古い町の、昔ながらの喫茶店や食堂にふらっと入り、、町の人たちが町の話をするのを耳にするのが、好きです。「うちのヒトミが風邪ひいちゃってさあ」「そりゃ心配だ」っていうのが、猫の話だったりして。もちろん店に猫がいたら、最高!
東京・江東区のミルクホール若葉も、そんな店です。リリーちゃんという人見知りの三毛猫が、たいてい店の奥の、ストーブのそばの椅子の上に座っています。
ミルクホールと言うのは、明治政府が体力増強のためにミルクを飲むことを推奨して、全国にたくさんできた簡易食堂です。昭和になっても町の人たちに社交場として愛されました。いまではすっかり姿を消し、都内では、片手で数えられるだけになってしまったとか。若葉は、58年前から開いているそうです。ということは、寡黙でやさしそうなご主人と、話好きで気さくな奥さんは、80歳以上? そうはみえませんが・・。
常連客と奥さんが世間話に打ち興じているかたわらで、いつもご主人とリリーちゃんは、睦まじく「ふたりの世界」をつくっています。
とにかく、リリーちゃんは、ご主人が大好きでいつもべったり。ご主人が立ち働いているあいだは、つまらなそうな顔をして、目で追っています。ご主人もそんなリリーちゃんが可愛くて可愛くてたまらないようすで、見やってはにっこりと微笑みかけています。この風景を眺めているだけで、こっちもとても幸せな気持ちになるのです。
リリーちゃんは、チビノラのときに、ご主人に拾われたのだそうです。そのいきさつを、ご主人がとってもやさしい口調で聞かせてくださいました。
「そのころ、飼ってた猫がリリーという名でね、ある日、行方不明になってしまったの。探し回って、あっちのスーパーのほうにまでいってみたら、裏口のとこにノラのこんなちっちゃな兄妹がいてね、そばにね、『猫にえさをやらないでください』って貼り紙がしてあるの。えさをやるな、なんてそんなかわいそうなことを、と思って、えさをあげにいってたんだけどね、リリーがそれきり見つからなかったから、2匹をうちの裏につれてきっちゃったの。外猫で飼ってたんだけど、お兄ちゃんのほうは居つかなくって、この子だけが家の中に入ってきてね、2代目リリー」
リリーちゃんは、 ご主人にひっついて、かたときも離れません。「この人はね、私にはゼッタイに見せたことのないやさしーい顔を猫にはするの」と、奥さんがいうと、「猫にやっかみなさんな」と常連さんが言い、店内は笑いに包まれました。
奥さんが熱いお茶を何度もいれてくれて、ご主人が「はい」とせんべいや飴玉をそっと卓上に置いてくれて・・・・ここは、時間がゆったりと流れていく、とっておきの「猫のいる風景」なのです。
ほんとうは、リリーちゃんともっと仲良くなりたいのだけど、二人の世界に立ち入ることはできなさそうです。
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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リリーちゃんとご主人様の素敵な時間。ゆったりした猫時間。いつか訪ねてみたいお店ですね。
by ruineko 2013-04-17 14:09
何時もブログの更新を楽しみにしています。
リリーちゃんとご主人の笑顔の写真、素敵です♪
何時か、訪ねてみたいお店ですね。
by キリ 2013-04-17 18:55
りりーさんもお父さんもとっても幸せそうで、素敵な写真ですね。
仕事でキリキリしてましたが、なんだか、ほっこりしました(笑)
さて、もうひと仕事。
by うちだ 2013-04-17 19:18
思い出話をさせてください。
もう20年も前の話ですが、主人の祖母の葬儀のために弘前に宿泊していた時のことです。夜にお腹がすいてホテルを出て近所にあった古い中華そば屋に入りました。
店に入るとストーブの前の一番暖かい席に猫が丸くなっていました。
私は猫に遠慮して離れた席に座ろうとしたのですが、猫に全く関心がなかった主人がストーブに近づいたため、猫は別の場所に逃げていきました。
「かわいそうに・・・」と私が言うと「だってここ暖かいじゃん」と主人(-_-;)
暖かい席でおいしいラーメンをいただきくつろいでいたのですが、猫がじーっとこちらを見ていることに気付き、あわてて席をたちレジにに行きました。
すると、店主の隣に座っていた猫が「ごにゃごにゃごにゃごにゃ~~」っと店主に向かってしゃべりかけたのです。
店主は猫が何を言っているのかわかっている様子で、やさしい笑顔で「うんうん。よしよし」と返事をしながら会計をしてくれました。
猫を飼ったことがなかった私ですが、なぜかその時とっさに「ごめんね」と猫に向かって言葉が出ました。
すると店主も私をみてニコっと笑ってくれました。
20年近くたって猫と同居生活するようになり、あれは間違いなく「コイツが席を取ったんだよ!!」と、猫は店主に訴えていたんだと確信しました。(^_^;)
『ミルクホール若葉』の店の雰囲気とご主人の姿形が、あの時の店と店主にあまりにも似ていたので思い出し、書き込んでしまいました。
長々すみませんm(__)m
追伸:完全に我が家のnyaaに調教された主人は、今だったらストーブから離れた席に座ってくれると思います(^v^)
by にゃにゃ 2013-04-18 13:27
にゃにゃさんのお話もとてもいいですね!
今日は2倍ほっこりしました。
得した気分です♪
by と模様 2013-04-18 16:54
ご主人と出会わなかったら、このコはどうなってただろう?
よかったね、リリーちゃん!
by ミシェル 2013-04-18 19:37
今週、うっかりミスで、更新が1日遅れてしまったこと、お詫び申し上げます。
>ruinekoさん
お日様と一緒の、ゆったりした猫時間、ニンゲンもときどき取り戻さなくちゃね!
>キリさん
ぜひ、何時か訪ねてみてください。私はいつも焼きそばとミルク珈琲を頼んで、オマケに漬物とお菓子をいただいてます(笑)
>うちださん
このブログで、若葉に行ったつもりになって、ほっこりしていただけたとしたら、やったー!!です(笑)。
>にゃにゃさん
と模様さん
わあっ、とっても素敵な思い出。童話のようですね。「うんうん、よしよし」って、まさに若葉のご主人が、そんな感じです! こんなふうに、このブログに呼応して、またさらに呼応していただくと、とっても嬉しいです!みなさまも、なんでも書き込んでくださいね~
>ミシェルさん
リリーちゃんは若葉にやってきて11年。可愛がられているから、あどけない顔をしています。ほんと、運命の出会いですよね。
by 道ばた猫 2013-04-18 21:44
写真からでも、まさに二人の世界!というのがとても伝わってきますね。pcの前なのに、そっと邪魔しないようにしてしまいました^^
by ちぃこ 2013-04-19 21:48
>ちぃこさん
仲良きことは美しきかな。奥さんは、「このひとは、猫と夫婦なの!」とまで言ってました(笑)。
by 道ばた猫 2013-04-23 03:11
何度もスミマセン
書き込んでいいものかどうか悩んでまたここに書き込むことにしました
フェリシモで買い物をしてここのブログを知りすっかりファンになりブックマークしたものの、そのページはなぜかコメントを入れられない状態だったもので、しばらくコメントを入れられずにいました。
たまたま記事のタイトルをクリックしたらコメントを入れられ喜んだものの、いつもコメント欄がみれない状態で記事を読んでいたせいで、コメント返しをいただけていることに気付いたのが、この記事にコメントした時でした(~_~;)
「道ばた猫さん」からブログにコメントをいただいていたのに、それが佐竹さんだと気付いていなかった大バカ者です(T_T)
でも不思議とあの時「道ばた猫さんが佐竹さんだったらいいのになぁ」って思ったんですよねワタシ
ホントに今頃こんなこと書き込んですみません。支障があったら削除してください。
「nyaaをみていただきありがとうございました」と
伝えたかったのですm(__)m
by にゃにゃ 2013-05-01 15:41
>にゃにゃさん
リニューアルした猫部、とってもわかりやすく、より楽しくなりましたよね! いつも応援ありがとうございます。nyaaくんのエピソード(しゅうくんのも)、いつも楽しく読ませていただいてます~ nyaaくんしゅうくん(あ、順序が逆だった)というキャラ立ちしたおふたりがそばにいて、日々刺激的ですね!
by 道ばた猫 2013-05-02 14:42
コメントの仕方を わたしも 長い間知らなくて、最近 コメントしやすくなって うれしいです。
ありがとうございました。
by ruineko 2013-05-15 21:17