[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2012年10月16日

花屋のはなちゃん

　観光客でにぎわう水郷潮来から橋をひとつ渡った香取市小見川は、昔ながらののどかな町。小見川の猫好きたちが「美人猫！」と口をそろえるアイドル猫が駅前大通りのお花屋さんにいます。その名も、はなちゃん。推定年齢４～５歳の女ざかり。

　花屋のはなちゃんだからって、楚々としたカスミソウなんて思い浮かべたら、「ブー！」です（笑）。はなちゃんは、ごらんの通り、タフで自由で目ヂカラのつよい、まさに胸のすくようなイマドキ美人さんなのです。

　お花屋さんが猫缶を指でコンコンッとはじくと、どこにいたってすっとんでくる食いしん坊のはなちゃんです。お皿にいれてもらうのも待ちきれず、缶に顔を突っ込むところも、そのへんのヤワな坊ちゃん嬢ちゃん猫と違って、またかっこいい！

　そう、このはなちゃん、ご推察どおり、もとノラです。３年前の１１月、「あ～～、おなかがすいた～～」といった感じで、啼きながら、ふらっと店に入ってきたそうです。毛があちこち固まって、痩せた、見るからのノラでした。猫を飼ったことも、猫のご来店も経験したことのなかったお花屋さん、ありあわせの、カツブシかけゴハンを提供。ペロリと平らげて、猫さんは出て行きました。また来たときのために、翌日は猫缶を用意していたら、再びご来店。そのまま、いついてしまったはなちゃんでした。

　翌３月には、６匹の仔猫を出産。それぞれに里親がみつかり、みんな幸せにくらしています。（その後、はなちゃんは避妊手術）。

　いまでは、「はなちゃん、いますか～」と来店する客もあとをたたず。立派に招き猫をしています。この日も、町の人たちがニコニコとはなちゃんの食事風景をみまもっていました。「子どもたちからお年寄りにまで人気でね～。　自閉症の青年も、はなちゃんの話になると、朗らかになるんですよ～」と、お店の方も嬉しそうでした。

　はなちゃんは、けっこう喧嘩っ早く、狩りも上手です。ある日のこと、花屋さんが作業をしていたら、カウンターの向こうで、お客さんがはなちゃんにこう声をかけていました。「あらあ、はなちゃん、捕ってきたの、エライねえ！」。虫でも捕ってきたのかと、カウンターから出てみれば、なんと、はなちゃんは、外から咥えてきた３０センチ近くもあろうクマネズミを、お客さんの足元にポトンと落として見せびらかしていたのでした！

　猫が何を捕ってきても、まずはほめそやすというのが、猫好きのあるべき姿。。お客さんが猫好きじゃなかったら、「ぎゃ～～～」って大変悲惨なことになってましたね。はなちゃん、お花屋さんへのご恩返しのつもりだったら、もうちょっと小物でいいからね。

　小見川町は、喫茶店、床屋さん、和菓子屋さん、スポーツ用品店、甘太郎焼き屋さん・・・行く先々で、猫が可愛がられていました。猫よけペットボトルのない町は、気持ちのよいものです。

　はなちゃん、ずっとこのままワイルドに、美しく！

　さて、猫びより１１月号が発売されました。人気漫画家ますむらひろしさんのインタビュー記事を書いています。「猫というのは可愛がった分だけせつない」というますむらさんの、さまざまな猫との交遊録、ぜひ読んでください！猫名画特集も見ごたえあります。

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道ばた猫日記ライター紹介

佐竹茉莉子（さたけまりこ）

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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