行き場を失ったその猫は、「保護猫カフェ」へやってきたのでした。
挨拶代わりの伸びー!
特別な事情
「ネコリパブリック(以降ネコリパ)」という保護猫カフェから「20歳の猫がいるよ。」という知らせを受け、私は雨降る岐阜の地へと降り立ちました。
一般的に子猫のほうが、受け入れ先が早く見つかるため、ここではとくに成猫の里親募集に力を入れていると聞いたことがあります。しかし、そうはいっても20歳の猫を受け入れるとは、「ネコリパさん、さすがです!」と感動したのも束の間、今回は特別な事情があったようです。
実はルミさんの家が火事で全焼してしまい、家主のご年配のご夫婦はアパートへの借り暮らしを余儀なくされました。しかし、ここで問題が発生します。そのアパートは「ペットNG」の物件だったのです。困った夫婦は動物保護団体に相談、巡り巡ってルミさんは「家を建替える間だけ」という条件付きで「ネコリパ」でお世話になることに。
「そうなのよー。たいへんだったのよー。」
ルミさんは家が大変な状況に陥り、動物保護団体を通じてここへやってきました。※
譲渡対象ではない一時預かり中のルミさん。なので接客は「塩」対応だw
自由気ままに
シャム系ミックスのルミさんは20歳の女の子。若いころは、ネズミやセミを追い回し、家族・同居猫たちに獲物を「献上」する毎日。飼い主の奥様が「女の子らしい」響きを気に入って付けた名まえだったのですが、結構な"おてんば娘"に成長したようで......。
また「マイペース」な性格で、過去に多頭飼いしていたころもひとりで過ごすことが多く、ネコリパさんにやってきても「自由気まま」にわが道をいくといった様子で、すんなりとその場にとけ込んで行きました。といってもほとんど寝るのが本業なようでこの日は特別(?)張りきってくれました。
どうやら先客がいたようです。
「きぃー!ルミくやしいー!」
「上で寝てやる!」とは著者の想像です。
でもそこの方が......
お客さんはなでやすいです。ルミさん接客中。
ルミさんの食事メニュー
20歳のルミさんですが、食事は他の成猫たちと同じメニューで「ロイヤルカナン」の「インドア」「オーラルケア」「ステアライズド」をブレンドしたものを朝晩2回与えています。
お気に入りの場所に、いつも同じ姿勢でじっとしているルミさんですが、食事の時間になると2階から軽快に駆け下りてきます。仮住まいで場所が変わってもマイペース、何気に階段で上下運動し、食べることを怠らない。これまで体調を崩したことはなく、特別なごはんを与えるといったことはしていないそうです。これまで多くの猫をお世話してきたネコリパのスタッフさんも「適応力があり、足腰が強く、食欲もある。本当に20歳?!」と驚いていました。
ははーん。これが長生きするポイントですね。強い胃袋を持ち、ストレスに強いことが伺えます。
現在の体重は4kg。
この長い階段を降りればそこは、お食事処だった。
不格好だが...w
この跳躍力!!
そしてどや顔、舌ペロリです。
若々しい、ハリのある美声で
私が取材で訪れた10日後、ルミさんはご家族に迎えられ、無事、建替えられた本宅へお帰りになったと聞きました。
迎えにきたご年輩のご夫婦の顔、その懐かしい声に、ルミさんは甲高い声で「ミャー!ミャー」と返事をし続けたそうです。それはスタッフの誰もが初めて聞く「若々しい、ハリのある美声」で、溜めてあった感情を家族にぶつける姿に誰もが目頭を拭いました。
半年間、離ればなれだった家族はよりいっそう絆を深め、またお互いが感じたストレスは、これから良い方向へ導いてくれるでしょう。
それは人間も猫も多少のストレスがあったほうが「はりのある生活」が送れ、長生きするというのがこの連載を通じて私が感じていることだからです。
でもひょっとしてルミさんはストレスを感じない「気ままな鈍感力」を持つ新手のご長寿猫なのかも?!
窓の外をじっと眺めるルミさん。この日を待っていたのか。
ネコリパさんでは里子に出る猫たちを「卒業」という言葉で送り出します。一時預かりというイレギュラーな状況でしたが、
「ルミさん、卒業おめでとう!」
その日、岐阜の空はどこまでも晴れ渡っていました。
ここに新たな1ページが。
※「保護猫カフェ ネコリパブリック」では現在、いかなる理由でも一般の方からの猫のお預かりはしていません。
【取材協力/自走型保護猫カフェ ネコリパブリック】
岐阜県 岐阜市正木1982−4
ケニア・ドイ ファースト写真集『
ぽちゃ猫ワンダー
』(河出書房新社)好評発売中
写真
猫又トリップライター紹介
ケニア・ドイ
1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。
http://kenyadoi.com
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ルミさん、卒業良かったですね。
おめでとぉございます!
目頭熱くなりました。。。(感涙)
ドイさんの仰る様に、人にもニャンズにも、程良いストレスは生き方にハリを与え、長生きに繋がるのかもしれないですね〜。
by †Sakura† 2015-05-31 09:35
ルミさん、ご卒業おめでとうございます!
どんな理由でも、家族と一緒が一番です。
我が家の、20歳にゃんも、ストレスに強いタイプ。海外引っ越しのため、1ヶ月の検疫所生活も乗り越え、2度目は、タイ産まれなのに、真冬の2月に飛行機に乗せられ、着いた先には、先住にゃんズ。ガールズ縄張り争いも、難なくこなし、未だに階段
by しぃふぁ 2015-06-02 17:05
(すみません。続きです)
楽々の美人です。最初の引っ越しの時は、検疫のあまりの長さに、友人への養女も考えましたが、本猫が、するりとこなしてくれたので、日本への、真冬の帰国も悩まず、現在にいたります。皆にゃん!家族一緒が一番です。
by しぃふぁ 2015-06-02 17:13
Sakuraさん
違う環境での多頭生活、家族と離ればなれ、程良いどころか過度のストレスだったと思いますが、
ルミさんよく頑張りました!ほんとおめでとうですよ!
by ケニア・ドイ 2015-06-10 09:10
しぃふぁさん
そう「ストレスに強い!」ことも重要ですよね。タイから空輸!?何時間だろう。検疫の期間もそうとうなストレスなのに「するり」とこなすにゃんこさん。これは猫又になりますぜ!?
by ケニア・ドイ 2015-06-10 09:16