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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2016年01月19日

セラピー猫「ニケ」

ニケくんは、キジトラの男の子。
きりっとした横顔には、1歳4か月にしてすでに風格があります。

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きょうは、ママの由梨さんと一緒に、介護付き有料老人ホーム「トラストガーデン杉並宮前」にやってきました。
ニケくんがここに来たのは、CAPPの「慰問活動」参加のためなのです。CAPPとは、JAHA(日本動物病院協会)が推進するアニマルセラピー活動の総称です。

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「慰問犬」というのは、少しずつ広まってきましたが、「慰問猫」というのは、日本ではとても珍しい存在です。
ニケくん、ママに抱っこされて、あまり緊張した様子もありません。
それもそのはず、ニケくんはお出かけが大好きで、知らない人も知らないところもまったくこわがりません。小さい時から、おうちの先住猫のリリちゃんが慰問活動をするのを見学していて、場慣れもバッチリです。
今では、リリちゃんからバトンタッチされ、立派にセラピー猫を務めているのです。

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きょうの慰問団は、ニケくんのほかに、ワンちゃんが7匹。
新年の訪問とあって、入居者の皆さんを喜ばせるために、仲間のマーレちゃんは晴れ着姿。ニケくん、目が点になっています。
さあ、皆さんがお待ちかね。一匹ずつ自己紹介をしながら入場です。
「猫はお好きですか?」
由梨さんはそう尋ね、頷いた方には「お膝に乗せてみますか?」とクッションごとニケくんをそっと委ねます。

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ニケくんを抱き、撫で始めたとたん、入居者の方の顔つきが変わります。ぱっと明るく、やさしくなるのです。

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無表情だった方の口元もほころびます。

誰にでもフレンドリーなおっとりさんで、好奇心旺盛で、健康で、まさにセラピー猫としてうってつけの、ニケくん。生後数日のとき、民家の裏庭に「落ちていた」ところを、拾われた保護猫でした。ノラ母さんが運ぶ途中で落としたのでしょうか。
里親が見つかるまでの「ミルクボランティア」として、由梨さんが一時預かりを引き受けました。由梨さんは、東京都の動物愛護推進員であり、若い獣医師たちを中心に犬猫の殺処分ゼロをめざして活動するNPO「ゴールゼロ」のメンバーでもありま す。保護猫「桃」の里親になったことをきっかけにして、10年ほど前から、個人で、飼い主のいない猫たちの避妊去勢手術や里親探しを始めたそうです。

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NIKE(ナイキ)の靴箱に入ってやってきた小さな小さな猫。育てるうちにすぐに手離せなくなり、NIKEをローマ字読みして「ニケ」と名づけました。

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生後5週間くらいのニケくん。当時からもはや天性のセラピストですね! 目が開かないうちに人間に愛情深く育てられたこと、生まれもっての人懐こい性格、よくママと一緒にお出かけする生活習慣などもあって、セラピー猫ニケは誕生したのでし た。

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さて、慰問活動は、出席者を入れ替えて2部構成。2回目を前に、控室の窓からバードウォッチングをしたりして、余裕でスタンバイのニケくん。由梨さんに言わせると、家を出るときにリードを着けた時から、スイッチオンになるそうです。

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ホームのスタッフの方のお話では、他のどんなイベントより、犬猫の慰問のときがいちばん皆さんの表情がいきいきとするそうです。声の出なかった方が声を出したり、話の通じなかった認知症の方が急にクリアな話し方をしたり・・・。犬や猫を可 愛がっていた頃に記憶が戻っていくのかもしれません。いつも人から「お世話をされ保護されている」立場だったのが、小さないのちの温もりに、庇護本能が湧きあがるのかもしれません。

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「昔、猫を飼っていたのよ。抱っこできてうれしいわ。あら、なんだか涙が出てきちゃった・・・」と、感極まってほろりと泣く方も。
イベントの最後には、スタッフから、入居者さんへのインタビュー。ふだんのイベントでは感想はほとんど出ないそうですが、こんな感想が。
「ワンちゃんと、猫ちゃんと、ニンゲンは、違う匂いがするわ」
「みんなかわいい! みんな撫でたい!」(私も、将来ホームに入居したとしたら、きっとおんなじことを言うでしょう)

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ニケくん、ありがとう。みなさん、とっても喜んでいたね。おうちに帰ったら、ゆっくり休んでね。
そうそう、ニケくんには、もう一つの顔が。
ニケくんは、おうちに帰ると、せっせとイクメンしているのです。
由梨さんは、ときどき、保護子猫の一時預かりをしますが、子猫が人間を怖がっているとき、ニケくんを子猫たちのケージに一緒に入れてやります。ニケくんは、猫に対してもとってもフレンドリーなので、添い寝したり舐めてやったりしてすぐになつか せてしまいます。それに乗じて、ニンゲンにもすぐに心を開かせることができるというわけ。

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「ニケが行くのを嫌がらない限り、続けます」
そう由梨さんは言います。いまは、息の合った二人三脚。
「リリやニケと一緒にこの活動をしてきて、いちばんの喜びは利用者さんの喜ぶ顔に会えること。とくに、障がいをもつ方の動かなかった手が動いて撫でてくださったり、認知症で無表情だった方に笑みが浮かんだりするのを見たとき、ああ、やって いてよかったと心から思います。いままで数えきれないくらい猫たちを救ってきましたが、今度は、そんな猫たちが人間に恩返しをする橋渡しをすることができたら」と。
福祉現場、教育現場、更生施設などで、どんどん保護犬猫たちの恩返しする機会が増え、動物と人間が助け合って暮らせるいい循環がある社会になりますように!


写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

ニケくん、立派な介護士さんですね。生活のお手伝いは大切な仕事だけど、心を癒すのは、人間より動物の方が上手かもしれませんね。これもニケくんのママが愛情深く育ててくれたおかげですね。これからもたくさんの人達の心を癒して欲しいです。我が家のサザエさんを口説いていた子ですが、彼女がお役に立てないとわかったからか、来なくなりました。寂しいようなほっとしたような複雑な気持ちです。

by ふみちゃん 2016-01-19 16:36

本当、動物って立派な介護をしてくれますよね

ずっと飼っていた犬を亡くした時、
要介護5の母がペットロスに・・
幻覚まで見だしたのでこれはいけないと
あわてて探してもらってきたのが
みーちゃん
年齢不詳(笑)の三毛にゃんでしたが
来た日から母の布団で一緒に寝てくれる癒しぶり
最後は、母が無くなる1か月ほど前に虹の橋を渡りました
先に行って待っててくれてたのかな?

今いる子は、猫パンチしちゃうから
癒し猫にはなれないな~
ニケくんはおりこうに抱っこされてて
いいなぁ~
これからもがんばって癒し猫でいてくださいね♪

by のんのん 2016-01-19 21:55

ニケくん立派なセラピーキャットですね! ニケくんのような猫さんが増えたら喜んでくださる方がたくさんいらっしゃるでしょう。 猫を飼っていた方は本当に嬉しいだろうなぁ。。
動物と触れ合って、その頃を思い出して優しい気持ちが心に広がって良い変化があらわれるのでしょうか。 動物の存在って本当にすごいなと思います。
私もうちのセンター分けさんに「かわいいね~」って言う事で自分が癒されてるんですね!

by さりゅ 2016-01-20 00:08

>ふみちゃんさん

サザエさんとはプラトニックで付き合えなかったのかな(笑)。
彼の猫生もしあわせでありますように。

by 道ばた猫 2016-01-20 01:04

>のんのんさん

ひと月先に行って待っててくれるなんて、ほんとうにできた猫さんでしたね!
猫としては猫パンチの出る猫さんが多数派で、それはそれで可愛いですよね~

by 道ばた猫 2016-01-20 01:08

>さりゅさん

アニマルセラピーを目の当たりにした感想は、たとえ認知症になったとしても、誰もが胸の奥にもっている「小さきものをめでたい」という気持ちを、動物が引き出している、という感じでした。

by 道ばた猫 2016-01-20 01:14

あまりのかわいさに笑っているうちに、涙でてきました。なんて、素敵な猫ちゃんでしょうか。

by yuri 2016-01-20 05:59

>yuriさん

ニケくんのような、慰問に適性の猫さんは珍しいでしょうね~ でも、それぞれのお宅の猫さんも地域猫も、その家・地域専属の立派なセラピー猫だと思います。

by 道ばた猫 2016-01-21 00:18

みにゃさま、ボクこんにゃにほめてもらって、チョットはずかしいにゃ〜。でも、みんにゃが、よろこんでくれるのにゃら、これからもがんばるよ!おうえん、ありがとにゃん。

by Nike 2016-01-21 01:05

佐竹さん
本当にそうですね。→〈それぞれのお宅の猫さんも地域猫も、その家・地域専属の立派なセラピー猫だと思います。〉
そのうちのセラピー猫、みー太ですが、やはり、他に本宅があるようです。今まで暖冬だったのに、寒波が来て大雪が降った日から何処かに行ってしまい、ご飯の時間以外は姿を見せなくなりました。うちよりもっと暖かい居心地の良いところがあるならそれで良いのですが…(._.)
ご飯をたべおわると、又、吹雪の中何処かへ行こうとするので、「みーたん、寒いよーここに居なさーい」と声をかけると、一旦立ち止まって、じーっとこっちを見てから、やはり何処かに行ってしまいました。
そして何と今日は、弟か妹なのか、みー太にそっくりな一回り小さい猫ちゃんを連れて来て、ご飯を分けてあげていました。私が知らずに縁側の戸を開けたので、びっくりして二匹で固まっていましたが、そっと戸を閉めるとご飯の続きを食べて、又、二匹でいなくなりました。
みー太は本当に用心深く臆病で、もう、4ヶ月になるのに、ご飯とお水を置きに近づくと、ニャーと言いながらシャーシャー言います。
でも、寒い中、みー太が独りぼっちじゃなくて良かったと思いました。さくら猫ブログの猫ちゃんたちのように、二匹でいると安心なんでしょうね。

by 佐藤 眞弓 2016-01-22 22:44

>Nikeくん

うわさのニケくんに会えて、この前は楽しかったよ。ママに聞いたら、ニケくん、ふだんはやんちゃしてるんだってね~。 onとoffの切り替え、すごいな、見習わなくっちゃ。また会おうね!

by 道ばた猫 2016-01-23 02:46

>眞弓さん

オス猫は案外子猫にやさしいですよね~ たとえ血のつながりがなくても。
自分より小さな猫を餌場に連れてきて、その子に餌場を譲るということもよくあるようですよ。寒い冬を2匹仲良く越えて、早く春になるといいですね!

by 道ばた猫 2016-01-23 02:54

由梨さん、こんな活動もされてたなんて驚きました!! リリちゃんに引き続き、ニケちゃんの活動にも感動! なんて素晴らしい巡り合わせがあったんでしょう!
心から由梨さんとニケちゃんの活躍を讃え応援しています!!

by 中村にゃおぴょんた 2017-01-19 05:51

はじめまして紫音(キジトラ)です。
僕もママの仕事場(特養)で、不定期訪問しています

by 紫音 2022-07-18 10:06