靴箱のうえに寝そべっていたまりやを見た旦那サマとルイさんは、同時に大声を出しました。「あーっ、ハートがある!」。
なんと、まりやの両うしろ足の黒い模様が合わさって、やさしいハートになっていたのです! 8年間も気づかなかったのが不思議です。ハートを見つけた二人は、とてもとても幸せな気持ちになったのでした。
そして、まりやのハートを見つけた後、ルイさんにはいいことがいっぱい続きました。病気の進行で書く気の失せていた童話をまた書き始め、文章や猫を通して気持ちのいい仲間がどんどん増えていったこと、応募した童話で今年の千葉児童文学賞をもらったこと、病気とともに一日一日を精一杯生きていけばいいと思えるようになったこと・・・。
まりやのハートは、いのちを救ってくれたご夫婦への、まりやちゃんからのプレゼントだったに違いありません。
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道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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泣かずには読めません。
本当にありがとう。
うちには、3匹の猫。
一緒に暮らせて本当に幸せです。
by フー子 2012-08-28 11:45
思わず顔がニコニコになるお話ですね。
そして、このなんとも言えず暖かくかわいらしいハート。
エピソードにピッタリの幸せな形ですね。
by はにー 2012-08-28 14:34
ふむふむ。
ハートはあちこちに隠れているんですね。
茉莉子さんもハートを見つける天才ですね。
うちのチャチャの鼻にもハートを見つけてくださってありがとうございます。
by ken chan 2012-08-29 00:16
なんて優しいおはなし。
涙がでるけれど、心があったかくなります。
やわらかなハートまりやの優しさと一緒なんですね。
by りょう 2012-08-29 08:03
ワクチンポリオなんですね。私は野生株のポリオです。ポリオの会で3年ぐらい前から、生ワクチンから不活化ワクチンを訴えてきました。来月からやっと不活化への切り替えが承認されました。
我が家にも14歳のアメショーがいます。顔にシミがあるまりやちゃんは、神様から愛されて❤をプレゼントされたのね。
いいお話をありがとう!
by 榊 明美 2012-08-29 23:29
まりやめっちゃ可愛いですね~~。
ルイさんの旦那さま、優しい方ですね。
心が温かくなりました。
佐竹さん、いつもいいお話、ありがとうございます。
by しのりゅう 2012-08-31 13:25
榊明美さん
きのう9月1日から、明美さんたちの訴えが実を結び、ポリオの不活化ワクチンに切り替わりましたね。ルイさんは6年前に、後遺症の発症で車椅子になったときはほんとうにショックだったそうです。いまも、1日3回の痛み止めの服用と週2回のリハビリ通院を欠かせませんが、ある程度動ける今に感謝の日々だと言います。ルイさんの笑顔はとってもとっても素敵! 明美さんも笑顔の素敵なかたなのでしょうね。アメショーちゃんによろしく!
by 道ばた猫 2012-09-02 02:10
ねこ・・・ってちゃんとここ!っていうところで暮らせるようになっているんですね!何気に倖せを運んできてくれてますね・・。うちにいる五匹の子達もちゃんと小さな幸せ・・私達におすそ分けしてくれてるような・・。
by りんりん 2012-09-02 10:00