[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

　ここは、市原市にある老健施設（介護を必要とするお年寄りの入所・デイケアサービス施設）、「辰巳ナーシング・ヴィラ」。
　「いらっしゃいませ。きょうはご見学ですか？」とばかり、張り切って受付をしてくれたのは、ここに通うおじいちゃんおばあちゃんたちのアイドル、ななちゃんです。



　ななちゃんのいるところ、笑顔あり。とびきりの「福猫」の証拠が、前足を揃えた時にキジ柄が描く、このやさしいハート模様です！

　ななちゃんは、ただのアイドルじゃありません。スタッフの一員として受付嬢をするばかりか、ヴィラを利用しているおじいちゃんおばあちゃんの話し相手になったり、リハビリにも付き添います。ひな祭り、文化祭、クリスマス会といった愉しいイベントには、着物やサンタさんのコスプレ姿で座を沸かせます。

　このヴィラには、みんなでワイワイ楽しく過ごしていることが、じつはリハビリになっているという「ヴィラ・マジック」がたくさんあるそうで、なかでも「なな・マジック」の効き目は絶大なのだとか。
「ななは、誰にでも愛想よくお返事するので、みんな笑顔になるんです。ななに話しかけたり、笑ったりすることで、気持ちが明るくなるリハビリ効果はすごいですよ～」と、スタッフのかたは言います。

　リハビリ室にいたひとりのおじいちゃまの膝に、スタッフがそっとななちゃんを乗せました。



「ななちゃんや～　」と話しかけるおじいちゃまの口元をじっと見つめるななちゃん。



「ニャ～ン！」とななちゃんがお返事すると、おじいちゃまの顔にポッと笑みがともりました。



　ななちゃんと会うことが、みなさんの通所の張り合いにもなっていて、「猫がいたから、ここに通うことに決めた！」というかたもいらっしゃるとか。ヴィラの壁にはななちゃん写真コーナーもあるほどの人気者です。



　このななちゃん、もとは捨て猫でした。それも、１０匹の乳飲み子たちと一緒に段ボールに詰められて、ヴィラに隣接する辰巳病院の玄関に、早朝捨てられていたそうです。１０年前のことです。暖かい季節だったので、病院の非常用階段の下におうちを作ってもらって、子育てを始めました。
　でも、やはり、１０匹は多すぎたのでしょう。残念ながら３匹は育ちませんでした。残った７匹を、母さんは１匹ずつくわえて、隣のナーシング・ヴィラの中に運んできました。そして、ヴィラのなかに子育てスペースを作ってもらって、安心して子育てを続けたのでした。
「スタッフみんなが子猫の成長を楽しみに見守りました。はじめは『お母さん』と呼んでたんですけど、７匹立派に育て上げたので『なな』という名になったんですよ」と、スタッフのかた。

　７匹の子猫は、現スタッフ、元スタッフ、来所者のお宅などにもらわれていき、ななちゃんは、ここの看板猫となったのでした。

　なんというハッピーエンド・ストーリー！　でも、よくまあ、親子８匹もの一斉入所を,上の方がOKなさいましたね！　　そう聞くと、スタッフのかたから、「あ、うちはそんなの、ぜーんぜんOKです！」となんとも小気味よいお返事。「理事長からして、大の猫好きなんです～」ですって。前理事長さんは、自宅の猫を抱えて出勤なさることもたびたびだったとか。その息子の現理事長さんも、いまご自宅で猫３匹を飼っていて、ななちゃんのことも相当に可愛がっていらっしゃるそうです。

　そんなななちゃんは、ヴィラへの恩をけっして忘れず、よく働き、ときどき「お世話になってます～」とばかりにネズミやスズメのプレゼントをヴィラに持ち帰るそうです。

　息抜きタイムは、玄関先の道ばたでごろんごろんしたり、ヴィラの前の雑木林を散策したり。



　雑木林で木登りを楽しんでいた休憩時間のななちゃんに、「ななちゃん、また会いに来るよ」とお別れを言ったら、「にゃ～ん」と、ちゃんとお返事してくれました。



　スタッフのかたたちもみな笑顔で和気あいあいの辰巳ナーシング・ヴィラのモットーは「一隅を照らす」「地域に寄り添う介護」。ひとと猫の共生を実現しているだけでなく、ひとにそっと寄り添う猫の癒し力を介護現場に自然体で活用している姿勢に拍手です。猫リハビリの絶大なる効用が世に知られて、全国に広まっていくといいですね～