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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2013年04月30日

花子さんの猫

路地をのんびりと猫たちが行き交う小さな漁港。花子さんはここで生まれました。
 
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 小さいときから、大の猫好きで、捨て猫を拾ってばかりだったそうです。5年前にこの漁村で初めて会ったとき、花子さんは、サンボという可愛い三毛猫と暮らしていました。他にも、自由出入りの食客猫が数匹いましたが、花子さんのサンボへの寵愛は格別で、微笑ましかったものです。
 
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 サンボは、仔猫のときに家の前に捨てられていた猫で、「サンボがきてから、毎日が楽しいよ~~」と、のろけていました。花子さんは働き者で、行くたびに、自分で採ったわかめだのひじきだの、畑で作った菜っ葉だの、「持ってけ」といっぱいみやげに持たせてくれるのでした。まるで、親戚のおばさんのように思える大好きな花子さん。
 
 玄関が閉ざされていて、会えないときが2度続きました。近所の人の話では、「サンボが行方不明になって、花子さん、泣きながら、探し回ってた。見つからなくって、それはしょんぼりしている」とのことでした。そんな花子さんを見るのがつらくて、その村にしばらく足が向かいませんでした。
 
 ことし春の初め、「花子さん、元気にしてるかなあ」と、久しぶりに訪ねていきました。花子さんのおうちの前の丸ポストの上に、見たことのないグレイの猫が人待ち顔で乗っていました。サンボもこうして、花子さんが海草採りや畑仕事から帰るのを、ポストの上で待っていたものです。顔つきもどこかサンボに似た猫です。
 
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 海草採りから帰ってきた花子さん。とても元気そうです。懐かしがってくれて、「これ、うちのグリちゃん。可愛いでしょ」と、ポストの上のコを自慢げに紹介してくれました。
 「サンボがいなくなったときは、泣いた、泣いた。わあわあ泣いて、涙ってこんなに出るんだ、と思ったよ。1年くらいずっとしょんぼりしてたんだけどね、ある日、仔猫の啼き声が海辺のほうからするのよ。『もうサンボ以外の猫は拾わない』って、耳をふさいでたの。そしたら、翌朝、うちの物置にもぐりこんで寝てんのよ。それ見たら、もういじらしくって」
 
 いまでは、「グリちゃんが来たから、また毎日が楽しくなった」ですって。ああ、よかった!! 猫をなくした心の空洞は、猫によってしか埋められない、という体験は、私も何度もしています。
 相変わらず、花子さんちには自由出入りの食客猫が数匹。「このコは、2軒となりのおばあちゃんちの猫で、おばあちゃんが死んじゃったからうちに来て、このコとあのコは捨てられてて・・・」と次々に紹介してくれました。きっとサンボちゃんも、こんなふうにどこかで誰かにやさしくされてますよ!見えない大きな輪が循環しているのを信じます。
 
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 「町で暮らす息子が、私の部屋を用意して、一緒に暮らそうって言ってるんだけど、ここで猫たちと暮らしてるのがまだまだ楽しいからね。行くときは、『猫たちと一緒じゃなきゃやだ!』って言ってんの」
 生まれ育ったこの漁村で働き続け、よく日に灼け、皺の刻み込まれた花子さんの顔が、なんとも可愛く、素敵です。グリちゃん、ずーと花子さんのそばにいて、元気のもとになってあげるんだよ!

写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

素敵な話!
花子さんも猫ちゃんたちも、健康にのんびり暮らして欲しいですねえ。

by たろす 2013-05-01 15:02

花子さん、本当にチャーミングな方ですね♪
私も花子さんみたいなおばあちゃんになりたいなぁ~!

by ちぃこ 2013-05-01 20:53

花子さんの笑顔、可愛らしい! 本当に猫によってできた空洞は猫にしか埋められないですね。
 いつまでも一緒に お元気で暮らしてほしいですね。。

by ruineko 2013-05-02 22:32

>たろすさん、本当に。訪ねていったら、あのひとの笑顔と猫が待っている、という場所があるのはいいものです!

>ちぃこさん、都会では、花子さんのような天然のカワイイかたには、なかなかお目にかかりません。サンボがどこかで元気にしていますように!

>ruinekoさん、そう、犬や猫たちが、万が一、飼い主とはぐれても、けっして不幸にはならないと信じられる社会になりますように。

by 道ばた猫 2013-05-04 10:09