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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

猫又トリップ

2015年11月11日

子猫から同居人、そしておじいちゃん。

「そんなに引っ越しされているんですか?」長野県松本市で保護されたキジ白柄の子猫はその後、神奈川、北海道、東京、静岡、そしてまた東京と飼い主さんの転勤に伴い引っ越しすること、10回!猫は家につくって言うけど本当はどうなんだろう?聞かせて、じろう!

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ルンルンな「じろう」17歳・男の子。


大切なことはすべて「教授」から


飼い主の西野よし子さんとじろうの出会いはいまから17年前。就職して最初の勤務地は長野県松本市でした。地元ではない不慣れな町、そこでよし子さんは散策に出掛けるのです。運命の出会いが待ち構えていようとは知らずに......。

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僕も散策に出掛けまーす。

地元では知られたヒマラヤスギに囲まれた公園にやって来たよし子さんは、いきなり子猫の保護現場に遭遇するのです。「捨てられて、かわいそうにな」となげくおじさん。そんな中、複数匹いるきょうだい猫から離れ、よし子さんの元へ元気に向かってくる1匹の子猫がいました。手に救い上げると、思いがこみ上げてきます。
「この猫、私が飼ってもいい?」あっさりと里親を申し出たのには理由がありました。ずーっと猫を飼いたかったというよし子さんの望みが、たったいま叶うのですから。

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え?そうだったの?

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そうだったのよーとよし子さんはじろうに語った。


保護したじろう(推定3ヶ月)は離乳食からはじまり、歯が映え揃うころにはドライフードに移行、半年を越えて去勢手術と、いままで家で猫を飼った経験がないよし子さんが子猫からしっかりとお世話できたのは、大学時代に出会った「教授」の教えがあったからのようです。
「教授」は大学の敷地内に暮らしていました。当時よし子さんが所属するサークルの部室にほぼ毎日顔をだし、時には一緒にごはんを食べるというとても気さくな「先生」でした。そんな「教授」が10日も顔を見せないとみんな心配になって近くを捜索したこともありました。またケンカしたのであろう、ボロボロになって帰ってきた「教授」を動物病院へ連れて行ったこともあります。
そう、「教授」とは大学のサークル内で可愛がっていた言わば「地域猫」のこと。よし子さんは「教授」とその他通い猫数匹をお世話するうちに「いつか私も猫を飼いたいなぁ」と思うようになったそうです。そしてその思い、経験が大学卒業後すぐに実を結ぶとは。
「教授」が猫の素晴らしさを伝えてくれたおかげで、家族のいない猫がまた救われたよ。私からもありがとう。

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はぁーブラシは気持ちいいにゃー。


10回の引っ越しで得たもの


よし子さんは会社員。全国に事業所があるため転勤は避けて通れません。最初の転勤・引っ越しは長野県から神奈川県へ。移動手段が車というのも不安で、予想通りじろうはケージの中で終始怖がっていたそうです。新居に着いても居心地が悪そうで、じっと動かないじろう。それでも、勇気を振り絞ったのか、ちょっとずつ壁づたいを腹這いで移動し、部屋中をくまなくチェック。最後にやっと食事に辿り着いたといいます。

「はぁ、この先いったいどうなるのやら?」不安を抱えたままのスタートでしたが、飼い主の心配をよそに徐々に平静を取り戻し、ほんの1週間ほどで家にも慣れ適応していきました。それ以後の引っ越しは移動手段の心配はあれども、家の変化にはそれほど神経をとがらせる必要もなくなるのです。

これは生まれもってのものなのか、それとも度重なる引っ越しで能力が高くなったのかはわかりませんが、じろうの回復力、適応能力の高さはひょっとしてご長寿に関係あるのかも?

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よっこい、しょーいち。


西野家の食卓


じろうの食事はドライフードがメイン。たまに与える「ご褒美」ウエット(フード)は旦那さまのお仕事なんだとか。ずーっとカリカリを与えてきた猫は歯が強く、犬歯もしっかり残っているというのがこの連載で証明されていますが、じろうも多分に漏れずしっかりと歯が残っていました。

シニア期を迎えて食事の時間はアバウトに。1日の食事量は「銀のスプーン 三ツ星グルメ 15歳が近づく頃から」の小分け袋を2〜3袋。(うちの17歳の猫もこれなので、なんか嬉しい!)現在の体重は3.5kg。1年前より足腰が弱くなり階段を降りることができなくなったといいますが、現在病気はなく内蔵も元気な17歳。素晴らしい!

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ごくごく。


場の空気を読む猫


思えば「会社人生と同じ」というよし子さんとじろうの17年の生活。一人暮らしから結婚、出産と家族が増えていく環境にも、引っ越しと同様、平然と乗り越えてしまったじろうです。

よし子さんの妊娠がわかったとき、これからは旦那さんのベッドで寝てくれない?とお願いすると、「わかった」という態度ですんなり受け入れてくれたそう。このあたりは、もう人間の大人顔負けの対応力です。適応力、ハートの強さに加え、場の空気を読むことのできる柔らか頭が、長生きに繋がっているのかもしれません。

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人間の長男「こうたろう」くん(6歳)と猫の長男「じろう」。なんかややこしい。

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そんなじろうにならって、私も場の空気を読みそろそろ失礼いたします。
最後に。いまもバリバリ働きながら、家事も子育てもこなし、17歳のおじいちゃんのお世話をするよし子さんはスーパーウーマン、これがじろうの長生き最大の理由なんだろうな。

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おしまいにゃー。


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猫又トリップライター紹介

ケニア・ドイ

1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。

http://kenyadoi.com

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カテゴリ: 猫又トリップ
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みにゃさまのコメント

じろうくん、もうすっかり家族の中の一員ですよね・・!うちにも16歳になるおじいちゃん猫がいますが、16年も生きていると、人間の言葉も気持ちもちゃんと伝わっていると思います。あうんの呼吸ですよね・・。目でお話出来ますもんね!よし子さんと一緒なら日本でも世界中でも大丈夫なんですよね!きっと・・。元気でいてね・・!じろうくん!

by りんりん 2015-11-15 10:41

りんりんさん
本当にそう思います。世界中どこにいっても守ってくれる家族がいるのは心強いですね!

by ケニア・ドイ 2015-11-16 09:00