東海道線大磯駅で降りて、漁港のほうへ歩いていくあたりは、松の木が多く、昔ながらの漁師町の風情が残ります。
みけこちゃんに会ったのは、この町で古くから酒屋を営む芦川酒店のそばでした。
はっきりした三毛模様で、みっちりした体格の古典的な日本猫です。毛づくろい中を「こんにちは」と声をかけたら、ゆらゆらと尻尾を揺らしてくれたので、脈があるかなと手をのばしたら、すいと逃げられました。
みけこちゃんは、推定4歳。日中はたいていこのあたりでのんびり過ごしていると、酒屋さんのご主人が教えてくれました。みけこというのは、酒店で呼んでいる名前で、「たま」やら「ミー」やら、町の人たちに思い思いに呼ばれて気にかけてもらっているそうです。
ご主人の話では、みけこちゃんは、まだ子猫の時に、それまで飼ってもらっていた家が引っ越していき、置き去りにされてしまったそうです。近所に住んでいたおにいさんが、突然家をなくしたみけこちゃんの面倒を見てくれて、さびしい思いをせずに元気に育ちました。3年ほど前、みけこちゃんはおにいさんの買い物にくっついて酒屋さんに来て以来、、おにいさんがお仕事にでているあいだは、酒店の周りで過ごすようになったとか。
ご主人におやつをいつももらっていて、店にもふらりと入っていくというのに、ご主人に触らせたことが一度もないみけこちゃん。ご主人だけでなく、大好きなおにいさん以外の人には決して心を許さないのです。きっと、みけこちゃんの記憶には、置き去りにされた時の孤独と、手をさしのべてもらった嬉しさが刻み込まれているのでしょう。
でも、みけこちゃん、芦川酒店におやつをもらっているお返しをちゃんとしています。みけこちゃんが店先をうろうろしていることで、店先に並べてある野菜や果物をカラスの被害から守っているのです。そして、夕方、おにいさんが仕事から帰ってくると、一緒にいそいそと家路につきます。
先日、みけこちゃんにぞっこんな酒店のご主人の心がちょっと傷つく出来事が。みけこちゃんにご馳走をふるまっていたところ、おにいさんの姿を見つけたみけこちゃん、ご馳走をそのままに、すっ飛んでいってしまったのですって(笑)。
「このへんは昔ながらの漁師町ですからね、飼い猫もノラも、みんなで可愛がってますよ。まあ、町猫みたいなものです」と、ご主人。町の助成で、避妊去勢手術はみんな済んでいるそうです。たしかに、駅からの路地には、ごろんごろんとくつろぐ町猫さんが何匹もいました。
「この夏には、そこのお寺さんがこんなことまでしてくださったんですよ」と、ご主人が一枚のチラシを見せてくださいました。
東光院の副住職様が作った、仔猫の里親募集のチラシです。
東光院は、港町大磯に寄り添ってきた由緒ある東寺真言宗のお寺で、大磯漁港のお魚供養もなさっています。お寺ヨガの教室やジャズライブも企画する、町の人たちにとっては親しみあるお寺。
チラシに書かれているように、副住職様は、ノラ母さんから生まれて道をヨタヨタ歩いていた衰弱した仔猫3匹を保護し、手当して、里親探しに尽力。3匹ともに、いい里親さんに貰われていきました。母さん猫も、手術をすませ、お寺近くのおうちで可愛がられています。
さて、日が暮れかかり、漁港内の「めしや」というお魚食堂へ。ベランダのはしっこで、まったりとした背中を見せてくつろいでいたのは、漁港内のノラさんたちの1匹。背中の模様は、角度に寄って綺麗なハート形に見える白黒猫です。よく店のベランダに出没するそうですから、「会えたらラッキー!」なハート猫さんですね!
港町大磯。とても気持ちのいい町でした。きょうもみけこちゃんは、芦川酒店のそばで、大好きな大好きなおにいさんの帰りを待っていることでしょう。
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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い~話や~(TлT)
我が家の猫2匹だけで手いっぱい
でも猫は好き
こんな町ぐるみで猫に優しいに
住める住人さん達が羨ましいです
これからも少しでも
不幸な猫さん達が増え無い様に
頑張って下さい m(__)m
by みやこはるか 2013-10-08 12:54
本宅あり別宅あり
猫って贅沢ですよね (;一_一)
うちはどっちが本宅かわからなくなってきました
by にゃにゃ 2013-10-08 14:21
読ませて頂いて ほのぼのしました。
猫さんたちも人間も幸せに暮らせるって
素敵なことてすね(^-^)
自分の勝手で命を振り回す事は許せないです。
不幸な動物さん達が、居なくなることを願うばかりです。
読ませて頂いて ほのぼのしました。
by ぽっちゃん 2013-10-08 18:52
いい町ですね〜
お兄さんや酒屋さん、住職さん、みんな優しい〜
みけこちゃんはじめ、他の猫ちゃんたちも、のんびり幸せそう(^-^)
いつもこのブログにほっこり笑顔をいただいてます!
by akiko 2013-10-09 08:33
大磯を歩くと、こんなに沢山の町ネコさん達に会えるのですね~*
いい町ですね(^―^)/
みけこちゃん、お兄さんだけに心をというの 本当に悲しかったところを助けてもらったのですね。
人の都合で動物達が悲しい思いをしない世の中であって欲しいですよね!
by りょう 2013-10-10 12:06
>みやこはるかさん
akikoさん
りょうさん
海辺の漁師町は、風景の中に猫がいるのがあたりまえ、といったおおらかな付き合い方があります ね~。このおおらかさは、猫対ニンゲンだけじゃなく、ニンゲン同士にも残っていて、「どっから きたの~」なんてよく声をかけてもらって、道ばたで猫話に花が咲きます。漁村を全部歩きたい! (笑)
>にゃにゃさん
猫ほど、シンプルに自分の贅沢を譲らない生き物っていませんよね~。妥協しない。nyaa君、猫の 中の猫!
>ぽっちゃんさん
猫の数だけ 物語があって・・・・毎週出会い続けています。これからも楽しんでいただけたらう れしいです~
by 道ばた猫 2013-10-12 09:51
私も我が家に5匹と暮らすようになって猫たち一匹、一匹に性格があるといううことに気が付きました(笑)このみけこちゃんの性格が手にとるようにわかっちゃいます。お兄さんは特別な人なんですね!
で、お店のご主人はまた違う意味の特別な人!でもちゃんとみけこちゃんは自分をわかってくれる人を
理解してますよね。お兄さんをこの世の中で一番大好きで・・それでもってこうやって暮らしていける
この生活を満足していますね!いつまでもいつまでもこのままで・・。
by りんりん 2013-10-13 09:16
ちったーれと申します。初めて
おじゃまさせていただきますm(_ _)m
うちも漁師町ですが、大磯ほど、猫に優しくありません。勝手に家に入って食べ物を取っていくとか、生まれたばっかりの子猫はゴミ捨て場に置いとけば、役所の人が持って行ってくれるとか、町ぐるみで猫をみてあげるという雰囲気はありません。
大磯が羨ましいです。行ってみたいですね。
by ちったーれ 2013-10-13 09:54
>りんりんさん
ほんとに猫ってみんな違う性格。うちも5匹いるので、面白いです。みんな違って、みんないい!
>ちったーれさん
道のりは遠いかもしれないけど、大磯方式が他の町にも影響を与えてほしいですね~
by 道ばた猫 2013-10-15 04:05
猫がいっぱいいる所。
いいですね〜
by みおりん 2013-10-16 14:53
お返事ありがとうございますm(_ _)m
これから、私の住んでるところも大磯のようにな〜れ、と願いながら暮らしていきます(^_^)
by ちったーれ 2013-10-16 20:14