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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2014年01月14日

4匹の仔猫・・・その① 「そら」くん

冬晴れの空にも負けない綺麗な空色の瞳を持つそらくんは、もうすぐ2歳。毎日、ニンゲンのお父さんと一緒に庭に出て、ぐるぐる走り回ったり、キウイの木に登って空を見上げるのが日課です。

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キウイはマタタビ科の植物なので、匂いを嗅いだり枝をかじったりすると、いい気分。そらくんに爪とぎされてしまうので、お父さんは幹に包帯を巻いてやりました。

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 そらくんは、生後2か月半くらいの時にこのうちにもらわれてきました。ニンゲンの父さん母さん兄さんたちに可愛がられ、幸せを絵に描いたようなそらくんですが、じつは、切ない生い立ちのものがたりを持った猫なのです。そらくんの生い立ちとは・・・。

 とある町で、ある農家が、納屋にネズミが増えたのに困って、よそから猫を貰ってきました。空色の目をした、シャムミックスの雌猫です。この農家は、猫が好きではなく、ネズミを捕らせることだけが目的だったので、猫を納屋に閉じ込め、いっさいご飯を与えませんでした。猫は、人の出入りの隙をついて、納屋の外に出ることがときたまあったそうです。

 ひもじそうな猫を見かねた近隣の人たちが、「猫にちゃんとご飯をやって、避妊手術もしてやって」と何度も頼んだのですが、飼い主は「餌をやって手術をするとネズミを捕らなくなる」と言い張り、受けつけませんでした。

 そのうち、猫は納屋で4匹の仔猫を産み、まだ授乳中に、交通事故で亡くなりました。おなかがすいて、どこかへ食べ物を調達にでかけたのでしょう・・・。

 残された4匹の仔猫は、農家の人に保健所に持ち込まれる寸前の危機一髪を、救い出されました。友人と二人で、4匹を救い出したのは、これまでに「まりやのハート」や「盲目のラブリー福ちゃん」など何度か道ばた猫日記に登場の、あの猫助っ人ルイさんです。ルイさんは、亡き母さん猫に、「こどもたちは、お前の分まできっとしあわせにするよ!」と、心の中で誓ったに違いありません。
 
 仔猫は、白の男の子が2匹(長毛1・短毛1)と、キジの女の子が2匹(長毛1・短毛1)で、白猫の兄弟は母さん譲りの空色の瞳をしていました。白兄弟のうち、長毛のほうは、左前足にけがをしていて、ひどく腫れあがっていたので、すぐに行きつけのユーミーどうぶつ病院へ。ルイさんが「ユーミー先生」と呼んで信頼する先生は、動物にこの上なく優しく、飼い主にはちょっと厳しい、涙もろくて熱いハートを持った若い獣医さんです。

 長毛白ちゃんは、左前足首から先を切断になるかもしれない重症でした。保護猫をたくさん抱えているルイさんは「今月は、どうしてもあと2万円しか猫に回せないの。これでなんとか」と、先生に入院治療をお願いしました。

 さて、母さんのお乳の恋しい残り3匹はどうなったかというと・・・。この子たちにお乳を与えて母さんになってくれた雌猫がいたのです! やはりルイさんたちに保護されていた三毛猫さくらちゃんです。保護されると同時に3匹の子どもを産み落としたさくらちゃんでしたが、その子猫たちはみな里親がみつかってもらわれていったばかりで、さくらちゃんのおっぱいはまだ張っていたのでした。(さくらちゃんは、そのあとも、保護されてきた4匹の仔猫に惜しみない愛とお乳を与え、計11匹を育てた立派な母猫です)


nekoblog227-3.jpg                (ルイさん撮影)

 長毛白ちゃんは、ユーミー先生の治療のおかげで足先の切断を免れました。彼が1か月入院している間、他の3匹はさくら母さんのもとで、すくすく成長。
 さて1カ月もの入院治療費をどうしようと思いながら、ルイさんが病院へ行くと、ユーミー先生がこう言うのです。「治療費は要らないよ。うちの母が払うと言ってる。両親があの子を気に入って、貰いたいと言ってるんだ」。
 先生のお母さまが病院に立ち寄った際、仔猫の啼き声に気づき、ケージをのぞいたところ、「天使のように愛らしい猫」がいて、ひとめ惚れしてしまったとか。その話を聞いて、翌日、お父さまが病院をのぞくと、「大怪我をしているのに屈託がない、ほんとに天使のような純白の猫がいた!」のでした。


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見せていただいた写真には、ユーミー先生のご実家に貰われたばかりでまだ通院中の、包帯からのぞく腫れた左足が痛々しいけれど無邪気に遊ぶ長毛白ちゃんがいました。お父さまのシャツのポケットに入れてもらってる写真もあります。

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額入り写真の横で、「オレ様が天使と呼ばれていた頃」と、自慢げなそらくん。そう、怪我をした純白の長毛猫が、そらくんです。 なぜか、成長するにしたがって、黄色い毛が増えていったのですって。「純白の天使」とは言えなくなったけれど、「我が家の三男坊として育てました!」とお父さまが胸を張る通り、男前で風格ある今のそらくんです。足の後遺症はまったくありません。

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 大好きなニンゲンの父さんと並んで、窓辺で外を眺めるそらくん。こんなに父さんの目尻を下げさせるなんて、やっぱりキミは今も天使だね~ 納屋に閉じ込められて空を眺めることもあまりなかった産みの母さんの分まで、たっぷり空を眺めてのびのび暮らしてね。

 ところで、先生のお母さまに尋ねたところ、「えっ、治療費?  払ってませんけど」と、けげんなお顔。ユーミー先生、いい先生です!
    
 来週、さ来週と、そらくんのきょうだいである3匹の子猫たちの今を、お伝えしていきます。お楽しみに。

写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

納屋に閉じ込めるだなんて!!
そんなひどいことをする人もいれば、ルイさんのような方もいることに
ホッとさせられます。
マリアにメロメロなお父さんにも涙が出ちゃったけれど、空君も本当によかったね♪
ふたりで写っているお写真が幸せなこと物語っていますね。
ユーミー先生にも感謝!!!

by りょう 2014-01-14 11:54

ご飯も与えずタダ働きさせるなんて!動物虐待としか思えない(T ^ T)
その後 他の子が犠牲になっていないかが気になります…命を粗末にせずネズミ捕獲器を買いなさい!

by 名無し 2014-01-14 14:54

人のエゴで振り回されてしまった母子の猫生。
同じく人だけど心根の温かい人から新しい家族と幸せな猫生を縁付けてもらえてよかったぁ。

by くま 2014-01-14 18:24

そらくん、寄り目で、愛嬌たっぷりで、本当に可愛い♡いい家族に巡り会えて良かったね☆優しい先生と、他の子のお世話をしてくれたさくらちゃんにも感謝です♪

by テス 2014-01-14 20:47

道ばた猫さんのお話しは、“悲しみ”⇒“ハッピーエンド”な、お話しが多い??
今回もハッピーエンドでよかったです。

by クックロネコ 2014-01-14 21:19

我が家のヤンチャな4兄弟も、離乳前にママにゃんが事故で亡くなり、お腹をすかせて鳴いていたのを保護したので、読んでいて堪らなくなりました。そらくんも、他の兄弟ちゃんも、ママにゃんの分までたくさん幸せになろうね。

by あっこ 2014-01-14 21:58

猫を道具としか考えない人がいる一方で、大切な家族として迎える人もいる。
そらくんのおとうさん、なんて幸せそうなお顔(^^)
よかったね、そらくん。
ママにゃんは本当にかわいそう…。
その方がまた同じようなことをなさっていないよう祈ります。

by みゆ 2014-01-16 09:58

生き物を道具のようにしか扱えない人もいれば、家族として迎えて愛してくださる方もいる。

世界中全ての生き物たちが家族として受け入れられて幸せになるのはとてもとても難しいことかもしれないけど、一日でも早くそんな日がくるといいな、と思いました。

by ともえ 2014-01-16 23:32

あんよが痛々しいですね・・猫の足がこんなに腫れてるのは今まで見たことがないです>_<
でもすぐに手術しないで本当によかった。
そして、幸せをつかまえて、本当によかった!
そらくんのお父さんの表情を見れば、どんなに愛されてるか分かります^ ^

・・そらくん、楽天のまーくんに似てますね!

by akiko 2014-01-17 08:16

>りょうさん、名無しさん、くまさん、テスさん、みゆさん、ともえさん

 ほんとうに薄幸な母さん猫ですけど、仔猫たちを抱いた日々は幸せだったと思いたいですね。そして、子猫たちの幸せが、母さんへの償いになると思います。

>クックロネコさん

 悲しみのままで天国へ行った猫たちへの思いを込めて、幸せになった猫たちの物語を綴っています。前者を少しでも減らすことを心から願って。

>あっこさん

  4兄弟を保護してくださってありがとうございます!!兄弟たち、うんとやんちゃして、うんと「生」を楽しんで!

>akikoさん

 ほんとだ~、どっかで見た顔だとは思っていたのですが。大笑いしてしまいました。鋭い!

 知人の家では、子猫の時、上原多香子さんで、今は富士真奈美さんの猫がいます。

by 道ばた猫 2014-01-17 10:29

人間だと詐欺だ!って言われそうなくらいの変貌を遂げてますが、それでも変わらずに愛らしいのがネコですね(=^x^=)

by akiko 2014-01-17 19:18

そらちゃんの、愛されているという自信が顔に出てますね~。エヘン、っていう誇らしげなところが可愛い!!ユーミー先生も天使に思えます。お父さん、お母さんの分まで倖せになってね!

by りんりん 2014-01-22 09:15