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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2014年11月04日

幸せをつかむまで その② 「引きこもり猫」

テトラは、若いとは言えない年齢のおとなしいさび猫。

保護猫ラウンジ猫の館MEの窓際に置かれたキャットタワーのボックスの奥に、いつもいつもいました。大勢の猫が遊びまわるラウンジで、彼女が歩いたり、鳴いたり、遊んだり、ごろんごろんしたりしているのを、ついぞ見たことがありませんでした。いわゆる「引きこもり猫」です。  

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でも、「テトラちゃん、元気にしてた?」と声を掛けると、もぞもぞっと恥ずかしげな風情になり、ボックスの中に手を差し入れて柔らかな毛をそっと撫でてやると、ゴロゴロゴロとかすかな音が聞こえてくるのです。けっして人間嫌いなのではなく、恥ずかしがり屋さんすぎる、温厚そのものの猫なのでした。

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テトラの年齢は5~6歳と聞きました。ノラの子として生まれ、とある駅にほど近いマンションの敷地内に居ついていた子です。マンションの住民の幾人かから世話をしてもらい、チャリ~ンと鍵を鳴らして呼ぶと、どこからかすぐにあらわれて、足元にスリスリする甘えん坊でした。外暮らしとはいえ、平穏にひっそりと暮らしてきたのです。

ある日、管理組合が撒いたチラシ。そこにはこう書かれていました。
「ノラ猫に餌を与えないこと。ノラ猫は捕獲して保健所に連れて行きます」
ノラ猫が敷地内にいることをこころよく思わない人たちの意見が通ったのです。テトラはただつつましく生きていたのに。

保護主さん2人によって緊急避難で持ち込まれたのが、ここ、猫の館MEでした。

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ところが、ビビりで恥ずかしがり屋のテトラは、お客さんにアピールするどころか、引きこもってどんな猫なのかわからないままに、日にちがたっていきました。持ち込んだ保護主さんは、もうこのまま里親は見つからないのではと、あきらめかけていたそうです。
マイナーな人気のさび猫だし、5歳を過ぎているし、引きこもりですからね。

でも、テトラちゃんのチャーミングさにちゃんと気づいて、うちの子にと申し出たご夫妻がいました!
ハサモト夫妻は、引きこもりのテトラちゃんのことを「ぜひこの子を」と気に入って連れ帰ったのです。

なぜなら、先住猫のぽぽみちゃんも、テトラちゃんと同じくらいのビビりさんだったから。NPO法人犬と猫のためのライフボートから迎えた元保護猫のぽぽみちゃんは、やってきて1年もの間、まったく触らせませんでした。夫妻は、ゆっくりのんびり、ぽぽみちゃんのペースに合わせて生活し、今では膝に乗ったら下りようとはしない甘えん坊になったぽぽみちゃん。相変わらず、お客さんが来ると、隠れ場所を探し回るビビリだけれど。

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「ぽぽみにストレスを与えない猫」というのが、2匹目を迎える第一条件でした。温厚この上ないテトラちゃんはまさにぴったりだったわけです。

「ぽぽみという前例があったから、引きこもりだって時間が解決する、とわかってた」 「うちに来てはじめてテトラの全容を見たら、案外大きい子だったね(笑)」
と、笑いあうお二人。
 私もテトラの全容を知りたかったのですが・・・ソファの後ろにこそこそっと隠れられてしまいました。

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でも、上からのぞいたら、以前よりずっとふっくらしたクリクリお目目のテトラちゃんを見ることができました。

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 テトラちゃんの新生活は2段の大きなケージハウス生活からスタートして、少しずつ少しずつ、ぽぽみちゃんとの距離を近くしていったそうです。今ではこんな至近距離でくつろぐ2匹。同じ年頃のビビり同士、力関係はちょうどバランスがとれているようです。

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「テレビを見ていると、いつのまにか両脇にぽぽみとテトラがすりすり甘えてきて、我が家は居ながらにしていつも猫カフェ状態で、幸せです!」と、お二人。

 ぽぽみちゃんもテトラちゃんも、こんなやさしい父さん母さんに見つけてもらって、ほんとうによかったね。
 テトラちゃんは、ボックスの奥で自分を迎えに来てくれる人がきっと現れるのを信じてずっとずっと待っていたんだね~


写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

夏に、保護主さんと一緒に会いに伺った時もテトラちゃんはこんなふうにソファーの後ろに隠れてしまいました。でも、保護主さんが鍵をチャリンと馴らして名前を呼ぶと可愛いお声でお返事してくれたんですよ☆「ちゃんと覚えているんだね〜!」とみんなで感動しました♪

テトラちゃんが半年間お世話になった可愛いピンクの2段ケージはご夫妻からのお申し出を受けて、信頼の置ける団体さんへ寄贈させていただきました。
今は被災地で保護された仔が使っているそうです^^

by かおりんご 2014-11-04 21:54

お目目がε=ε=(ノ≧∇≦)ノ
まんまる
安心してますね(*⌒▽⌒*)
待っててくれる わかってくれる
大切な心温まりましたありがとうございます

by ちゅうちゅう 2014-11-04 22:59

>かおりんごさん

そうだったんですね~ 保護主さんが鍵をチャリンと鳴らして名を呼んだらちゃんと覚えてて返事をしてくれたこと、新生活で使ったケージがいま、役に立っていること、嬉しいお話教えてくださってありがとうございます!

by 道ばた猫 2014-11-04 23:44

>ちゅうちゅうさん

猫って、可愛がられると、目が丸くなっていくんですよね! うちの元ノラ菜っ葉ちゃんも、吊り目から丸い目になり、ついでに体も丸くなりました(笑)。

by 道ばた猫 2014-11-04 23:48

模様によって性格があるというのは、本当かどうかはわかりませんが、さび猫はとっても控えめで思慮深く、頭がいいイメージがあります。人の話もじっと聞きますよね!
甘えん坊でアピール上手の猫ももちろん可愛くて、飼いやすいとは思いますが、テトラちゃんのような猫が少しずつ甘えてきてくれる喜びはたまらないですよね~。
ぽぽみちゃんとテトラちゃん、なんだか雰囲気も似ていますね。びっくりしてるまんまるおめめが2匹とも可愛いです。

by ちぃこ 2014-11-08 21:34

>ちぃこさん

さび猫って、哲学的な雰囲気の子が多いですよね!
里親募集では売れ残るって話も聞きますが、顔立ちがわかりにくくて、自分からアピールしないせいかな?
さび猫を飼った人はみなさび猫大好き!になってしまうようです。この春19歳で旅だった我が家のさび猫スーちゃんも温和でおとなしいお利口さんでした。

by 道ばた猫 2014-11-09 01:24