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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2015年01月27日

ノラ猫母さんミステリー

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 シャ~~、ハ~~ッ。初対面で私と目が合うなり、保護部屋のドアの上に駆け上って「アタシの子どもたちに何かしたら、ただじゃおかないよ!」と唸りながら見下ろす母さん猫。外敵から子猫を守るために関心をわが身にひきつけて、威嚇しているのです。もちろん、自分自身も怖くてたまらないのですけれど。

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 昨年12月、セツコさんはこの母猫と子猫合わせて3匹を保護しました。
 秋の終わり頃から、庭に現れたノラの母子です。夏の初めにも、この母猫が育てていた子猫が、家の前で、栄養失調と貧血でヨレヨレになり動けなくなっていたところを保護して、里親を見つけたばかりでした。

 ああ、また産んで連れてきた!とセツコさんは思いましたが、うら若い母さん猫の子育てぶりにほだされました。毎日、子猫を引き連れて庭に現れ、まずご飯を催促。セツコさんが与えるご飯にちょっとだけ口をつけた後、子猫たちを呼び寄せて食べさせます。そして、2匹を庭で遊ばせ、おっぱいを飲ませ、ひなたぼっこさせて、どこかのねぐらにまた帰っていくのです。指一本触らせず、威嚇しては子猫たちを守る楯になっている母さんでした。

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 師走が近づき、一段と寒さも増してきました。近所でノラの不審死がおき、猫嫌いによる毒餌の疑いもあることから、セツコさんは3匹の保護を決心しました。家の中にもすでに保護猫3匹がいるので、一時保護して懐かせ、里親を探すつもりでした。

 ところが、これが予想以上に手ごわかった!
 餌でだまされて捕獲器で捕獲された恨みもあって、「ここから出せー」と、母猫は大きな3段ケージの中で大暴れ。リリースやむなしという選択も頭をよぎりました。 ひとまず母猫を避妊手術のため、動物病院へ。

 ところが、手術が終わった夕方、獣医さんは言いよどみながら、電話でこんなことを。
「あのう・・・、お腹を開けてみたらですね・・・子宮はありませんでした。すでに手術済みだったんです。手術済みの耳カットもなく、乳腺も張っていましたから、疑うことなく手術をしたのですが・・・。癒着痕から見て手術後3~4か月はたっています」

 子猫たちは、その時、2か月たらず。ということは、母と子ではない? 出ないおっぱいをあげていた? 「そういうことになります。母性愛の強い猫には、時としてあり得ることです」と、獣医さん。

 セツコさんは、混乱しました。では、子猫たちと母さん猫はどこで出会ったの? 母さん猫を手術したのは誰? 手術されて逃げ出したのか、なつかないのでリリースされたのか捨てられたのか・・。

もしかしたら・・・夏に家の前で保護した子猫も、この母さん猫の産んだ子ではなかったのかもしれない。それとも、自分の産み育てていた子がこのままでは育たないと諦めて人間に託し、その分の愛情を、捨てられていた子猫たちに出会ってふり注いだのかもしれません。

 何もかもがミステリー。ただ、はっきりしているのは、母さん猫に痛い怖い思いを2度もさせてしまったこと。そして、この母さん猫が2匹の子猫を献身的に愛し守っていること。

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母猫は「ルナ」、白黒の男の子は「マル」、キジトラの女の子は「アンジー」という仮の名前をつけてもらいました。
子猫たちは、ルナ母さんが般若顔で唸りっぱなしなので、見習って、人間になかなか警戒心を解きません。「母猫と離せば、人になついて里親がみつかりやすくなるよ」というアドバイスももらいましたが、セツコさんは身を寄せ合っている3匹を、いま引き離す気にはとてもなれませんでした。パソコンの動画で子猫の声がすると、わが子の声と思って飛んできて、あたりを探し回るルナ母さんなのです。

 子猫たちが家に馴染むきっかけを作ってくれたキーマンは、このオトコ。

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 長いひもが大好きで、おじいちゃんのパンツのひもを飲み込んだ前科のある、気のいい保護猫先輩「みーたろ」くんです。みーたろは一緒になって遊んでやり(というより、率先して猫じゃらしのネズミで遊び)子猫たちを一気にくつろがせました。

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 子猫たちのうちとけぶりをよそに、かたくなに家猫になるのを拒んでいるルナちゃんにも、セツコさんは根気よく話しかけます。

「ルナちゃん、そんなにお外に戻りたいの? お外は寒いよ~。 それに、外にはね、ひどい目にあわせる人間もいるよ」
「捕まえたり、病院に連れてったり、怖い思いいっぱいさせてごめんね。だけど、おばちゃん、ルナちゃんに子どもたちにもいいおうちを見つけてあげて、安心して暮らしてほしいんだよ」
じっと耳を傾けるルナ母さん。

保護して一カ月ちょっと。このごろのルナ母さんは、「外に出せ~」の要求もシャーウ~威嚇もしなくなりました。とんがっていた目も丸くなり、なんと、子どもたちにまじってネズミのおもちゃに飛びついて遊ぶ年相応の無邪気さも見せています。
マルくんもアンジーちゃんもどんどん愛らしさを増し、抱っこまでさせるようになりました。日に日に、家猫になりつつある母と子です。「少しずつうちとけてくれれば」と、焦らず根気よく話しかけていたセツコさんの気持ちが3匹にはちゃんと伝わったようです。

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「『お前、自分の子でもないのに、なんでほっとけなかったの』ってルナに尋ねたけれど、考えてみたら、私も、弱ってる猫に会ったらほっとけないくち。似た者同士だったんだわ(笑)」と笑うセツコさん。ルナ母さんにいい里親さんがみつからなかったら、うちの子になってもらうかな、とも考えているそうです。

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 子離れの時期もそろそろ。3匹はそれぞれ里親さん募集中。(見学希望の方は(千葉県と、その近県のかた希望)、ブログ「手芸教室工房nona」へ。上部の「ようこそ工房nonaへ!」を開いてメールでコンタクトをお取りください。)
さて、ミステリーの結末はいかに。春遠からじ、の予感がするのですが。


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道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

ルナ母さんの行動にホロリときました・・
我が家の子ネコも、(親とはぐれて啼いていたところを)保護しましたが暴れ、検査のために動物病院に連れて行っても暴れ回り(検査も出来ず)先生から「外は危険がいっぱいだけど(「それに駆除の問題もあるけど」(駆除!)、とも言われました・・)このまま人に懐かないなら再び外へ返すことも考えては?」と言われました。
3週間悩み続けながら様子をみましたが、やはり厳しそうなので親猫が来たタイミングで返しました。(最初に親の保護も試みましたが出来ず。)
が、エサ欲しさに家には来るようになり、そして近隣からの苦情により再度保護。その時も最初暴れまわりましたが、目線の高さを合わせ外はとても危険なことなどを説明し、(自分でも用意していた言葉ではなかったのですが)最後に「私をお母さんにして!」と叫んでいました。
その気持ちが通じたんだと思うのですが(外に返してからもずっと悩み続けていた気持ちも)、その瞬間からゴロゴロ言い出し、私の腕に来てちゅぱちゅぱお乳を吸い始めました。
気持ちはちゃんと通じますね。
そして、外ネコだろうが安心して生きていける世の中にしていきたいと願っています。
(長々とすみませんでした。)

by リリー 2015-01-27 11:50

愛するのは我が子だけ、あるいは我が子にさえも虐待するという霊長類ヒト科の動物に比べて
ルナ母さんの母性は、なんて深いんでしょう。

だれに教えられなくても「愛は行動である」ってちゃんと知ってるルナ母さん。
額の白いしるしが神々しく思えます。

ルナ母さんとセツコさんの出会いにも運命を感じますね。

by あずみん 2015-01-27 16:13

最近、自分のお腹を痛め産んだ子を虐待したり殺したりする人間がいます
言う事を聞かなかった、子供に当たって気分を晴らしたかった、
自分勝手な人間の気持ちからの身勝手行動、このお話で更に恥ずかしく情けないと思いました。

言葉話せなくとも小さな頭で考え愛情を持って接し行動する優しい猫さん
セツコさんとルナ母さんの出会い、似た者同士、あったか〜い運命を感じますね

命の尊さ大切な事考えられる豊かな世の中になりますように
人と動物が安心して共存出来る世の中になりますように
願う事多しの昨今です♡

by イクラ 2015-01-27 16:54

茉莉子さん、こんばんは!
ルナお母さん、とても良い子ですね。
名前が同じだから親近感を持ってしまいますが、私はそんなに良いお母さんではありません・・・。
猫の愛には、敵いませんよね。
先日、カフェドアクタさんに「光のなか」を、観に伺いました。
どれも素敵な写真でした。
旦那に、佐竹さんの追っかけと言われているので、名に恥じないように、11月には310ワークスさんにもお邪魔してきました。
どちらもとても居心地が良くて、通う楽しみが出来ました。
これからも、あたたかくてほっこりする、そんなお話楽しみにしています。

by るな 2015-01-27 18:18

人間ですら忘れ去っていく母性を猫ちゃんに教えられました。みーんな幸せになって欲しいなぁ

by 猫のびち 2015-01-27 20:06

セツコさんの気持ちがルナ母さんに伝わって良かったですね。
ん?でも本当はセツコさんの優しさをルナ母さんは最初から見抜いていたのでは?
猫ってなんていとおしい生き物なんでしょう。

by よーこ 2015-01-27 21:52

15年前を思い出しました。我が家の最年長猫は、母猫に連れられ我が家にやってきたノラでした。当時母猫の威嚇が激しく近づくのも危険に感じるほどでしたが、しばらくして時々母猫の姿がみえなくなっても我が家から離れない1匹が最年長のめいです。数週間後に母猫が戻ってきたのですが、あの時の威嚇は何だったのかと思われるほど人なつっこくなって戻って来たので、飼うなら避妊手術をと病院に連れて行った所、随分前にすでに手術済みでした。自分の子でなくてもほおっておけなかったんだ、子猫が全てもらわれていって役目が済んだので、この家ならと我が家に戻ってきたのかなと母と話したのを覚えています。愛情の深さを感じます。

by メイ 2015-01-27 22:30

>リリーさん
思わず出たその一言が効きましたね~ 猫ってちゃんとわかってくれる。懐くタイミングを図ってるのかも。 本当に、家猫じゃなきゃ安全じゃない社会っておかしいです! 

by 道ばた猫 2015-01-28 02:02

>あずみんさん

そう、人間は恥じなきゃいけない。猫の気高さ、強さを前にして。猫を飼うって、ただ可愛いだけじゃなくて、愛すること、生きること、死んでいくこと…みんな教えてもらうってことでもあると思えます。

by 道ばた猫 2015-01-28 02:07

>イクラさん

小さな頭、小さなハートには大事なことだけがギュッと詰まっているんでしょうね。
ことに、危機管理能力は、すごい! と感心します。

by 道ばた猫 2015-01-28 02:21

>るなさん

わあ、カフェ・ド・アクタにも310worksにもお出かけになったんですね! タイプは違う店だけど、あったかさ、居心地の良さはばっちり共通だったでしょ。あ、看板猫の可愛さも。

by 道ばた猫 2015-01-28 02:25

>猫のぴちさん

猫は大昔から、変わらず、賢くけなげ。 ニンゲンは退化し続けている気がします。
猫のように、が未来を創るキーワードになるかも。

by 道ばた猫 2015-01-28 02:28

>よーこさん

そうそう! 私もそう思います。
セツコさん、見抜かれてたよう。というより、選ばれてましたよ!

by 道ばた猫 2015-01-28 02:31

>メイさん

15年前の素敵なお話聞かせてくださってありがとうございます!
威嚇の激しい猫って、性格もあるでしょうが、それだけ怖い思いをしてきたってこと。ルナ母さんも長い棒を見ると、パ二クるそうです・・・。

by 道ばた猫 2015-01-28 02:34

感動しました セツコさんとルナ母さんなんと優しいんでしょう 私も相当な猫好きですがここまでは
とてもとてもかないません 今生後三匹のノラちゃんを近所の人と面倒を見てます避妊手術は済んでますでもなかなか慣れてくれません家の敷地にちょっとした寝床を作って置いたら最初は仲良く姉妹で寝ていましたが 大きなノラに威嚇されていまでは怖くて誓い近ずきません折角なれてきて何とか出来るかな
と思ったのに残念ですまだまだ寒いから心配ですでもノラちゃんを慣れさせるのは大変ですね

by めい 2015-03-08 13:40

>めいさん

コメントに気づくのが遅くなり、ごめんなさい!
お世話なさっている3匹の姉妹、大きくなったでしょうか。この暑さを乗り切ってくれますように!
心配いろいろあるでしょうが、ご近所さんとの連携で、どうぞよろしくお願い致します!

by 道ばた猫 2015-08-02 03:37