「リリー、みーちゃん、チョコ、プーちゃん、チビ、ネネ、ゴエちゃん、信長、ソラ、ヒデ、チコ......」おばあちゃんの口から飛び出す歴代猫の名まえの数々。
飼い主のよし子おばあちゃんはこの地域に腰をおろして50年。過去に30匹を越える犬・猫と暮らしてきたこの家も、今では猫1匹となりました。
「こんなに独占欲の強い子だったかしら」とおばあちゃんに思いきり甘えられるようになった「パピー」は18歳の白茶柄の女の子。おばあちゃんと猫の二人暮らしの猫又トリップ、スタートです。
いつもの定位置、おばあちゃんのベッドで寝ています。
受け継がれる動物愛護の精神
パピちゃん(以下、呼び名で)は近所の貯水タンクの上でニャーニャー泣いているところを、よし子おばあちゃんのお孫さんで、中学生のミホさんが保護した猫。まだ生後間もない乳飲み子は、動物愛護の精神をおばあちゃんから受け継いだミホさんが育てることに。
乳飲み子への2時間おきのミルク給餌は、実際に世話するとわかるのですが、本当に大変なんです。3日間寝ずに頑張ったミホさんでしたが、とうとう4日目の朝にダウン!それから二世帯住宅階下のおばあちゃんに助けを求め、そのまま一階の住猫になりました。
ミホちゃん(お孫さん)、救ってくれてありがとう。ペコリ。
そういう経緯でおばあちゃんの家に引き取られたパピちゃんでしたが、当時先住犬が3頭、猫が4〜5匹いるというエキサイティングな住環境だったため「鳥かご」生活を余儀なくされました。(でもここが一番安全!)子育て経験豊富なおばあちゃんの手を借りて、体が大きくなるころには
犬の「ユウ」と鬼ごっこをして家族を楽しませてくれる末っ子お転婆娘キャラに。
夜は大運動会で家族を悩ますことも。パピちゃん反省中。
今まで私が取材してきた中で、わりと共通している認識「過酷な、悲惨な境遇から保護された猫、賑やかな家で育った猫は長生き」は、ここでもいきているようです。18歳のパピちゃんは今日ものんびり元気です。
「もうダメかも......」
しかしお話を伺うとけっして平穏無事に過ごして来たわけではありません。今年の3月頃に「もうダメかも......」と別れの覚悟をした時期も。それはパピちゃんの、すべての猫の長生きの肝である「食欲」をなくす一件があったからです。
おばあちゃんはすぐに獣医師に相談しました。すると「子猫用のごはんを試してみれば?」というアドバイスを受け、実際に与えてみたところ、パピちゃんがごはんを食べはじめたではありませんか!栄養価の高い子猫用フードがパピちゃんの食欲を増進、そして体力を取り戻したのです。この日の取材中もこちらの様子を見にきては、「ニャー」とおばあちゃんと会話する老猫らしい姿や家中を歩き回るアクティブな面も垣間見ることができましたからもう安心ですね。ホッ。
玄関先で見回り。不審者、不審猫をチェックだ!
段差だってほら楽々。
ダイニングキッチンをのぞいて、
「おばあちゃーん」としっぽ立ててすりすり攻撃へ。
猫は子ども
おばあちゃんの30匹(通算)の猫ライフはいつからはじまったのでしょうか?それは意外にも娘さんが近くの公園で子猫を拾ったのがきっかけだそうです。
それまで「猫なんて......」と気嫌いさえしていたおばあちゃんですが、娘さんの拾ってきた猫を飼ってみるとあらかわいい。そして何よりカンタンに飼えてしまう。見ているだけで、存在を感じるだけでかわいいという猫の魅力にとりつかれたよし子おばあちゃんは、自分でも身寄りのない、かわいそうな猫を次々と家に迎え入れるのでした。
そして、二世帯住宅の上の階に住む娘さん、それからお孫さんまでもが積極的にボロボロの猫を保護してきた結果、飼った猫は30匹をゆうに越えていきました。「家族みんなで保護活動」「猫は子どもと同じ」、なんて素晴らしい教育方針なんでしょう!
「みんなが見てキレイだという猫はうちにはいない。」
いえいえ、よし子おばあちゃん!だれが見ても立派な美猫さんですよ!
通りで毛並みがキレイなパピちゃん。ブラッシングはおばあちゃんの日課。
おばあちゃんの知恵袋
そんな30匹以上の猫を飼ったことがあるおばあちゃんの経験が活かされ、パピちゃんも長生きできているのでしょう。過去に26歳まで生きた「リリー」、20歳まで生きた「みーちゃん」と、よし子おばあちゃんは立派な猫又ブリーダーですからね。
もしかしたら、保護して数ヶ月でなくなった猫たちの分まで長く生きなければと、パピちゃんはじめ、他の猫たちが奮起したのかも?と恒例の妄想もひとつ入れておきます。
最後におばあちゃんの生きがいは何ですか?と問うと「パピちゃん」とお答えになりました。パピちゃんもよし子おばあちゃんのことが大好きなんだろな。ニャーと大袈裟に声を出していろいろリクエストしてくるのも、おばあちゃんの目があまり見えないことを知っているかのようです。
パピちゃんはおばあちゃんの目になり、おばあちゃんは最近弱くなったパピちゃんの足を助け、まさに2人でひとつといった猫生活、本当に素敵です。
思いやり、支え合い、お互いの弱い部分を補い合う感じがまるで人間の家族を見ているかのような今回の取材。今、猫又に一番近い猫、それはパピちゃんだ!(ドイ調べ)
これからも二人三脚(二人五脚?)で助け合っていこうね。ペロっ。
【おまけギャラリー】
猫ってお風呂場の水好きだなー。
食事皿にはいまも子猫用フードが。
なでたら、
舐め返してくれましたー。
金魚も家族。おばあちゃんの大事なもの2ショット!!
さすがよし子おばあちゃんの子ども、パピちゃんも良し子でした。
ケニア・ドイ ファースト写真集『
ぽちゃ猫ワンダー 』(河出書房新社)好評発売中
写真
猫又トリップライター紹介
ケニア・ドイ
1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。
http://kenyadoi.com
X
Instagram
おばあちゃんと、パピちゃん、素敵な関係ですね。猫は子どもであり孫であり、最良のパートナーでもあるなあと思います。パートナーには長生きしてほしいですね!
by しましま 2015-07-30 00:22
パピちゃん、バッチリ美猫ちゃんですね!
よし子おばあちゃんも、とっても優しくていい表情をされてますね!
どちらが欠けてもいけない、相思相愛の関係で、ステキです(*^^*)
これからも、健康で幸せな猫生&人生をお過ごしください♪
by †Sakura† 2015-07-30 06:32
しましまさんへ
70代のおばあちゃんはいまも働いています。その原動力となっているのがパピちゃんなんだろうと思います。
素敵な関係♪
by ケニア・ドイ 2015-07-30 07:25
†Sakura† へ
人間が健康でいることが大事なんですよね。猫を飼うことで怒らなくなったおばあちゃん。
そこにやさしい空気が溢れていました。
by ケニア・ドイ 2015-07-30 07:27
いいにゃー 2人で微笑み合ってる写真 幸せな人生の縮図ですね
by 怠惰天使 2015-07-31 15:28
怠惰天使さんへ
猫とおばあちゃんはいいにゃー。猫とおばあちゃんはごはんとみそ汁の関係によく似ています。
by ケニア・ドイ 2015-08-02 13:15