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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2014年10月28日

幸せをつかむまで その① 「狂暴猫」

今週から3回、保護されて幸せになった猫たちの今をお伝えします。里親が見つかりにくい「狂暴猫」「引きこもり猫」「地味猫」が、それぞれの幸せをつかむまでの道のりです。

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 まず、最初は、まさはるくん。推定2歳すぎ。家族みんなに可愛がられ、ふさふさの毛並みでこちらをつぶらな瞳でじっと見ているさまは、シャイなお坊ちゃまにみえますが・・・。彼はシェルター時代から「狂暴」で名を馳せた過去を持つオトコでした。

 まさはるは、昨年5月、福島県内の帰還困難区域のF町で保護されました。まだ1歳くらいの若い猫でしたから、被災猫の2世か3世と思われます。人のいない町で生まれ、想像を絶する思いをして生き抜いてきたのでしょう。ボランティアが町に入ったからこそ繋いだ命でした。

 ところが、このまさはる、長毛のイケメンなのですが、シェルターの人たちを散々手こずらせる狂暴さで、隔離ケージに。近づこうものなら、シャ~~と威嚇。パッパッパッと手が出、「近づくな!」とばかりダンッダンッと床を踏み鳴らすのです。人のいない町で生まれ育ち、人間というものがこわくてたまらないのです。

 半年たった頃、一向に心を開かないまさはるを「うちで引き取って里親を見つけましょう」と申し出たのが、浦安市の保護猫ラウンジMEのオーナー小倉さんでした。あのままでは、あの子は里親が見つかるのは無理と、思ってのことでしたが、まさはるの瞳が意外にも純真だったことに心動かされてのことだったと言います。「あのまさはるが保護猫ラウンジへ!」と、彼を知るボランティア一同、大いに驚いたそうです。

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 私が初めて見たまさはるは、MEにきてひと月たった頃。ケージハウスの奥で、手負いの獣のように、低くう~~~と唸っていました。正直言って、この時点で里親が見つかるのは私には絶望的に思えたものです。

 2か月たっても3か月たっても、まさはるはケージフリーにはできない狂暴さでしたが、ケージの中から、ラウンジで遊ぶほかの保護猫たちを眺める目つきが無邪気そのもので、「あれ?」と胸を衝かれました。

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 こんなふうに、ほかの猫が転がしたおもちゃに、つい手を出してしまうまさはる。彼も遊びたい盛りだったのです。いっさい無理をせず、まさはるが心を開くのを気長に待っていたラウンジのスタッフを驚かせる事件がおきました。ある晩、まさはるが自分で手を伸ばしてケージの外付き蝶番を外して、外に出ていたのです!(夜は猫だけになります)。一晩中、彼は保護猫たちと遊びまわったようです。朝、掃除が始まると、さっさと自分でケージに戻っていきました。

 その日以来、まさはるは、少しずつ、ラウンジでフリーな時間を過ごすようになりました。まさはるは子猫をペロペロなめてやったりする優しい子でした。でも、まだまだ人には警戒心あらわで、同じく人が苦手な福島からの保護猫まどかちゃんと、人の手が届かない高いところに隠れたり。

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 気がつけば、ラウンジの真ん中でくつろぐまさはるの姿が見られるようになったのは、MEにやってきて半年近くたった頃です。

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そんなまさはるを「我が家に迎えたい」と申し出たご夫婦がいました。もちろん、まさはるにとっては初の名乗りです。

 スタッフは「まさはるはすぐに手が出て、スタッフもまだ触れない子なんです」と驚きながらも説明しましたが、ナガヨシさんご夫妻の気持ちは変わりませんでした。じつは、ナガヨシさんの奥さまは、道ばた猫日記「人のいない町で生まれた子」で紹介したこの1枚の写真で、まさはるに一目ぼれしたのだそうです。

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狂暴猫と言われているのに、なんと純真な目。この子をうちに迎えてやりたい、と。MEに行って、「うちのこになる?」と訊いた時、まさはるはまっすぐに奥さんを見つめ返しました。それで、決まり! 
「たとえ、さわることができなくても、この子が家にいてくれたら嬉しいんです」というナガヨシ家にもらわれていったまさはるくん。着いた時から、先住猫の黒猫ナナちゃんと「ミャ~ンミャ~ン」「ニャ~ンニャ~ン」と鳴きあって、いい感じ。すぐに「ナナお姉ちゃん、ナナお姉ちゃん」と後をくっついて回る仲になりました。

まさはるがナガヨシ家にやってきて、もうすぐ5カ月。その間、MEのスタッフは、ナガヨシ家から送られてくる写真付きメールに驚かされっぱなしです。メールのタイトルは「まさくん遊ぶ」「まさくんくつろぐ」「まさくん明け方の大運動会」「まさくん、ぼくもなでられたい」「まさくん抱っこされる」・・・。

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 ナガヨシさんに見せてもらったナナちゃんとの2ショット。ナナちゃんのシッポで遊んだり、椅子の上でくっついてたり。これが「狂暴猫」と呼ばれたオトコ?とは信じられない甘えん坊ぶりです。子猫時代をもう一度やりなおしているのでしょうか。

ボランティアさんやMEのスタッフたちの「幸せになってほしい」という思い、そして、ナガヨシ家の「うちの子になってほしい」という思いが、まさはるを本来の無邪気で優しい猫に戻したのでした。思いは必ず通じるのですね。



写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

凶暴な子・・・と言うより、そうやってしか生きて来られなかった子だったのでしょうね~。
ナガヨシ家の奥様が見つけてくれて、惚れこまれて、本当に良かったね!!
うちの黒猫は、保護してかれこれ3年ですが、未だに私が近づくと逃げます( ̄_ ̄;)
まさくんの方が、余程おりこうさんです。笑

by リトル 2014-10-28 14:15

まさはる君は、浦安キヤットシルターの頃から気になってHPで観てました。
実は我が家にもまさはるが居ます。5歳♂で 浦安のまさはると一緒の茶トラ長毛です。
生後1ヶ月頃に病気で目がぐちゃぐちゃだったのを保護し今に至っています。
今では後に保護した子達4匹の良いお兄ちゃんをしています。
ちなみに我が家で「雅治」=ましゃ♥と呼ばれてます。福山さんファンの一家でして、、、

by pontanu 2014-10-28 20:18

プライバシーの問題もあるのでしょうが、「まさくん抱っこされる」の写真が見たいなぁ、と読後に思いました。
 でも、良いお話しですね。。。

by クックロネコ 2014-10-28 21:27

>リトルさん

黒猫はナイーブなコが多いですね~  うちの黒猫菜っ葉ちゃんも、農園で菜っ葉をかじって生きのびてた子猫の時に保護しましたが、触れるようになるまで数カ月、膝に乗るまでに3年かかりました。その子なりの準備期間が要るのですね。

by 道ばた猫 2014-10-28 23:13

>pontanuさん

 自分自身がつらい思いをした子は後輩に優しい子が多いですね~
 一家をあげて 福山ファンなのですか!じつは、ナガヨシさんの奥さまも福山さんの大ファンなんですよ~

by 道ばた猫 2014-10-28 23:17

>クックロネコさん

「まさはるくん 抱っこ」写真は、キャットラウンジ猫の館MEの最新ブログで見ることができますよ!

初めての抱っこで、きょとんとしているまさくんがなんともカワイイです。

by 道ばた猫 2014-10-28 23:20

まさはる君の事は、ニャンダーガードの里親募集を見た時から知っていました。
浦安へ来た事を知り、毎日ブログを見ていました。本当のお家が見つかり幸せに暮らす姿を
見て、私まで幸せな気持ちになりました。ありがとうございます。

by 凛ママ 2014-10-29 07:41

まさはるくんの居場所がちゃ~んとありましたね・・・。言葉には出来ない(ホントに出来ないですけど・・)けど生まれた時から、ずっとずっと寂しくて・・たくさん甘える事が出来ない環境だったんでしょうね。ホントに人相ではなく猫相が変わりますね!とってもラブリーなお顔になってます^^まさはるくん以外にもこんな思いをしてる子達がたくさんいるんですよね・・。一匹でもそんな子達が減っていきますように・・。

by りんりん 2014-10-29 12:03

凶暴になるのは、追い詰められて追い詰められて、最終的にそうなるのですよね。どんな思いをして生き抜いてきたかを思うと、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになります。
それでも、まさはるくんは安心して優しい顔になりましたね!末永く幸せに暮らしてね!

by ちぃこ 2014-10-29 20:54

凛ママさん

現地に通い、根気よくまさはるたちを保護してくださったにゃんだーガードの方たちが、まさはるの今のしあわせのきっかけを作ってくださいました。ほんとうに頭が下がりますね!

by 道ばた猫 2014-10-29 23:35

>りんりんさん

ほんとうに。まさはるのストーリーから、被災地で救いの手を待っているたくさんのまさはるたちに思いを馳せていただけたら・・・と。

by 道ばた猫 2014-10-29 23:38

>ちぃこさん

そう、そう、そうなんです! 幼いまさはるは必死でひとりで身を守っていたんです。いまは、ニンゲンンの父さん母さん、お兄ちゃんたち、そして、猫のお姉ちゃんができて、子猫時代からやり直しの幸せです。

by 道ばた猫 2014-10-29 23:44

私自身、難病を患っていて、このような記事を読むとがんばる気力がでてきます。
家にも保護猫が2匹います(オス3歳、メス10歳→我が家で一番威張っていますよ)
必死に生き抜いた、まさはるくん、我慢強く見守ってくださったMEのスタッフの方々、
まさはるくんに安心できる家庭を与えてくださったナガヨシさんご夫婦がずっと幸せでありますように。
もちろん、ナナちゃんも……。

by りん 2018-05-14 06:53

地域ねこで凶暴な男の子がいます。 いつまでも外で世話するのは難しいしな…と悩んでいたところ、このブログにつきました。 心を開けば、愛が伝われば傷ついた子も変わっていくんですね。
勇気をもらえました。 命をつないでいきたいと思います。

by まゆころ 2021-02-06 23:57