楓(かえで)ちゃんは、推定3歳のサビ猫さん。
ヤマザキ家にやってきて、8カ月。おうちで迎える初めてのクリスマスを前に、なんてしあわせそうな楓ちゃん!
楓ちゃんは、ヤマザキ家にとっては初めての猫。
ここのおうちのパパの熱烈なラブコールで保護猫カフェから迎え入れられた子です。
写真でお気づきでしょうか。
楓ちゃんの右目は、膜がかかっています。そして、右足先はたぶん先天的なものなのでしょう、欠損しています。
楓ちゃんは、昨年秋まで、地下鉄駅のそばの自転車置き場で暮らしていたノラでした。小さな体で、幼さの残る顔立ちなのに、すでに出産経験ありという、苦労人です。
片目が不自由で、少し体を揺らして歩くその姿に、「このまま外で生きていくのは酷」と思った地元のボランティアの方が保護し、浦安の保護猫ラウンジMEに託しました。
預かったMEでは、こう考えました。
「ハンディのため、他の子よりは里親さんが見つかりにくいかもしれないけれど、他の子と同じように出会いのチャンスをつかんでほしい」と。
さて、ヤマザキ家のパパは、その頃、「猫を飼いたい!」という思いを膨らませつつありました。地域猫活動の支援もしていましたが、実際に保護猫を迎え入れたいという思いがつよくなったのです。家族になかなか言い出せなかったのは、長男のヒズキ君が猫アレルギーだったことと、ママが「猫が怖くて触れないひと」だったからです。
それでも、パパの猫と暮らす夢はいや増すばかり。都内の保護猫譲渡会にヒズキ君を誘っていってみると、幸いなことにヒズキ君には症状は出ませんでした。
「もしかしたら、いける?」と思ったパパ。毎回10回も読み返すほど愛読しているブログの「道ばた猫日記」で読んだキャットラウンジMEのHPをある日開いてみると・・・・。
「カワイイ・・・・」
思わずため息の出てしまった子がいました。MEに入ってきたばかりの楓ちゃんです。これがその写真。
その日、実家への帰省から東京へ戻ってきたママは「羽田までみんなで迎えに行ってあげる」と言うパパの親切を「???」といぶかしんだそうです。
ママ、ヒズキ君、長女のハルカちゃんの3人を載せたパパの車は「ちょっと寄るところがある」といって、家と反対方向の浦安へ。着いたのはMEでした。
「楓ちゃんに会えば、みんなゼッタイ気に入る」と、パパには自信があったのです。
「たしかに楓ちゃんはかわいかったけど、他の子もかわいくて、なんでとりわけカエちゃんなの?という感じでした(笑)」と、ハルカさん。
でも、パパの目には、もう楓ちゃんしか入らなかったのです。
ママのOKも、MEからのOKもでていないうちから、なぜかヤマザキ家に、ぞくぞく段ボールが届き始めました。キャットタワーや猫トイレや猫ベッド...。みんなパパが楓ちゃんのために注文していたのでした。
パパは、言います。
「ハンディがあるから可哀そうとかいじらしいとか、そういういう気持ちではなく、ただただかわいいと思ったのです。ハンデイもひっくるめての楓のすべてが。膜のかかっている右目は緑色で綺麗だと思ったし、右足の先が欠損しているのも個性のひとつだと思いました」
(私もまったく同感で、顔の輪郭といい、恥ずかしげな表情といい、サビ柄といい、ひたすらかわいい子だと思いました)
家族がパパの情熱に折れた形で、晴れてヤマザキ家に楓ちゃんを迎え入れることになった頃、パパはMEさんへのメールにこう書きました。
「(足先の欠損や目が)よくなる治療など、楓ちゃんのためになることがあれば、してあげたいと思います。そうでなければ、今のままの楓ちゃんで十分だと思っています」
ビビりで恥ずかしがり屋の楓ちゃん。やってきてすぐには心を開いてはくれませんでした。
でも、この頃は、気がつくと、足元で、ごろーん。
とくに、パパがお仕事から帰ってくると、「あう~ん、あう~ん」と、他の誰にも出さない甘え声で、玄関までお出迎え。けっこう走るのも速いのですって。
階下は、まるで楓ちゃんのためのシンデレラ城。パパ手作りのキャットタワーも買ったタワーもあるし、おもちゃもたくさん。ヒズキ君のために、空気清浄機も家の中に3台置いてあります。
ハルカさんは言います。
「MEに行ったときは、なんで楓ちゃんなの?って思ったけれど、今では、こう思っています。うちの子はカエちゃんしかいなかった、って」
高校卒業後は、故郷の金沢に進学するつもりだったのが、「カエちゃんと離れるなんて無理!」と、近くに志望大学を変えたそうです。
ママも言います。
「カエちゃんでなかったら、うん、と言っていなかったかも。この子がしあわせになるんならいいか、って思えたのです。いま、しあわせそうにゴロンゴロンしている姿を見ているだけでもかわいくて」
「カエちゃんでよかった!」と、全員一致の家族に囲まれた楓ちゃん。
ヤマザキ家のパパのお仕事は、子どものいのちに関わる救急の医療現場だそうですが、すべてのいのちに個性があって尊いということがよくわかっていらっしゃるからこその、すてきな物語。
生きとし生けるすべてのいのちに、メリークリスマス!来年も、こんなうれしい物語がたくさん生まれますように。
皆さんも、楽しいクリスマスと、よい新年をお迎えください。
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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パパの惚れ方が半端じゃなかったですね。
楓ちゃんの初めてのクリスマス・・あたたかいご家族と一緒に迎えられて良かった。
・・
で、最後の写真。
災害時には救助をお願いします・・シール
初めて見ました。
いいですね。
by イリス 2015-12-22 17:38
読みながら、思わず涙が流れました。
楓ちゃん、パパさんをはじめ、いい家族に出逢えて本当に良かったね。いつまでも幸せにね♥
佐竹さん、あったかいお話をありがとうございます。来年も楽しみにしています♪
最後の写真のシール、私も初めて見ました。広まっていくと良いですね。
by ふくろうみー 2015-12-22 18:57
楓ちゃん、不自由な身体での育児はさぞ大変だったことでしょう。でも未來にこんな幸せが待っていたんだから、頑張って生きてて本当に良かったですね。これからは今まで苦労した分の何倍も幸せになれるね。もうすぐクリスマス、すべての猫さん達の幸せを願って、そして素敵な文と写真を提供してくれる佐竹さんに心から感謝を込めてメリークリスマス❕佐竹さんの暖かい文章がなかったら、きっと重症のペットロスになっていたと思います。本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
by ふみちゃん 2015-12-22 21:42
今回も素敵なお話ありがとうございます。なんて素敵なご家族なんでしょう。楓ちゃん今まで頑張ってきて良かったね。これからもたくさんの思い出を作ってね。
今年もたくさんの猫さんのお話をありがとうございました。あたたかい文章が大好きです。
来年も楽しみにしています。 よいお年をお迎えください。
by さりゅ 2015-12-22 22:30
佐竹さん今年最後に温かいお話しありがとうございます。楓ちゃんを一目で気にいったパパさん、離れがたくなった娘さん、今では迎えた子が楓ちゃんで良かったと言う御家族、素敵な一家に家族にしてもらった楓ちゃんこれからは幸せ猫ちゃんまっしぐらですね。この御家族のように保護猫カフェから家族にしてもらえる子達が増えるのと動物達が安心していれる場所と動物を大切にする人間が増える事が一番だと思います。本当に良かったね楓ちゃん。最後のシール広まって欲しいです。大切な家族のために
by ひとみ 2015-12-23 00:00
>イリスさん
恥ずかしがり屋の楓ちゃん、会いに行ったとき、手作りタワーのてっぺんに隠れちゃったので、今回はヤマザキパパに写真をたくさんお借りしました。愛あるいい写真ばかりです。
by 道ばた猫 2015-12-23 00:19
>ふくろみーさん
私もあのシール初めて見たので、思わずドアの写真を撮ったのです。
猫の森の通販で、マグネットステッカー「レスキュー」として購入できるようですよ~
by 道ばた猫 2015-12-23 00:23
>ふみちゃんさん
来年も、我ら猫好きにとっては、「猫年」(笑)。
猫たちのためにも、安心できるよい年にしたいですね~ 来年もよろしく。
by 道ばた猫 2015-12-23 00:27
>さりゅさん
町々を歩けば、まだまだ世の中捨てたものじゃないと思わせてくれる、猫に寄り添うすてきな人たちに出会います。そんな物語を来年も発信していきたいです!
by 道ばた猫 2015-12-23 00:30
>ひとみさん
ヤマザキ家の人たちは「うちのカエちゃんが一番」と思っていると同時に、「うちのパパが一番」ときっと思っていると思います。カエちゃんもね(笑)。
by 道ばた猫 2015-12-23 00:34
今年も佐竹さんの心温まるお話とお写真に癒されました。
楓ちゃん、しあわせそうなお顔ですね。
よかったね~~!これからもいっぱい甘えて猫生を満喫してね!
また、来年もブログ更新を楽しみにしています。
by よーこ 2015-12-23 01:07
佐竹さんの取材に本当に癒されています。毎週読むのが生き甲斐です!
シール素敵ですね。フェリシモさん商品化してくれないかしら(笑)
by しましま 2015-12-23 01:53
本当に素敵なご家族ですね✨
読んでいて涙が出て感動しました
by キキ 2015-12-23 09:31
うちにも、サビ柄さんが居ます。
模様とは裏腹になんて可愛い性格なんだろうと、いつも思います^_^
うちの子は生まれて間もなく保護されましたが楓ちゃんは元ノラで出産経験もあり、そしてハンディもある…きっと大変だった事でしょう…。
本当にヤマザキさんに出会えて良かった!
楓ちゃん、良かったね^_^
メリークリスマス!そして良いお年を!
by いも 2015-12-23 18:14
楓ちゃん、素敵な御家族ができて良かったね。
ワタシも足が不自由なので、あなたが大変な思いをして生活してたのは少しわかる気がします。
子育ても大変だった事でしょう!
パパさんのラブコールわかる気がします。
緑色の目がとても素敵だしお顔もカワイイです。
足を個性と言ってくれたのはワタシも嬉しかったです。
御家族とうんと幸せにね。
捨て猫が減りますようにみんなが幸せでありますように願っております。
by 紫音 2015-12-23 20:25
泣きました。
カエちゃん、きっと何度も繰り返している魂なんですよ。
by あもん 2015-12-23 22:38
かえでちゃん、今までがんばったね。
これからは幸せな「にゃん生」おくってね。
かえでちゃんが幸せになれたことと、パパさん始めご家族みなさまのあったかい気持ちに
涙が出てきました。
佐竹さんの記事に出会えたことに感謝します。 すてきなクリスマスを。
by ふく 2015-12-23 23:57
>よーこさん
楓ちゃんは、生まれてからの2年間でいろんな大変な思いをしたはずですが、
これからは、ヤマザキ家の一員としてのびのび猫生を満喫していくことでしょう~
by 道ばた猫 2015-12-24 06:45
>しましまさん
毎週たのしみにしていてくださって、ありがとうございます! 励みになります。
来年も、いろんな土地での人と猫のしあわせのかたちをお届けしていきます。
by 道ばた猫 2015-12-24 06:48
>キキさん
はい、ほんとうに素敵な家族でした。
楓ちゃんの存在が、二人のお子さんのこれからに、きっと大切な役割を持つのではないかな、という気がします。
by 道ばた猫 2015-12-24 06:53
>いもさん
わが家にも、2年前に19歳で旅立ったさび猫「すー」がいました。
さび猫は、賢くて温和で、性格のいい子が多いですね~ 模様もミステリアスだし。
by 道ばた猫 2015-12-24 06:56
>紫音さん
「楓ちゃんの右目と右足は、お外で頑張って生きてきた勲章」と、預かり先のMEのオーナーさんは言っていらっしゃいました。「里親が見つからなかったら、うちの子になるかなと思っていたんです」とも。
by 道ばた猫 2015-12-24 07:00
>あもんさん
そうかもしれませんね~ 奥ゆかしくて、どこか気高さのある子でした。
そんな子が足元でゴロンしてくれたら、たまりませんね!
by 道ばた猫 2015-12-24 07:03
>ふくさん
ありがとうございます。わたしも、今年たくさんのしあわせな物語に出会えたことを感謝しています。
来年も各地で、たくさんのあたたかな物語がうまれますように。
by 道ばた猫 2015-12-24 07:08
今回もすてきなお話聞かせて下さってありがとうございます。いつも暖かいきもちになって胸がいっぱいになります。佐竹さんの文章も素晴らしいですが、写真も大好きです。猫愛あふれる方が撮るからでしょうか…?
来年の更新も楽しみにしています!
by さくらこ 2015-12-26 21:01
>さくらこさん
楽しみに読んでくださって、ありがとうございます。
来年は、もう「ボクが先」「ワタシが先よ」って、このブログで紹介されたがってる子が何匹も待ちかまえてます(笑)。
by 道ばた猫 2015-12-27 02:27
ただただかわいいと思ったというパパさんの気持ち、楓ちゃんがちょこんと座っている姿を見たら、良く分かりますね~。楓ちゃん、安心できる居場所が見つかって本当によかったね!
今年も一年、外猫も家猫もたくさんの物語をありがとうございました。
どの子も本当に愛おしく、心に残っています。
来年も楽しみにしています。
by ちぃこ 2015-12-31 14:15
>ちぃこさん
どの子も愛おしいと言ってくださって、いちばんうれしいエールです。
今年も、いとおしい子を、いっぱいご紹介しますね!
本年もどうぞよろしく。
by 道ばた猫 2016-01-02 02:10
佐竹さん
2015の最後を飾る心温まるお話でした。楓ちゃん、本当にいじらしい、一生懸命生きてきたのですね。優しい家族が出来て、本当に良かったです!
暮れに母の入院騒ぎがあったり、みー太もいなくなったりと心労が続きましたが、母も大したことなく2日で退院して、みー太も戻り、寒空の中、元気にしています。どこか親戚かお友達の所に行っていたのでしょうか。今年の新潟の冬は今のところ雪がなくラッキーです。このまま降らなければ良いのですが。
昨年は佐竹さんの温かい言葉に支えられました。ありがとうございました。来年もブログを楽しみにしています。
by 佐藤 眞弓 2016-01-02 18:26
>真弓さん
暮れのご心労、ひとまず落着で、新しい年を迎えられてよかったですね!
ミー太くんはどこかで忘年会でもしてたのでしょうか(笑)。お母様も真弓さんもミー太くんも、仲良くよい一年を。
by 道ばた猫 2016-01-03 21:00
楓ちゃんを命懸けで守った 怪我と病気でボロボロだった ボス猫の存在は忘れない
お空で楓ちゃんの幸福を祈っているでしょう
by ハッピー 2021-11-27 00:58
命懸けで楓ちゃんを守った
【茶太郎】ありがとう。
楓ちゃん出現時には両目パッチリ、両足も大丈夫でした。
写真も有ります。
by ハッピー 2023-11-25 08:12