いつもニコニコ、大らかで人を惹き付ける雰囲気を持っている小林さんのまわりは賑やか。だから猫も呼び寄せてしまうのでしょうね。くすくす。
中華料理店の換気扇の下でニャーと泣く
小林家はご主人と奥さんと娘ちゃんの3人家族。それに5匹の猫がいるのですが、どの子もすべて保護した猫だとか。
私がここへ伺ったのは2回目。かわいく デザインされた一軒家には猫飼いならではの工夫があり、むき出しの梁の上を猫が歩く姿は、誰が撮っても画になります。
「おじゃましまーす」とドアを開けて2階へつづく階段を登ると同時に
「あ!」
2匹の猫とすれ違います。
それは、お客が少々苦手という2匹の兄妹猫が下の階へと逃げて行く姿でした。
(でも上にはまだ3匹いる。)
私は心の中でニヤリとつぶやきます。
階下へ逃げるリオちゃん。
リビングの床に1匹、ソファに1匹、あとはベランダに1匹。猫同士一定の距離を保ちながら、もちろん私とも一定の距離を置きながら、取材がスタートです。
床で寝ているキジトラ猫が今回の主人公、 5匹の中で最高齢17歳の「グッチ」です。
グッチは唯一小林さんが独身でアパートに住んでいたころから飼っている猫。 中華料理店の換気扇の下で暖をとるガリガリの猫を友人が保護して、小林さんが引き受けたことがきっかけでした。友人の家には病気の先住猫がいて、飼えない事情があったそうです。
小さいころは人見知りするも年を重ねるとどうでも良くなる。
グッチ17歳。
ソファで寝ていたのは末っ子のトツカちゃん。3歳の男の子。
ベランダから、やや距離をとりたがる黒猫のジジがのぞきこみます。
7歳の男の子。
2つの驚き ――その日は突然やってきた
それまで動物を飼う経験がなかった小林さん。ガリガリのグッチはソファの下に隠れて決して姿を見せませんでしたが、がむしゃらに育てます。
朝・晩はもちろん、昼の休憩時間も仕事場から家に戻って毎食缶詰を与えました。ごはんを用意する間も、グッチがソファの下から出てくることはありませんでしたが、それでも空になったごはんの器を見てはホッと安心する毎日。そんな奇妙な暮らしが2ヶ月もの間つづき、そして冬の寒い夜に事件は起こりました。
仕事から帰宅しテレビを見ていると、なんとグッチがそーっと姿をあらわしそのまま小林さんの膝の上に乗ってきて暖をとるではありませんか! そんなグッチに小林さんは2つの意味で驚きます。ひとつは、ついに姿を見せて膝に乗って来てくれたといううれしい驚き。もうひとつは、2ヶ月ぶりに見たグッチの体型がぽっちゃりさんになっていたというちょっと笑っちゃう驚きです。
保護して病院に連れて行ったときはわずか2kgだった体重が、このとき6kgにまで急成長していました。理由はカンタンです。朝昼晩の真っすぐすぎる小林さんの愛情=缶詰の給餌を、グッチはしっかりと受けとめたんですね。
あのころは食べるのに必死でした。グッチ談
長女のキアラちゃんがなでなで。
若いころは暴れん坊だったグッチもいまはすっかり丸くなって。
グッチの食事メニュー
現在、食事回数は朝晩の2回、体重は3.5kg。
ロイヤルカナンの腎臓サポート、ヒルズのk/dを交互に与えています。どちらもウエットタイプなのですが、それには理由があって、じつはグッチには歯がほとんど残っていないのです。だからカリカリは食べられないというわけ。
それでも飽きて食べないときがあります。そんなときは本当に好きなもの、焼き魚やミルクなどをちょっとだけ与える工夫も。
「なに?ごはんくれるの?」
食べたものは絶対に吐かない!グッチはきょうじんな胃の持ち主。
「猫の好きなものを探す」がモットーの小林家に保護され家族になった5にゃんは本当にしあわせですね。
しかし、ここで私が唱える「ご長寿猫は歯が命」説がもろくも崩れさろうとは......。
ほんとだ、犬歯が1本だけ。
グッチが繋いだ縁
まだ小林さんがグッチを飼いはじめて間もないころの話です。
カジキ釣りに出掛けるためにアパートを1週間空けることになった当時独身の小林さん。(カジキ釣りの話しはすごく興味がありましたが、ここでは割愛させていただきます。)「さて、出掛ける間、猫の世話はどうする?」問題 に直面します。猫飼いの誰もが通る道です。
友人、知人に猫の世話を頼めないか相談したところ、手を挙げてくれた人がいました。 その方とは大学の同期の妹さんの友人で(遠い!)数回会ったことがあるだけの関係で、それがいま私の目の前でニコニコと話を聞いている奥さんのかほるさんだったとは!!
グッチが繋いだ縁で結ばれたふたり。
だから小林夫妻はグッチに頭が上がらない(笑)。これからも感謝してずっと尽くしていくのでしょう。それがグッチの長生きに繋がるわけですね。納得!
キッチンにだってまだ登れるよ。足腰はしっかりしています。
たまに若い猫に邪魔され動かされるけど、そういう刺激のある生活が高齢猫にとって良い環境なんだろうなぁ。
Zzz...
ケニア・ドイ ファースト写真集『
ぽちゃ猫ワンダー
』(河出書房新社)好評発売中
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猫又トリップライター紹介
ケニア・ドイ
1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。
http://kenyadoi.com
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今日はトツカちゃんのお宅ですね!
猫さんたちが自由に暮らせそうな素敵なおうち。
グッチちゃんは歯がほとんどないのですね。
「ご長寿は歯が命」これもあるとは思います!
でも我が家の先代ハナコ(享年21歳)も、実は1歳くらいの頃病気で門歯以外はすべて抜歯したのです。
歯がなくてもご長寿さんはいますね♪
グッチちゃんが繋いだご縁で結婚されたなんて素敵なお話。
グッチちゃんにとっては、キアラちゃんは姪っ子みたいな存在かな?
キアラちゃんの成長を見守っていることもグッチちゃんの長生きの秘訣かもしれませんね。
by cheeco 2015-02-25 11:44
猫ちゃん達も安心して気持ち良く暮らせるおうち、ステキですね〜!
突然やって来た「その日」エピソードにはウルウルしてしまいました。
小林さんが注いだ深い愛情を、グッチちゃんもしっかり受け止めていたんですもんね。
強い絆を感じます(*^^*)
ご夫妻、それは一生頭が上がりませんね(笑)
幸せのお裾分け、頂きました〜(≧ω≦)
by †Sakura† 2015-02-25 14:13
いい話!普段はぼんやりしてるうちの子も愛情受け止めてくれてるといいなあ(笑)
これからも長生きでいて欲しいですね。
by しましま 2015-02-25 23:46
cheecoさん
ぽちゃ猫ワンダーに登場のトツカちゃんは末っ子で、今回は長男のグッチさんにスポットを当てました。
歯が大事なことに変わりはないですが、歯が1本しかなくても生きていけるのは我々に勇気を与えてくれますよね。
by ケニア・ドイ 2015-02-28 15:58
†Sakura†さん
ここには屋根裏に窓のある部屋があって、猫には楽しい空間がいっぱいあります。
それを見ている私たち人間も楽しいのですが!
by ケニア・ドイ 2015-02-28 16:02
しましまさん
見ていないようで猫はしっかり見ていますよ!
by ケニア・ドイ 2015-02-28 16:03