[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

　朝日の射し込むお部屋で、さっきからチビ黒ちゃん２匹が延々と取っ組み合いをしています。まだてのひらに乗るほどの小ささ。だけど、向こうっ気は、どっちも負けてはいません。



　まるで、風神雷神みたいです。

　２匹は、仲良し兄弟。赤い首輪がネロ１号（女の子）で、青い首輪がネロ２号（男の子）。保護された順番に、１号、２号になったのです。神戸の繁華街のノラの子で、目が開く前にここに引き取られ、ミエ母さんからミルクを飲ませてもらって、こんなに元気に育っています。

　あっ、取っ組み合いをやめたと思ったら、ネロ２号がコードをかじってる！まったく目が離せないチビたちです。よじ登られたカーテンはズタズタです。

　そんな様子を、ニコニコと見守ってるのは、ミルクボランティア歴１０年のミエさん。保護活動や地域猫活動に力を入れている民間団体「神戸猫ネット」のメンバーです。神戸での写真展がご縁で知り合いました。

　ミルクボランティアというのは、まだ離乳前の幼い仔猫が保護された時、、人工乳で育てて、里親に送り出すボランティアのこと。とても数少ないそうです。

　キャットタワーの上から、「今回のチビたちはやけに威勢がいいなあ」と呆れ顔なのは、イケメンのアムロくん。先住保護猫のミーナ姉ちゃんのおっぱいを吸って（実際は出ない）大きくなりました。

　アムロくんは、多頭飼い崩壊で保健所送りになる直前のおととし、保護され、この家にやってきた子です。どんな子がやってきても面倒を見る優しい兄貴。

「１０年で、１３０匹くらい保護された乳飲み子を引き受けました。３０匹はダメだったけど、１００匹は里親さんのもとに幸せに送り出すことができました」と、ミエさん。壁に貼ってあるのは、しあわせになった猫たちです。

「手を尽くしても天国に行ってしまった時は、それは悲しい。でも、たいへんやったことはみんな忘れて、次に来た子に全力投球します。『育て上げてよそに渡すのはつらいでしょう？』とよく聞かれるけど、『生きて渡せる』以上のしあわせはありません！　ブサイクな子でもすごくかわいがられていて嬉しい（笑）」

　ミエさんは、アドベンチャーワールドで、トラ、ライオン、ラバ、ミーアキャットなどの飼育係をしていたそうです。ワラビ―が脱走した時は、膝を蹴られて血が噴水のように吹き出しても、捕まえた手を離さず、檻に戻してから手当を受けたという、母性豊かで肝のすわった女性。まさに、保育知識も必要なミルクボランティアにぴったり。

「去年はマックス１０匹でした。ことしはまだ５匹。やさしいアムロがいてくれるから、どんどん受け入れられるんです。２階には、公園の植え込みから保護したばかりの３匹がいるんですよ」

　２階の３匹にご対面。検診が終わったら、下の子たちと合流するそうです。生後１か月過ぎの３きょうだいですが、母さんのノラ教育が行き届いていて、「シャ～、ハア～ッ」と可愛い威嚇を繰り返しています。
　ハチ割れは奥に隠れて顔を見せず。黒ちゃんと白黒ちゃんは、こんなにキュートな顔ですから、すぐに里親がみつかることでしょう。

　ミエさんは、パートで働いてこの子たちのミルク代を捻出しています。旦那さまも二人の息子さんも保護猫たちの面倒をよく見てくれるそうです。

　先日、ミエさんが、保護された仔猫を育てるボランティアをしていることを近所のかたに話したら、「そんなん、なんでわざわざ生かすの？」と言われました。それで、今の外猫たちの置かれている現状と、一生懸命育ててもらわれていくまでの過程をお話したところ、その方はこう言ってくれたそうです。
「きっと神さんが見てて、あんたにええことあるね」
　考え方が違っても、話し合わなければ、終わり。猫問題は人間問題でもあるのです。



　将来が楽しみな不敵な（笑）顔で見送ってくれたネロ１号２号でした。

　神戸への旅から帰ってきて１０日。ミエさんに電話したら、ネロ２号はもらわれていき、さびしそうなネロ１号の面倒をアムロが引き受け、２階の攻撃的３匹はといえば、すっかりなついて膝にのぼってくる甘えん坊さんに変身だそうです。