東京の下町、根津神社界隈には、昔ながらの路地が残っています。そんな路地にあるT文具店の前を通ると、ソライロアサガオの葉に覆われたお店を、何匹かの猫さんたちが出たり入ったりしていました。
3年前に通ったときにも、たしか6~7匹の猫がいました。文具店のおばさんは、捨て猫をほおっておけないかたなのです。
いまも、6匹。猫さんを紹介してもらいました。
これが、クロちゃん。ころころして、コグマのようです。もと捨て猫で、1歳。いちばん人懐こいコです。
このコは、風太。6歳。レッサーパンダの風太が人気の頃に、迷い込んできました。
お店の売り物のなかから、がさごそ飛び出してきたのは、白黒でまだ幼な顔の女の子モモちゃん。このコもある日、この路地にあらわれた(たぶん捨て猫)そうです。このほか、最近別宅に入り浸りのカンナちゃん、根津神社から引っ越してきたオジサンの2匹がいますが、外出中。
そして、この茶シロの1歳、なかなかにきりっとした猫さんが、ムンクちゃん。
えっ、ムンクちゃん?なんとシュールな。思わず聞きなおしました。おばさん、にこにこ笑ってムンクちゃんの名前の由来を話してくれました。
ちょうど1年前の台風襲来の直後。この路地を「にゃ~~おおおお、にゃあおおおお~~~」と叫びながら、行ったりきたりしている、仔猫がいました。「これくらい小さかったの」と手で示してくれたのは、コッペパンほどの小ささ。。生後1ヶ月ちょっとでしょうか。
お母さんと離れて、台風がやってきて、知らない路地で、どんなに恐ろしかったことでしょう。(捨てられたのかな) でも、その猫は、文具店さんが保護しようとしても、ゼッタイにつかまりませんでした。ひたすら「にゃおおお~~~、にゃおおおおおん」と絶叫して三日三晩。 ゴハンを置いても、怖がって食べにきません。ひもじかろうと、ゴハンを放ってやると、感極まって「ウマウマウマウマウマウマッ」といいながら食べました。
路地のひとたちは、「テレビに出せるね」と言い合ったそうです。ちょうど、「しゃべる猫」が注目を集めていたのでした。 ゴハンをあげるたびに「ウマウマウマウマウマ」と感激してくれるものの、一向に近寄らない仔猫を保護するため、文具店さんは、獣医さんから捕獲器を借りました。
捕獲された仔猫は、さらに絶叫したでしょうね? いいえ。仔猫は、捕獲されて家の中に入ったとたん、安心しきって叫ばなくなったのですって。そして、ゴハンを食べるときも、もう「ウマウマウマウマ」とは言わなくなってしまったのでした。
いまは、ごらんの通り、甘えん坊の店猫に。ほかの猫たちとも仲良くやってます。仔猫時代に三日三晩叫び続けたために、ムンクちゃんという名前が残りました。あのとき叫びすぎたためでしょうか、いまはすっかり無口だそうです。安心しきって、穏やかな猫さんです。
文具店のおばさんは言います。「ムンクとモモがもう甘えん坊で、私が夜布団に入ると、2匹で上に乗っかってくるの」。ムンクちゃん、この調子で、すくすく育って、おばさんを「重いよ~~」って叫ばせないようにね!
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
Instagram
我が家にも性格が全く正反対の2匹のにゃんちゃんがいます。オス同士なのですが仲良くしています
by 岸野香代子 2012-10-02 22:15
優しい人に巡り会えて良かったね、とネコ語で伝えたくなりました。
by レオ 2012-10-02 23:15
どの子もふくふくしていますね♪
かわいい~~!
by りょう 2012-10-03 14:54
どこにも救ってくれる人がちゃーんといるんですね・・。ムンクちゃん、モモちゃんいつまでも幸せに・・。
by りんりん 2012-10-07 21:34