道ばた猫日記
2014年04月01日
ハヤシさんちの困ったちゃんの2匹目は、漆黒のハンサムボーイ、カムイくんです。きょうもカムイは「食べた~食べた~。でも、もっと食べたいな~」と舌なめずりしています。
カムイは10カ月。育ちざかりとはいえ、食欲にまるで限度がありません。あればあるだけ食べるという困ったちゃん。他の猫たちに置き餌ができません。
困ったちゃんぶりはそれだけではなく、いつもドタバタして、エサ皿や水をひっくり返します。いまだにうまくトイレを使えません。ときどき廊下でウンチもおしっこもしてしまうのです。つまり、大きな仔猫。そのため、ルイさんは出かけるときにはカムイを大きなケージハウスに入れて出かけます。カムイもケージハウスの中が一番落ち着くみたいで、そこから空を飽かず眺めています。
カムイは傷ついたノラ母さんから生まれた子。去年の夏のはじめ、1か月くらいのときに栄養失調状態できょうだい共にルイさんに保護されました。(そのうちの1匹が「花さんの初めての猫」でご紹介した草ちゃんです)。調子の悪かったカムイは入退院を繰り返し、7月に元気になったところを、「いままで面倒を見ていたノラの母子が死んでしまったので、黒猫がほしい」というご夫婦に気に入られ、もらわれていきました。
幸せに暮らしているとばっかり思っていたある日、ルイさんに電話がかかってきました。
「もらった子猫に手を焼いている。高いところに飛び乗ろうとして物は落とす。物陰からじゃれついてひっかく。噛みつくこともある。こんな狂暴な猫は見たことがない。口から泡を吹いて発作をおこしたので、ずっとてんかんの薬も飲まさなくてはいけない。耳も聞こえないようだ。捨てるわけにもいかないし」というものでした。
最後の言葉を聞いて、ルイさんはすぐに引き取ることを決めました。7月にもらわれていき、9月に戻ってきたカムイは、見ない間に少し大きくなっていて、ルイさんが頭を撫でようとすると、ビクッとして目をつぶりました。「しつけで、ぶたれていたのかなあ」と、ふびんでたまらなくなったルイさんでした。泡を吹くということは戻ってきてからは見受けられないので、てんかんの薬は飲ませるのを中止しました。ひっかいたり噛んだりするのは、興奮したときの愛情表現の延長上に思えました。ふだんはおとなしくて扱いやすい、とてもいい子なのです。
私が遊びに行ったとき、カムイはとてもフレンドリーで、ちゃんと呼びかけにも振り向きました。耳が聞こえないということはないようです。ただ、どこか目の焦点が合ってない感じで、動作がかなりドタバタ、いつの間にか廊下でおしっこをしている困ったちゃんでした。そういえば、おしっこをしてしまう直前のカムイは廊下をツルツルすべっていました。あれが、もしかして発作・・・? ルイさんと私で話し合って、「お医者様にじっくり相談したみたほうがいい」ということになりました。
そして・・・。くわしい検査の結果、体はいたって健康! カムイの発達状況やふだんの様子から「脳の奇形では」という診断が出ました。いわゆる知能の遅れです。脳の奇形に起因する軽いてんかんの発作がおきたときに、ウンチやおしっこをその場でもらしてしまうようでした。食べても食べてもきりがないのは、食欲を抑える脳の機能が欠損しているため、ということでした。
カムイの困ったちゃんは、カムイのせいではなかったのです。カムイ自身がいちばん不安で混乱して困っていたのです。今後は、発作が起きた時だけの投薬で、食事の管理と発作によく注意しながら様子を見ていくことになりました。原因がわかって、ルイさんはホッとし、いっそうカムイが愛しくなっています。
発作の前、カムイは落ち着きがなくなり、気が立ってきます。発作の後は、自分でもわけがわからず、どうしていいかわからない目になります。
ルイさんは、そんなカムイをぎゅっと抱きしめ、だいじょうぶだよ、カムイ、カムイ、可愛いカムイ・・・とうたうように言い聞かせます。
そして、カムイはルイさんの腕の中で安心しきって眠ります。
可愛いカムイ。
いじらしいカムイ。
困ったちゃんで知能は遅れているかもしれないけれど、とってもお利口のカムイ。
「この猫を飼う」と決めて迎えるということは、自分のうちに子どもが生まれたと同じことだと思うのです。その子のすべてまるごと愛して守り抜くこと。
カムイは「戻された猫」ではなくて、ほんとうの我が家に「戻ってきた猫」だったんですね。
カムイ、本当のお家に帰ることが出来て良かった。
抱きしめてくれる手を得られて良かった。
もっと、もっと、幸せになってね。
by さえたん 2014-04-01 14:27
どんな障害や病気があっても可愛い我が子!
帰ってきて幸せになって良かったね。
抱き締められる気持ちよさや安心感に、もっともっと幸せを感じてね。
by まぐろ 2014-04-01 17:51
今日も泣きました。
ありがとう。いつもありがとう。
by じゅんこ 2014-04-01 18:18
どんな子でも行動には理由があるんです。思うようにならないからって、はたいたりするのはしつけじゃないと思います。
理解ある飼い主さんの所ならカムイ君は幸せですね!
by はっちゃん 2014-04-01 18:30
前の飼い主さんの気持ちも分からなくもないですが、小さくて弱いものに対して、感情に任せて叩くのは、絶対止めて欲しいです!!
ルイさんのところに戻ってきて、本当によかった/ _ ;
カムイくん、ルイさんにだっこされて本当に幸せそうです!
by akiko 2014-04-01 19:13
病気のせいで自分でも思わぬ行動をしてしまうなんて
きっと猫さんの小さな体では受け止められないほど
とっても怖くてつらい思いをたくさんたくさんして来たでしょう
想像するととてもつらくて悲しいです
今、大丈夫って抱きしめてもらえることでどんなに安心できるでしょう
by ららねね 2014-04-01 19:47
道端猫さんの文章は、文章素材も素晴らしく、且つ道端猫さんのプロのライターとしての文章力にいつも感心することしきりです。猫に悲しみあり、その不幸な猫を愛でる、猫に愛あるひと達の無償の愛。そしてハッピーエンドを迎える猫。
いつも楽しみに読まさせて頂いてます。
これからも期待しております。
by クックロネコ 2014-04-01 20:04
ブログが更新される火曜日の夜は、私の大切なヒーリングタイムになっています。
今週もステキなお話をありがとうございました。
それにしても、理解ある飼い主さんと巡り会えた猫ちゃんは幸せですね。そこで明暗が分かれてしまう生き物の悲しさを思うと、感動すると同時にいつも少し切なくなります。
by たこや 2014-04-01 22:12
泣いちゃいました。涙がとまらないのは花粉のせいだけじゃない・・・
by ねこま 2014-04-01 23:42
だっこされてこちらを見ている目が、ほんとに不安そうで、安心できる場所が見つかって本当によかったね、と思います。
ルイさんも佐竹さんも、カムイの様子をよく見てくれて、一番いい対処法を探してくれて、ほんとにカムイにとっては一番いいおうちだと思います。
by 三毛にゃん 2014-04-02 03:00
愛情を注がれて、良かったな、幸せだなと切ないです。猫に飼い主さんは選べません。出会った方が家族です。
限りある時間の中で、精一杯生きようよと思います。どのような人生、猫生も尊いです。
これからもブログ、読ませていただきます。
by ぐり 2014-04-02 22:38
黒猫大好き・・・凛々しいお顔!自分に余裕と時間ができたらネコちゃん飼いたい。可愛がってあげてね。
by ストレッチ先生 2014-04-03 12:47
道ばた猫さんのあたたかい眼差し、カムイに寄り添ってくださる文章に励まされます ♪
ありがとうございました ~☆
by ruineko 2014-04-03 17:13
うるうるしてしまいました~カムイくん、ほんとうのおウチに戻って来れてよかったです。
ルイさんを見上げる目と最初のぺろん♪とした写真のかわいさにきゅんとしました。
道ばた猫さんの猫を見つめる温かさの感じられる写真が大好きです。
これからも楽しみにしていますね。
by ヒカリ 2014-04-04 01:21
>みなさま
カムイくんにたくさんのエール、ありがとうございます。カムイ、という名は、戻ってきてからルイさんがつけてやった名前。アイヌ語で神という意味です。アイヌの人たちは万物に神が宿り、大いなるものが自分たちを守ってくださると信じています。神様に守ってもらえる幸せな一生でありますようにと、ルイさんはその名をカムイ君につけたそうです。
by 道ばた猫 2014-04-08 01:26
カムイくんのお話
読んでいて涙が止まりませんでした。
いくらしつけの為とはいえ
人間の言葉が分からない猫さんを
絶対に叩いちゃダメだ!
自分でもどうしたら良いか分からず
カムイくんも辛かったと思います。
でも今はとても幸せそうで
本当に良かったです(´;ω;`)
by ゆきち 2014-05-24 14:12
>ゆきちさん
人間の子どもも同じで、みんなひとりひとり個性と可愛さがあるんですよね「猫だからこう」という人間の勝手なイメージは、はみだしタイプの猫さんにはつらいと思います。私もはみ出しタイプの子どもでしたから(笑)。
by 道ばた猫 2014-06-07 13:09