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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

猫又トリップ

2015年06月03日

一時預かりは永遠に

ある日、しほりさんは女医の友人から「自分の患者さんが入院するので、飼われている猫の里親を探して欲しい」と相談を持ちかけられました。

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「なんか知らない人がいるけどー!」(私のことです)
こちらが今回の主役猫「モコ」18歳の女の子。


「猫の里親を探してくれないか?」


「モコ」がしほりさんの家にやって来たのは、愛犬「クレア」が亡くなって数ヶ月が経った日のこと。女医の友人から「猫の里親を探してくれないか?」と相談を持ちかけられたのも、里親を探すことをすぐにやめたのも、きっと愛犬クレアがしほりさん家族を悲しませないように裏で手(脚?)を回してのことでしょう。(著者の妄想)

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休日で撮影に駆けつけてくれた息子の涼太さん。

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実家暮らしのころはよく一緒に寝ていた。モコは首に巻きついて寝るのが好きらしい。
それって、苦しくない?!

モコの飼い主「あさ子」さんが手術でいよいよ入院されるとき、しほりさんはこう言いました。

「あさ子さんの猫は私が一時預って面倒見るから(頑張って)!」と。

その言葉に背中を押され、あさ子さんは1冊の「猫ノート」をしほりさんに託し、病と闘うことを決めたのです。そのノートには猫の趣味、趣向、性格、生い立ち、ごはん、病院歴など......、びっしりと事細かに記されていたそうです。

そして、当時10歳のチンチラ風の雑種「モコ」と、4歳の黒猫「チョビ」(女の子)2匹としほりさん家族との新生活が始まり、気がつくと一時預かりの約束から8年が経過していたのでした。
現在モコは18歳。まだまだ足腰は強く、2階へ続く階段も軽快に駆け上がり、病気もなく健康に過ごしている毎日です。

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「なんだか、落ち着かないわー」とモコが言う。(私が原因です)


モコの食事メニュー


食事は朝晩の2回でドライフードとその上にウエットフードを少量トッピング。(どちらも「高齢猫用」のもの)
食事スタイルは「ちょっと食べては休憩」の繰り返しで、でも最近鮮度をやや気にしがちで時間が経って風味が落ちたものは「変えてにゃー」とアピールするグルメ猫に!それでも極力応えてあげる優しいしほりさんファミリーなのです。
現在モコの体重は3kg。元から少食で8年前から体型を維持しているそうです。あさ子さんのノートに書いてあった「太らせるな!」の注意書き、今も忠実に守っていますよ。

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遊ぼう!

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「ツーン!」まぁ超、無視!
18歳は遊びとかもうどうでもいいんだろうな。。


2種多頭飼い


「猫たちに新しい経験をさせてみて」と背中を押してくれたのは、あさ子さんの方でした。
元々犬も好きだったしほりさんファミリー。「うちには預かり猫がいるからなぁ。」と犬を飼うことを半ば諦めかけていましたが、あさ子さんに相談するとあっさりとOK。「ときどき猫の様子も聞かせてね」と報告を心待ちにしていたそうです。

2頭の犬が来てから、猫たちの生活スペースに変化が。1階は犬が陣取り、猫は2階へと追いやられてしまったのです。でも猫軍団(2匹)も負けてはいません!犬たちが散歩へ出掛けたのを見計らって1階へ侵入。ゴロンゴロンと床に体をこすりつけ、においを付けて抵抗だー!(か、かわいい!)もちろん犬たちは意に介さないのですが......。

しかし、2階にはおばあちゃんの居住スペースがあるので猫も安心です。いつでも家族を感じることができる暮らしは犬がやってきたあとも確保されています。ほっ。

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この部屋も隠れるところがいっぱいニャー。

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犬はまだこわいニャー。


一時預かりで生まれた「責任」


「妹のチョビの存在」、「犬とストレスのある生活」、「いつでも誰かがいる環境」、「我が子の記録、愛が詰まったノート」など、しほりさんの家には長寿猫を育てるヒントがたくさんありました。

残念なことですが、あさ子さんは猫たちを預けた2年後にお亡くなりになりました。入院してから一度もモコとチョビに会うこともなく......。

それでも今もしほりさんの気持ちは「一時預かり」のまま、この先も大事に大事に育て上げなくてはならないと言いました。
このとき私は、一時預かりで生まれた「責任」を全うするしほりさんとご家族だからこそ、長寿猫モコは存在しているのだと強く感じました。

誰かのために頑張る力はいつだって強く、二人の約束「あさ子さんの猫は私が一時預って面倒見るから!」は今もこれからもずっと続いていきます。

あさ子さんへ
最近、モコが犬たちがいる1階へ行くようになったみたいです。あの臆病なモコがです。
「犬と猫が一緒に暮らせるようになればいいよね〜」と生前にお話されていたとしほりさんからお聞きました。あさ子さん、そちらから見えていますか?

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そして二人の約束はいつしか、家族の約束に。



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ケニア・ドイ ファースト写真集『 ぽちゃ猫ワンダー 』(河出書房新社)好評発売中


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猫又トリップライター紹介

ケニア・ドイ

1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。

http://kenyadoi.com

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カテゴリ: 猫又トリップ
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みにゃさまのコメント

会社の昼休みに読んでいるのに、涙が溢れそうになりました。この記事には優しさがいっぱい詰まっている、そんな気がしました。(そして少しの切なさも)モコちゃん、チョビちゃん、素敵な人たちとの出会いがあって良かったね。あさ子さんも、クレアもきっと皆が幸せで喜んでいると思います。

by ゆーこ 2015-06-03 21:04

1枚目の写真のモコちゃん、
そんなにビックリしなくても~~~!!(それとも恐怖感なのか?)
と感じるくらい、表情の豊かな面白い子だと思いました^^♪
2枚目の凄~~~く不機嫌な表情も面白いし^^♪
知らない人が居るとリラックス出来なくって嫌なのかもね(笑)!
その気持ち、私も良く理解できます^^❤

by 紅お蝶 2015-06-03 22:47

通勤中の電車内で読みながら、涙が溢れそうになるのを、やっとこらえてました。
しほりさんに託した、あさこさんの気持ちを思うと切な過ぎて。。。
でも、しほりさんになら安心して任せられる!と絶大な信頼を置いていたんでしょうね。
その願い通り、いえ!願い以上に、しほりさんとモコちゃんは素晴らしい家族になりましたね!
あさこさんも喜んでると思います☆

by †Sakura† 2015-06-04 10:58

「誰かのために頑張る力はいつだって強く、二人の約束は今もこれからもずっと続いていきます」のところまで来て涙線崩壊しました。(泣)
しほりさん一家に預けられてほんとうに幸せ者ですね。あさこさんは生前会えなかったけれど、モコちゃんと気持ちはつながっていたと思います。
いつか虹の橋に渡った時、いっぱいだきしめてもらってね。モコちゃん。そして今を幸せに!

by あずにゃん 2015-06-05 17:20

ゆーこさん
私の連載は本来ほっこりしたもので、泣かせるつもりはなかったのですが、
結果こうなってしまいました。現飼い主さんからとても良い話を聞いて、どこまでじぶんで表現出来るか?その責任は重大で…文章を書くって難しいですね。日々勉強です!

by ケニア・ドイ 2015-06-07 16:17

紅お蝶さん
この連載を通じて感じることは「猫又」は逃げないということ。
いやだな〜と表情には出しても決して隠れることはないのでいままで成立しています。
そんな猫又たちに感謝!

by ケニア・ドイ 2015-06-07 16:27

†Sakura†さん
ですね。あさ子さんが期待していた以上にしほりさん家族は大事に育てています。
元々なんの接点もなかった2人が猫を通じて、心と心が通じ合うっていうストーリー、本当にこんなことがあるのか?不思議で素敵なストーリーです。

by ケニア・ドイ 2015-06-07 16:33

あずにゃんさん
泣かせてしまって申し訳ない。でも私も書きながらうるっと来ていたのですよ。
高齢のモコさんは新たに一歩を踏み出し、それを空の上から見ているあさ子さん。
日々成長する我が子の姿を楽しんでいるあさ子さんが想像できます。

by ケニア・ドイ 2015-06-07 16:41