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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2014年08月05日

ミーコとの約束

ミーコちゃんは、埼玉県松伏町の住宅地にある自宅カフェ「310works(サンイチゼロワークス)」の看板猫。14~15歳とのことですが、ふっくら横広の顔立ちは、童画的なあどけなさです。

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310worksは、笑顔のとっても素敵なリュウキ・サチコ夫妻が金・土・日曜日のみ自宅で開いています。。ミーコちゃんが「店長」、サチコさんが「店主」、リュウキさんが「マスター」とのこと。つまり、家族みんなでやってるお店です。ミーコちゃんの寝姿を眺めながら食べる、自家農園で取れた野菜料理の美味しいこと!

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 ミーコちゃんとご夫妻が一緒に暮らし始めたのは、5年前の12月4日。そのとき、すでにミーコちゃんは9歳を越えていました。以来、毎年、この日になると、ご夫妻とミーコちゃんはある契約を結びます。それは、「5年は元気でいること」。毎年、更新ですから、エンドレスに続く契約なのです。
そして、もうひとつ。これは、契約というより、一緒に暮らそうと決めたときからの、ミーコちゃんへの固い約束。「いつも一緒にいるからね。ミーコは好きなように暮らすといいよ」。

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 なぜ、おふたりはこんな約束をミーコちゃんとわざわざしたのでしょう。それは、ミーコちゃんがいろんな思いをした末に、はるばるここへやってきた猫だったからです。

 ミーコちゃんは、長崎県で半ノラをやっていました。子猫の時、家の前に捨てられていたのを「ワシが面倒を見る!」とおじいちゃまが拾って、いつもごはんをてんこ盛りにもらって、夜だけ家に寝に帰るという自由生活を送っていたのです。ところが、可愛がってくれた おじいちゃんが亡くなり、寂しい思いをしていたところ、今度は、視力がほとんどなくなったおばあちゃんがホームに入ることになりました。
 面倒を見てくれる人がいなくなったミーコちゃんは、ノラ化されては困ると考えた近隣の人によって、保健所へ持ち込まれました。

 でも、その日は勤労感謝の日で、保健所の業務は休み。そして、休日窓口の職員さんが「もう一度考え直してください。きっと誰か引き取る人がいるはず」と、説得してくださったそうです。
 ミーコちゃん危機一髪の話を伝え聞いて、すぐさま仕事の休暇を3日とり、長崎へ駆けつけたのが、おじいちゃんおばあちゃんの身内にあたるサチコさん夫妻。ところが、ミーコちゃんはどう説得しても押入れの奥に隠れて出てきません。3日目の朝。「きょう、僕たちは東京に戻らなくてはいけないんだよ。ミーコは、ここに残ったら、ひとりぼっちだし、また、保健所に連れて行かれることになる。飛行機で一緒に帰ろう」と、リュウキさんはじゅんじゅんと説得しました。最終的には、ひっかかれても噛みつかれても力ずくの連行やむなしと、軍手に長袖と重装備をしていたそうです。

 説得を押入れの奥でじっと聞いていたミーコちゃん。押入れから出てきて、なんと、扉を開けてあったケージに、自分から入っていったのです!
「ミーコは、あのとき、いじらしくも自分で覚悟を決めた。でも、僕たちのしていることは、ミーコにとっては、住み慣れた長崎から見知らぬ土地への、拉致軟禁のようなもの。だから、『外には出られなくなるけど、そのかわり、僕たちがずっとそばにいるよ、家の中で好きに暮らしていいからね』と約束したんです」と、リュウキさんは言います。

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 上の3枚は、ご夫妻が見せてくださった写真です。左は連れてこられた直後のミーコちゃん。おじいちゃんを失い、保健所に連れていかれるという怖い思いをしたあとで、目が三角にとんがってます。鼻回りには外でのケンカで作った無数のキズ。まさに典型的なノラ顔でした。
 右の2枚は、最近のミーコちゃんの子猫みたいな甘えポーズ。愛されて安心すると、猫ってこんなにも目つき、顔つきが変わるのですね! まるで別猫のようです。

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 連れてきてもしばらくは心を開かなかったミーコちゃん。
「2~3週間たったころ、膝の上にポンと乗ってきたんです。あれは、本当に感動だったなあ。でも、ここではしゃぐとビビっちゃうかと、嬉しさを噛み殺しました」と、リュウキさん。「それ以来、彼とミーコはラブラブで、私は入り込めないの」と微笑む、サチコさん。
 じつは、リュウキさんは猫アレルギーでぜんそくなのに、ミーコを迎え入れたのです。「いつのまにかアレルギーもぜんそくもどっかへ飛んでいっちゃいました。猫と暮らすのは初めてですが、こんなにカワイイとは思ってもみなかった!本当に何から何までカワイイ」とすっかり骨抜きに。リュウキさんが出張のときなど、ミーコちゃんは寝室にこっそり入り込んで、「大好きなひと」の匂いのする枕の上でさみしさを紛らわせてい るそうです。

 サチコさんの本業は、ペットの心理カウンセラー。だからこそ、身寄りを失くした時のミーコちゃんの孤独や新生活の不安がよくわかったのでしょう。
 5年前の約束を守り、それぞれの出張も時期をずらして、ミーコちゃんをひとりぼっちにはさせない配慮を続けているふたり。でも、リュウキさんの出張のときには、こんなふうにすね顔になってしまうミーコちゃんです。

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 カフェの開業は1年半前。それぞれ本業に忙しいおふたりだけれど、人を招くのも大好きなので、「週末の自宅カフェならミーコと一緒にいられるし、お客さんにはミーコに会いに来てくつろいでもらえて一石二鳥」とひらめいたのだそうです。リュウキさんにぞっこんのミーコちゃんですから、お客さんに媚びたりはしません。でも、そんなミーコちゃんが、通ううちに馴染んでくれて、気が向けばお出迎えやお見送りまでしてくれるという、猫本来のマイペースで自由気ままな応対が真の猫好きにはたまらない、居心地バツグンのお店です。

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土壇場で人間を信じ、自らケージに入ったミーコちゃん。猫との約束を誠実に守っているおふたり。真心って、人間と猫の間にもちゃんと通い合うのです。


写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

ミーコ、幸せになれて良かったね。
更なる契約更新頑張って!

by さえたん 2014-08-05 16:32

「人に歴史あり」と言いますが「猫にも歴史あり」ですね。
猫1匹1匹に、それぞれの生まれてからの生い立ち、歴史があり
人間と同じように、毎日 さまざまな経験をして、さまざまな感情や思いを
抱いて生きているんですね・・。

ミーコちゃんの、横真一文字にキッ!!と結んだ口元の表情が
ん~~~、・・・なんだかとても健気に生きているような気がして
愛おしいです。

by 紅お蝶 2014-08-05 22:35

>さえたんさん

 ミーコちゃん若々しいので、きっと長生きすると思いますよ~

by 道ばた猫 2014-08-06 00:12

>紅お蝶さん

 そうなんです。一匹一匹に物語あり。猫さんに代わり綴ってます。ミーコちゃん、口元が利発そうでけなげですよね。

by 道ばた猫 2014-08-06 00:15

ミーコちゃん。よかった。
お口が可愛すぎます!
会いに行きたいなー!!

by みー。 2014-08-06 01:42

>みー。さん

 ぜひぜひ、カワイイお口のミーコちゃんに会いに行ってください~

by 道ばた猫 2014-08-06 10:53

必死にミーコちゃんを説得し、ずっと愛して大切になさっているリュウキさん・サチコさん夫妻と同時に、保健所へ連れて行ったご家族を説得した休日窓口の職員さんにも感謝の言葉を言いたいです。
すね顔のミーコちゃんもなんか可愛らしい。いま幸せだからこそ出来る顔なのかも?

by たかタか 2014-08-06 20:20

>たかタかさん

 こんな拗ね顔で待ってられたら、飛んで帰っちゃいますね~

by 道ばた猫 2014-08-07 07:22

ミーコちゃんの拗ね顔のかわいいこと!下唇をギュッと噛んでいるように見えます(笑)。
おじいさまは、ミーコちゃんを残していくのは、さぞ心配だったでしょうが、こんなにも素敵な家族ができて安心しているでしょうね。

by ちぃこ 2014-08-08 21:22

>ちぃこさん

 のんびりマイペースなチーコちゃんの目の色が野性的に光るとき。それはおさしみを一切れ分けてもらうとき。海辺の町で育った半ノラさんだった、わずかな片鱗です~

by 道ばた猫 2014-08-09 09:18