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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2014年11月18日

アタシたちの母さん

アタシたちきょうだいの暮らしているのは、小さな小さな漁港。
オテンバなアタシと、ちょっと引っ込み思案な弟。アタシは、鼻のところに黒い染みがあるけど、弟には染みはなくてやさしい顔をしてるの。
アタシたちの母さんはまだ若くて、スレンダーなキジトラ美人なの。ほらね。

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母さんは、まだ危なっかしいアタシたちのそばにいつもついていてくれるんだ。甘えんぼの弟は母さんのくっつき虫だけど、好奇心いっぱいなアタシはこの頃、 波打ち際で遊ぶのが大好き。 足が濡れたって、夢中で波と遊んじゃう。

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この漁港は気のいいい漁師さんが多くて、漁から戻ってくると、大きなお魚を1匹、アタシたち一家にポンとくれるの。 母さんはまずアタシたちにおいしいところをお腹いっぱいに食べさせて、それから残ったのを自分が食べるの。

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だから、アタシは、食べた後のお腹はこんなにぽんぽこりん。腹ごなしは、船のロープのぶら下がり体操とか漁網の上のトランポリン。

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アタシたちの母さんはね、内緒話もやさしく聞いてくれるし、

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甘えたいときはそっと寄り添っててくれるし、

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長いシッポをゆらゆらさせて遊ばせてもくれるの。

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アタシも弟も、こんなに大きくなってもおっぱいがまだまだ恋しくて、通りかかる人にしょっちゅう笑われちゃうんだけど、道ばたの陽だまりで母さんのおっぱいを吸ってる時がいちばん幸せ。チュッチュッって吸ってるうちに、とろとろ眠くなるの。
母さんはじっとおっぱいを吸わせててくれる。ちょっと困ったような顔をして。

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母さんのおっぱいは、いくら吸っても出ないの。
なぜって、母さんはね、アタシたちを産んだ母さんじゃないから。

アタシたちきょうだいは、ほんのチビっちゃいときに、この漁港によそから捨てられた。
みゃあみゃあ鳴いてるのを、この漁港生まれノラのキジトラのお姉さんが飛んできてペロペロなめてなだめてくれた。そして、その日から、アタシたちの母さんになってくれて、ごはんのもらえる場所や暖かいねぐらや危険な場所のこととか全部教えてくれたの。
「よくまあ、こんなに自分の子みたいに可愛がれるもんだ」って漁師さんたちは感心してるし、通りかかりの知らない人は「母猫によく似て子どもたちも器量よしだね」って言ってくれる。

アタシたちの大好きな母さん。自慢の母さん。
母さんのおかげで、アタシたち、「海辺の子」として元気に逞しく育ってるよ。一人前の海辺の猫になるまで、そばで見守っててね。 もうちょっとだけの間、おっぱいを吸わせて甘えさせてね。

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写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

ここへの訪問にかかせないもの・・・タオル。
優しいお母さんと出会えてよかったね。
3ニャン、漁師さん達に幸多かれ^^「
昨日、小湊鐡道に乗ってきました。「養老渓谷駅」で、乗務員さん、駅員さんたちに世話されているラッキーなニャンズに会ってきました。

by ハチ 2014-11-18 11:45

涙腺が…。
キジトラ母さん、漁師さん、心からありがとうございます。

by santi 2014-11-18 11:58

ええ話や。ホンマええ話や。

by そが さねあき 2014-11-18 15:11

はじめまして(๑′ᴗ‵๑)
母性って本当にすごいな〜って感心しちゃいます。
地域の方々の温かい眼差しにも
とっても癒されました♡

by meg 2014-11-18 16:48

猫の思いやりに心が震えてしまう…。

それにしても佐竹さん、文章と写真がぴったりですごい!!!!

by 名無し 2014-11-18 16:54

読んでで感動で涙しました。

これからも幸せな家族でいてほしいです(*^-^*)

by ミミチロ 2014-11-18 20:44

なんてやさしくて、愛しいんだろう…。
とても幸せな気持ちになりました。

by きゃぐ 2014-11-18 20:55

ほんとに、ほこほこします。
お母さんも海辺の子も港の人たちも優しい人たちだぁ
共感する人たちがたくさんいますね。

by ぐり 2014-11-18 21:19

お乳が出ないのにこんなにも母性本能を発揮する猫も
珍しいのでは?胸がキュンとなりました。
でも10数年前に我が家には5匹の成猫がいましたが、子猫を保護した時
雌猫はしらん顔しているのに雄猫が出ないお乳を吸わせていたことを
思い出しました。やはり猫の性格によるのですね

by AWSママ 2014-11-19 09:01

読み始めは、何て仲の良い親子三匹・・・!と思っていたら・・血の繋がりなんて関係ないですね・・!
もう・・寄り添っている姿がいじらしくて、可愛くて、たまらないです。この兄弟はキジトラ母さんに救われたんですね・・(泣)いつまでもずっと一緒にいてほしいです。漁師さん、どうかよろしくお願いします!

by りんりん 2014-11-19 10:37

 正直“道ばた猫日記”を読む時は、「どこかでチクッ!と悲しい部分があるのかなぁ?」と少し重い・構えたような気持ちで読み始めることが多いのですが、今回は“嬉し涙系(?)”で少しホッとしております。

by クックロネコ 2014-11-19 20:33

仲良きことは美しきかな。みんなの気持ちに温かい贈り物を届けてくれるネコ家族を見守りたいです。島の方々よろしくお願いします。

by まみい 2014-11-19 22:59

>ハチさん

小湊鉄道の木造駅舎大好きです! 各駅に駅猫がいて可愛がられていたら、もっと楽しい路線になるのにね(笑)。

by 道ばた猫 2014-11-20 16:57

>santiさん
 猫社会(野生の)では、ワケアリ仔猫の面倒見はいちばん若い猫の役目と聞いたことがありますが、それにしても、見事な母さんぶりでした。

by 道ばた猫 2014-11-20 17:03

>そが さねあきさま 

 家猫と外猫がどっちがしあわせかの議論はさておき、ニンゲンもかなわない気高い姿を見せてくれるのは、やはりペット化された猫よりノラのほうが多いように思います。

by 道ばた猫 2014-11-20 17:07

>megさん

ほんとうに母性ってすごいですね! オス猫で子猫の面倒を見るケースも時々見ますが、あれも母性なのかなあ・・・。

by 道ばた猫 2014-11-20 17:10

>名無しさん

 たくさんの説明は要らない。事実だけ、という物語にときとして出合いますが、今回もそうでした。

by 道ばた猫 2014-11-20 17:14

>ミミチロさん

これから海辺は寒い季節がやってきますが、漁網小屋の網の下はけっこうぬくぬくしているようです。みんな元気でたくさんの季節をかさねて行きますように!

by 道ばた猫 2014-11-20 17:17

>きゃぐさん

 やさしくてけなげでミステリアスで愛しい生きものですよね。猫って。ほんとうに!!

by 道ばた猫 2014-11-20 17:20

>ぐりさん

ここは、漁師さんや村の人たちが、みんなわたしに笑顔で声を掛けてくれます。猫と人、人と人、やさしさの根っこは同じだといつも思います。

by 道ばた猫 2014-11-20 17:23

>AWSママさん

雄猫でもおっぱいを吸わせて母親代わりをする猫を何匹も見ました。何かの使命を感じているのかもしれませんね。

by 道ばた猫 2014-11-20 19:56

>りんりんさん

私も本当の母子とばっかり思って「仲のいい親子ですねえ」と行ったら、漁師さんがわけを教えてくれて…もうびっくりしました!

by 道ばた猫 2014-11-20 19:58

>クックロネコさん

チクっとしない楽しいことばかりならいいのですが・・・やはりありのまま綴っていきたいと思っています。人間も同じことですが、生きることは哀歓両方必ずつきまといますものね・・。

by 道ばた猫 2014-11-20 20:04

>まみいさん

ここは、島ではなく、観光客など訪れない小さなつつましい漁港なのです。そこに、人々も猫たちも寄り添ってつつましく暮らしています。

by 道ばた猫 2014-11-20 20:07

やさしく寄り添う姿に涙が出ます。漁港の人たちにも温かく見守られこの子たちがすくすく育ちますようにと願わずにはいられません。
捨てられたけどすてきなおかあさんに出会えてよかったね(^^)元のお母さんにもこの元気な姿をみせてやりたいね・・・。

by 名無し 2014-11-21 13:26

>名無しさん

ここまで大きくなったらもう大丈夫、という感じでしたが、キジトラ母さんはまだまだ心配そうでした(笑)。

by 道ばた猫 2014-11-22 09:27

キジトラ母さんにそっくりで毛の長いニャンコ「マメ」(3才オス)と
暮らしております
去年やってきた2か月(メス)の「ラム」をその日から母親のように
かわいがる・・かわいがる^^ふかふかのお腹にラムを寝かせ
とうとうおっぱいを吸われて赤く腫れ上がりました><

今は二人で家中を追っかけっこしてます^^
キジトラ母さんも可愛い家族が出来、幸せなのかも・・・

by マメの母 2014-11-29 16:06

>マメくんのお母さん

 いとけないものを可愛がるって、動物の本能なのかもしれませんね!
 人間はちょっと退化しちゃったけれど。マメ母さん、ラムちゃんといつまでも仲よくね~
 

 

by 道ばた猫 2014-11-30 14:06

どのお話も好きです。
でも、一番好きなお話です。

by ももママ 2014-12-02 21:33

>ももママさん

ありがとうございます。
私にとっても、これまで出会った猫たちの見せてくれたものがたりの中で,とりわけ大切なものがたりです。

by 道ばた猫 2014-12-03 10:13

キジトラ母さんがいとしくて忘れられないお話です。
叶うなら、これからもずっと一緒に幸せに暮らして欲しい。

by dokudami 2014-12-17 12:39

>dokudamiさん

ずっと仲良く一緒に暮らしてほしいですね~。でも、子どもたちがちゃんと生きていけるようになったら、子離れするのも、どうぶつの世界では自然のことなのかな、とも思えます。

by 道ばた猫 2014-12-21 09:08

佐竹さんの記事はどれも素晴らしいですが、中でも一番好きな物語です。
本やブログで、もう20回(!)は読んでいますが、
それでも毎回ウルウルしてしまいます。
心が洗われ、優しさに満たされる感じでしょうか・・・
動物の気高さを伝えてくれる名作だと思います。
写真も最高に素敵!(*^-^*)
自慢の母さんと寄り添う姿、どれも愛と安心感にあふれていますね~!
ぶら下がり体操のぽんぽこりんのお腹も、なんて愛らしい♪
チャーミングな語り口で、この物語がいっそう魅力的になっています。
佐竹さんの一人称の文章大好きです。

by ぴっころ 2022-09-05 15:58