東京の下町、谷中や根津の界隈は、「下町人情の残る町」「猫に出遭う町」として観光客に人気です。
のんびり歩き回っているように見える猫たち。でも、町猫たちは、お気楽な猫ばかりではなく、自分の置かれたさまざまな運命を引き受けて暮らしています。
そして、そんな猫たちを見守り、助けている人たちの輪があります。
根津に暮らすヨウコさんも、そのひとり。ヨウコさんの家には、保護した根津猫がただ今、3匹。
ついこの前まで、神社から保護したチャー君というエイズキャリアの猫もいたのですが、里子に送り出したばかりです。
いちばん若い、三毛のメイちゃんです。おととし、8か月くらいの時、「よみせ通り」商店街で保護しました。
引っ越しの時に、置き去りにされ、商店街の人たちに可愛がられていたのですが、まだ幼く、車にひかれやしないかと、
皆でひやひやしていたのでした。ヨウコさんが引き取ることにした時、「よかったな~、元気で暮らすんだよ~」と、
商店街の人たちに手を振られて送り出されたメイちゃんです。
下町ならではの、エピソードですね!
町なかで可愛がられていたので、メイちゃん、お客さんが来ても、カメラを向けても、この通り、フレンドリーこの上ない招き猫さんです。
小さな舌をしまい忘れたメイちゃん、可愛いですね~。
でも、保護する猫さんは、こんな人懐こい猫ばかりではありません。
家具の後ろに隠れているのは、モモちゃん。去年の11月に神社で保護された猫です。
その直前まで、モモちゃんは、長野県のキャンプ場にいました。キャンプ場にやってくる客の
バーベキューの残飯をもらって生きのびていた子です。
冬はキャンプ場は閉じられてしまいます。「ここに居たら冬は越せない」と思った女性が都内自宅に連れ帰ったものの、
モモちゃんはひどい口内炎で治療費がかさむことがわかったため、神社に遺棄したのです。
そのことをたまたま知った地元の個人餌やりボランティアの人たちが手分けして探し出し、モモちゃんはヨウコさんの預かり猫となりました。
運命が二転三転してしまい、医者通いも続いているため、モモちゃんは、まだまだ人慣れしていない状況です。
お医者さんに行った日は、部屋のあちこちにおしっこをしてしまうモモちゃんを、ヨウコさんは、根気強く見守って心を通わせ、
いずれはいい里親さんの元へ送り出すつもりです。がんばれ、モモちゃん!
スーパー裏で、生きのびていたところを保護したフウちゃんも、同じくビビりの女の子。
お客さんが来ると、すぐにモモちゃんと一緒にベッドの下に逃げ込んでしまいます。
日暮れ時になると、ヨウコさんは、猫餌を自転車に積んで、出かけます。
通りに出て、待っている子がいました。
ある男性に古いアパートで飼われていたのですが、取り壊しとなったため、ペット可の住まいが見つからないいま、
路地暮らしを続けている子なのです。飼い主もご飯を運んでいますが、毎日来られず、ヨウコさんが助太刀をしています。
さらに、ヨウコさんが向かったのは、モモちゃんを保護した大きな神社。ここには、ヨウコさんの運ぶご飯を待つ子が4匹います。
神社向かいに店を持つジュンコさんも心強い餌やり仲間。置き餌はけっしてせず、容器は片付け、
周りにゴミが落ちていたら拾って帰るというマナーを守っての餌やりを続けています。猫嫌いの人も住んでいるこの町で、
猫たちが少しでも安心して暮らせるように。
闇にまぎれてやってきて、シズカちゃんもイカク(威嚇するからこの名前がつきました)ちゃんも、いい食べっぷり!
すぐ近くの大学農学部から場所替えしたシズカちゃんは高齢でよだれが出ているため、お薬入りのご飯です。
農学部で餌やりを続けているノリコさんも、地元の猫助け仲間。(
「交番からやってきた猫」「農学部の猫たち」でご紹介)
モモちゃんはじめ、個人に負担の大きい猫たちの治療費を何とか補いたいと、ノリコさんの発案で、昨年暮れ、
みんなで不用品を集めて、チャリテーのバザーを開きました。
「よくやってくれた」と励ます人、何も言わず数千円をカンパする人、「私もノラを保護したから、気持ちがよくわかります」
という人・・・・。6日間で6万円集まり、大助かりでした。
連休中も、ノリコさんは店の路地で、地域猫を助けるための2回目のフリーマーケットを開いています。
根津を通りかかったら、ぜひ、ご協力ください。猫助けの輪は、下町を舞台に、ささやかだけど、あたたかく広がっています。
バザーの場所・・・・地下鉄根津・1丁目交差点出口すぐ、吉田金物店わきの路地。
4月29日・5月2・3・4日の日中。福島の復興支援のための籠販売も3日まで。
「しあわせになった猫 しあわせをくれた猫」の表紙になってくれた珈琲豆店yagi-coyaのチャイくんも、炎天下に産廃処理場で虫の息だったところを助けられた子猫でした。
「表紙になってくれてありがとう」といいに行ったら、本人は、きょとんとしていました。
生まれてきた猫たちが皆、このチャイくんのようにキラキラと目を輝かせて生きていける社会になりますように。
各地で猫を助ける人たちの輪が広がることが希望の光です。
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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皆様のあたたかいねこさんへの思い本当に感動と涙です。みんなが幸せに暮らせる事が一番の願いですね^_^
by みーくんのまま 2015-04-28 16:18
>みーくんのまま
ほんとうに、餌やりは雨の日風の日毎日のことだから、頭が下がります。ノリコさんたちのように、こうやって、いざという時、手をつなげる仲間がいること、心強いですよね!
by 道ばた猫 2015-04-29 03:08
佐竹さん
しあわせになった猫しあわせをくれた猫。
発刊おめでとうございます!
早速に読ませて頂きました。涙いっぱい、あったかさいっぱい。
今、手もとに届けて頂けて本当にありがとうございます!
ミー子とトラのお母さん、フー子の調子が悪くなって。毎日強制給餌とくすりを与えています。トラのこと思い出して、無力感におそわれていた頃、佐竹さんからのプレゼントです。
よし、また母ちゃん頑張ろうって。
今回のブログも力をくれました。
つながっていくんですね。きっときっと。
だから、私はうんとフー子に向き合って大事にします。
佐竹さん。
by じゅんこ 2015-04-29 14:54
>じゅんこさん
単行本の22匹の猫たちが、ジュンコさんのこと、元気づけることができて、嬉しいです!
フー子ちゃん、がんばってますね。えらい!
いのちと懸命に向き合っているフー子ちゃんとの一日一日を、どうぞ大事に大事になさってください。
by 道ばた猫 2015-04-30 02:55
茉莉子さん 新刊本を拝読させいただきました。
紹介されたねこちゃん達は幸せになったり幸せをくれましたが、たくさんの読者に沢山幸せをくれました。
不幸な境遇にいる猫ちゃん達が今以上に不幸にならないよう、避妊手術をしている友人の捕獲を手伝いに
今から出かけます。
しかし一筋縄ではいかず、今日こそは捕まえられれば良いと願って出かけます。
by chisemama 2015-04-30 15:48
>chisemamaさん
本を読んでくださった方が、「私にもできることがあるかも」と思ってくださることや、猫好きとは言えない人が「猫もいろんな思いをして生きてるんだな」と思ってくださることが、ひそかな願いなのです。
本日の守備はいかがでしたか~。お疲れさま。
by 道ばた猫 2015-05-01 02:29
>chisemamaさん
あはっ、守備なんてうってしまいました・・・。首尾です。
by 道ばた猫 2015-05-01 02:31
ねこを助けてくれる人が好きです。わたしはねこが1番すき!😻
ねこを助けてくれる人がうれしいです。
by 丸岡明楽 2023-09-19 15:31