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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2014年10月21日

台風のあと

 台風や雷雨、大雪のとき。猛暑や酷寒のとき。
 「あの子たちはどうしのいでいるだろう・・・」と心配でたまらないのは、外猫のお世話をなさっている方や、なじみの外猫のいる方なら、みな同じだと思います。

 2週続けて台風が通り過ぎた後、私が飛んでいったのは、なじみの猫たちのいる海岸や小さな漁港です。

 海岸や漁港の猫たちは、漁のおこぼれや、釣り師の雑魚をもらって生きのびている猫がほとんど。台風で漁に出られず、釣り師も訪れないとなると・・・・腹ペコのはず。
 春生まれのあの子にとっては初めての台風、こわかっただろうな。

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 まずは、A漁港。
 チビちゃんは無事でした!船止めの杭の上で海を眺めながら、人の心配どこ吹く風。

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近くに魚のアタマが転がっていたので、漁師さんに振る舞ってもらったばかりのようです。よかったね。 大人猫たちも、皆元気でした。

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次は、B海岸。
海岸の主のような人なつこいこの子も、かわりなし。

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彼は、食い気より、遊んでほしくて、ずっと後をついてきました。桜貝や小石大の綺麗なガラスを拾いながら、一緒に砂浜を歩きました。

次は、C漁港。

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漁網小屋のなかで、食事中の子猫たち。初産の若い母さんは、子どもたちに先に食べさせて、見張りをしています。大皿にたっぷりと煮魚。ここは、優しい漁師さんがお世話をしているので、安心です。

最後に、一番気になっていた子たちのもとへ。このエリアの子は、いつもお腹を空かせています。以前はよく釣れていた河口だったのですが、3年前の地震・津波のあと、土砂が溜まってあまり釣れなくなってしまったのです。でも、ここで生まれたので、縄張りを変えられずにいるのです。津波の直前、河口の水がサーッとひいたとき、猫たちはみな水際からいっせいに遠ざかって、高いほうへ走ったとか。猫たちの危機管理能力は、人間の想像をはるかに超えたものなのかもしれません。現に、台風のあと、こうして駆けつけて「大丈夫だった?」と尋ねても、「何のことさ」みたいにケロッとしているし。

何か月ぶりかなのに、私のことを覚えていた雌猫がいつの間にか足元に。彼女とは3年来のなじみ。写真展のDMになってもらった頃は鈴をはったような瞳の初々しい娘だったのに、あれよあれよと逞しくなりました。ナマリを与えると、くわえて走り去り、優しい声で誰かを呼び寄せます。現れた雄猫の足元にポトンとナマリを落としてやる彼女。雄猫も、彼女以上に汚れています。釣り師が来ないときは、食べるものを探して砂を掘るので、足もお腹も鼻先も汚れてしまうのです。

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自分もさぞひもじかったろうに、雄猫に先に食べさせるなんて。
猫って、気高いなあ、と心から思う場面にこれまで何度遭遇したことでしょう。
もちろん、そのあと、2匹にたっぷりと猫缶を振る舞いました。漁港の人に訊いたら、2匹の関係は、母と息子だそうです。この母さん猫は、何度も出産していますが、育たず、この雄猫だけが残りました。釣り師に小魚をもらったり、漁協のバケツをあさったりして、寄り添って暮らしているのだそうです。

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「春に何回も来たけど、会えなかったから、もう死んじゃったのかと思って悲しかった。会えてよかった。ほんとにうれしい。これから、もっとたびたびおいしいもの持って会いに来るからね」と、2匹につもる話をしながら、一緒に小一時間潮風に吹かれました。

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一日一日をつつましく必死に生きて、夕日の中で寄り添う母と子。母さんは微笑んでいるよう。うす汚れてヨレヨレでも、どんな猫よりも、私には美しく見えました。


写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

毎回楽しく読ませていただいてますが、今回は涙が止まりませんでした(>_<)
子供が大きくなっても、子供のことを一番に考えるのは猫も人間も一緒なんですね。
素敵なお話をありがとうございました。

by みか 2014-10-21 12:14

切ない、素敵なお話です。世界中のにゃんこに幸せを~!!

by ふい 2014-10-21 14:30

どのお写真も愛情溢れていますが、最後の1枚は特に美しく素敵です。

逞しく、それでいて美しいそんな猫たちのように私も生きていかないと。

by よーこ 2014-10-21 16:39

毎回素敵なお話しありがとうございます。
お母さんの愛情をいっぱい受けて、息子のにゃんこも逞しく育ってくれるといいですね。漁港とにゃんこ達、絵になりますね~。

by うさこ 2014-10-21 19:53

 B海岸の一枚目の写真の奥に“死体A,死体B(失礼!)”みたいに猫が横たわってるのが良いと思いました。

 今回は、お話し全体の3/4あたりにほんのり哀しい描写がありますね。

by クックロネコ 2014-10-21 20:36

ひとつひとつ季節を過ごしていって欲しいものですね。
本当に逞しく、美しいですね。生命力を感じます。生きて、生き抜いていって欲しいです。

by ぐり 2014-10-21 21:29

>みかさん

息子は大きいのですけど、具合がそんなによくなさそうなのです。母さんは栄養をつけてやりたかったのでしょうね・・・・。

by 道ばた猫 2014-10-22 10:44

>ふいさん

 いじめられることもなく、隠れ処もあるのですが天候に左右される暮らしです。食べた後の満ち足りた表情を見ると、「しあわせ」の時間はここにも確かにあると思われます。

by 道ばた猫 2014-10-22 10:50

>よーこさん

寿命の短い彼らと比べて、ニンゲンって、必死で長寿を願う癖に戦争やら贅沢やら余計なことばかりしてなんなのかなあ・・ですね!

by 道ばた猫 2014-10-22 10:53

>うさこさん

漁村、路地、町の小さな喫茶店、お寺の境内、農家の縁側、窓辺・・・猫がいて絵になる風景っていっぱいありますよね。私は柿の木と田舎の猫を撮るのが憧れです(笑)

by 道ばた猫 2014-10-22 11:03

>クックロネコさん  

2枚目と3枚目は、おやつを食べて、満足で脱力の状態なんですよ~ 安心しきってますね!

by 道ばた猫 2014-10-22 11:06

>ぐりさん

いつも別れるとき、ふっと心にかすめます。次に来た時、あえるかな、と。だからこそ、彼らの姿を目に焼き付け、心通わせたい。いとしさを伝えたいと思うのです。

by 道ばた猫 2014-10-22 11:10

また会いたい 気にかけてもらえる幸せな出会いですね(*⌒▽⌒*)猫ちゃん達の意思がみえて
その場に一緒にいたくなりました(*⌒▽⌒*)
あったかいお知らせありがとうございます

by ちゅうちゅう 2014-10-22 13:11

>ちゅうちゅうさん

 会いに行くと、うれしそうな顔をするんです。よく「猫は匂いで覚えている」って言いますけど、私の経験では話しかけるとすぐに思い出すみたいだから、声で覚えてるのではないかと・・・。

by 道ばた猫 2014-10-22 22:22

佐竹さん
こんばんは。
佐竹さんのコメントを何度も何度も読んでます。
想いをいつも聴いてもらう場にしてごめんなさい。
昨日、トラは2回目の入院になりました。
貧血がひどく、ご飯も水も入らない。
よだれがひどく出るみたいで。
でも、生きようとしてるんだ。頑張ってるんだ。今日会いに行って、そう思えました。
トラの母親フー子も、私と一緒にトラの帰りを待っています。
前回、コメントを下さったにゃにゃさん、嬉しかったです。
nyaaちゃんはどうですか?
佐竹さん
この場を借りちゃってごめんなさい。
やっぱり、こころがつらくて。
ここに何度も何度もきちゃいます。

by じゅんこ 2014-10-23 20:19

>じゅんこさん

トラちゃんは、いま、懸命に生きようとしているんですね。そして、フー子母さんもじっと待っているんですね。

お返事にならないかもしれませんが、おととい、ある動物病院に子猫に面会に行ってきました。その子はノラの子で、まだ3か月くらい。木から落下して、脊椎を損傷し、そのノラ一家を気にかけている人たちが病院に運び込んだのです。「生きるかどうかわからない」というのが運び込まれた時の診断。8日前のこと。助かっても下肢麻痺は治らず、排泄は自力でできない生活という見たてでした。
「安楽死」というのが、そういう状態の猫がたどるほとんどの運命です。
でも、先生も運び込んだ人たちも、いっさい口にしませんでした。ひたすら子猫の
生のみを見つめました。そして・・・信じられないことが2つも起こりました。先生の言葉「猫というのは時としてこういう奇跡があるのです」。この物語は猫日記で書きますね。
思うに、猫の生死に関してニンゲンのできることはあまりないのでは。猫自身の生きようとする力。でも、たとえ力尽きたとしても、巡りあって、懸命に生きようとする姿をみせてくれたことがすでにひとつの奇跡なのかも。
沼田まほかるさん著の「猫鳴り」(双葉文庫)という本の第3部は、猫好きにはつらいけど、大きな救いを与えてくれる本です。

お力になれなくてごめんなさい。がんばっているトラちゃんに、心からの敬意とエールを送ります。

by 道ばた猫 2014-10-24 02:49

佐竹さん
本当に力になっています。
佐竹さんのコメントを読んで、私はつらい想いから逃げているんだと感じました。
どれだけかけがえのない命だろう。どれだけ大事な存在なんだろう。
そして、この体験もどれほど大事なことなんだろう。と。
しっかりと体験します。
こんなにも大事な大事な時間を共に過ごせてこれたのだから。その延長に当たり前のようにあるこの時間も私は大事にします。
今朝、やるだけのことはやるけれども難しいかもしれないということをご了承下さいと、先生から電話がありました。
これから会いに行ってきます。
佐竹さん
本当に命と向き合うことの厳しさと優しさを感じさせて頂いています。
うんと味わってきます。
猫鳴りも読んでみたいです。
そして、猫日記に書かれる猫の奇跡を楽しみにしています。
この時も本当に奇跡なんですね。
ありがとうございます!

by じゅんこ 2014-10-24 13:23

佐竹さん
トラが今朝旅立ちました。
昨日の夜、家に連れて帰りました。
意識が混濁した中で、夜中に必死に歩いて布団の中にもぐってきてくれました。
朝気がついたら、、まだうんとあったかかったです。
昨日の夜、トラを撫でながら「猫鳴り」を読み終えました。
トラも、こんな弱っちい母ちゃんがなんとか大丈夫なとこまできたって思ってくれたのかなあ。
佐竹さん
この場があったから、私は本当にトラとの最期をまっすぐに体験できました。
本当にありがとうございました。
トラは今頃、ミー子と遊んでるんだろうなあ。ご飯もいっぱい食べてるんだろうなあ。

by じゅんこ 2014-10-25 21:19

>じゅんこさん

トラちゃん、おうちで、温かい布団の中で、すっとお空に昇って行ったんですね。何よりの送り方だったのではないでしょうか。心より哀悼申し上げます。

トラちゃんへ
きのうまで、猫のお母さんとニンゲンのお母さんと一緒に暮らせて幸せだったね!そんな幸せな猫はめったにいないんだよ。

そして最後の日までよく生き切ったね、えらかったね、いっぱいいっぱい褒めてあげたい。

フー子お母さんのことは安心してじゅんこ母さんにまかせて、お空でミー子ちゃんやみんなと仲よく遊んでね。

お空から下を見てたら、じゅんこ母さんは、しばらくはトラちゃんのことを思い出して泣いてるかもしれないけど、大丈夫。「ミー子~トラ~ 元気でやってるよ~ 私のところへきてくれて思い出いっぱい残してくれてありがとう」って、笑顔で呼びかけてくれる日がそのうち来るから。

by 道ばた猫 2014-10-26 03:08

佐竹さん
本当にありがとうございます!
トラに出会えて本当に幸せでした。
また来させてくださいね。

by じゅんこ 2014-10-26 19:35