サバ白のチョキくんが眺める窓の外には、菜の花と青い海。
南房総はもう春の色に染まっています。
海の見えるこの家で暮らすのは、猫8匹と、犬1匹と、海と動物をこよなく愛するパパとママ。
8匹は全員、捨てられたり、さまよっていたり、ノラの母さんから生まれて育つのが危ぶまれる状態のところを保護された猫たちです。でも、今は、早朝に目の前の海を眺めることから始まる平和な毎日。
猫たちのやさしいパパとママである石川夫妻は、近くに「西川名オーシャンパーク、略してNOPというダイビングサービスの仕事場をもっています。
東京都の大島育ちのパパは、子どものときから海と動物が大好き。少年時代は、落ちていたスズメの雛を育て、一緒に寝ていたこともあったとか。
高知の里山育ちで、やはり動物大好きのママとは、ダイビングを通じて結ばれました。
ここ南房総に移住して10年目。海辺や自宅近くでヨレヨレの猫に出遭うたびに保護していたら、いつのまにか8匹に。
猫が増えたため、借りていた家を買い取って、白いペンキを塗ったり、ぐるりとキャットウォークを付けたりと、存分に猫がのびのび過ごせるようただ今リフォーム中。
ソファーの上でくつろいでいるのは、白猫「あいこ」。チョキくんとは兄弟で、10年前に保護されました。「あいこ」という名は、「グーチョキパー・あいこ」からとった名前。れっきとしたオス猫です。重い腎臓病と心臓病をあいついで患いましたが、今は、毎日の服用と治療食と愛情とで、すっかり元気になりました。
おしゃべりが大好きなサバ白のすずちゃんは、しょっちゅうパパとママに話しかけています。
2匹で保護され、里親さんのご縁のなかったすずちゃんは家の子に。ノラとして育っていたので、いまだに盗み食いや脱走の癖があるそうです。
キジトラのゆずちゃんは、近くの漁港で生まれた子。弱って死にそうなところを引き取られました。いつも困った顔をしているので、「困ったちゃん」の異名あり。
お鼻の模様がユニークなチビマルちゃん。仕事場に置き捨てられた子ですが、明らかに飼い猫だったと思われます。スタッフのマルガリータさんが飼うことになって「チビマル」という名がついたのですが、飼い主一時帰国のため、石川家に。
キジトラのみずちゃんは、2歳。ビビりのため、よくキャットウォークの上にいます。雨の日の夕方、ボロボロ状態でふらついているのを保護。前足がだらりとして、おなかには大きな切り傷がありました。草刈機に巻き込まれたのかもしれません。孤独癖があるものの、自分より新入りのサビちゃんとはよく遊びます。
サビちゃん、10カ月。仕事場で生まれました。きょうだいの黒猫2匹はもらわれていき、ご縁の見つからなかったサビちゃんは石川家の子に。
好奇心まっさかりで、先輩たちにちょっかいを出しているそうです。
ストーブの前が好きなたーくん9歳は、ご夫妻の娘さんが大阪に住んでいた頃に保護した猫。やはり路頭に迷っている猫を見捨てられないのはご両親譲りなのですね。
大阪育ちのためか、なかなかみんなに馴染めず、すこしずつすこしずつ仲間入りをしているところです。
飼えなくなった人から譲り受けた犬のフューくんを入れれば、9匹の大所帯。海辺の家はにぎやかです。
「もうこれ以上は...」とママは思うのですが、さまよっている子を見ると、パパは「5匹も6匹も、6匹も7匹も、同じじゃないか。ほっとけないよ、連れて帰ろう」と言うのです。
そんなわけで、いつしか9匹の大所帯に。でも、大好きな海と犬や猫に囲まれたお二人の表情は、穏やかな幸福感に満ちていました。
仕事場でも、現在7匹の外猫たちの面倒をみていらっしゃるそう。事務所の受付には、避妊去勢手術や餌代のカンパ瓶が置いてあります。ダイビングの常連さんで里親になってくれた人も。「4649(よろしく)」と書かれた段ボールに入れられて捨てられていた子猫は、お菓子作家さんの家にもらわれ、しあわせに暮らしています。
「まだまだ仔猫を捨てるなど無責任な飼い方が残る土地ですが、地元の人たちとも、ここに訪れる人たちとも、仲良く手をつないで、不幸な猫たちを減らしていき、一緒にのんびり南房総の暮らしを楽しめれば」というのが、お二人の心からの願いです。
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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素敵なご夫婦ですね。
どの猫ちゃんも穏やかな顔をしているのは
今の暮らしがしあわせなのでしょう。
ひとりひとりが命に責任を持つことが大切だと改めて思います。
by よーこ 2016-02-09 14:55
本当に素敵なご夫婦ですね。動物好きな人に悪い人はいないと言われるのは本当なんですね。だから猫達も自然と集まってくるんですね。猫は優しくしてくれる人間をちゃんと見抜けますものね。私も春から新しい子を探す予定です。娘が独立して新居で猫と暮らすので友達にしようねと言っています。そらのように運命を感じる子を見つけます。そらも天国から応援してくれるとうれしいです。
by ふみちゃん 2016-02-09 16:15
4649ヨロシクて何でしょう(怒)ほっこりとしたいいお話しと思ってたら出て来た言葉どうしてそんな事するんでしょうね❗そんな言葉書く前に出来る事はあるはずです‼簡単にここなら何とかしてくれると考えないで欲しいです。優しい御夫妻に押し付けないで欲しい❗只この御夫妻と出会える事だけが救いだと思います。命ある子達どうにも出来ないなら無関係のまま可愛そうですが手ださないで下さい。見逃せないなら出来る限りの努力して欲しいです。人間の勝手は辞めて欲しいです。手を出さないでという言い方は語弊があると思います。気になる方はごめんなさい。
by ひとみ 2016-02-09 17:15
>よーこさん
そこに住む生き物たちを含めて、移住した地を愛するご夫妻、ほんとうにナイス・カップルでした!
猫たちみんないい顔してました~
by 道ばた猫 2016-02-09 23:32
>ふみちゃんさん
そらくんも、きっと前を向いて春を迎えるふみちゃんさんを応援してますよ!
運命を感じる猫さん、いまどこにいるのかな? ふみちゃんさんがみつけてくれますよ~
by 道ばた猫 2016-02-09 23:36
>ひとみさん
まったくもって、4649と書いて置いていくなんて、ひどい話です!
でも、そんなことをする人はきっと人生で何らかのしっぺがえしを受けると思います。逆に、石川さんご夫妻は、猫たちから目に見えない大きな贈り物を受け取るはずです。
by 道ばた猫 2016-02-09 23:43
本当に海が目の前! こんな素敵なところで優しいパパさんママさんと暮らせる猫さんたちは幸せですね。ますます房総に行ってみたくなりました。
by さりゅ 2016-02-10 00:48
こんにちは。いつも楽しく、時には感極まって涙しながら読ませていただいています。
たくさんの猫とわんことの生活を送られる石川さんに感動しました。
誰もができることではないからです。
うちにも箱根から育児放棄されたはちわれの女の子と避妊手術したにもかかわらず、捨てられた黒猫の女の子がいます。
捨てるという人にも事情があるにせよ、手放すなら周りに相談するなりなんらかの対応をしてほしいです。話せばわかってくれる人は必ずいると思います。
ダンボールに「4649(よろしく)」などど書いておくなどありえませんよね。
怒りと同時に呆れました。
石川さん宅にいる猫ちゃん、わんちゃんの幸せな顔をみて嬉しく思います。
by マロンの母 2016-02-10 08:06
>さりゅさん
房総人は、商売っ気があまりなくて、ジワ~とあたたかいのが魅力です。
小さな漁村をめぐり歩くのが、私のこの数年のマイブームなんですよ~
by 道ばた猫 2016-02-11 00:47
>マロンのお母さん
2匹を保護してくださってありがとうございます。
石川さんご夫妻の自宅8匹仕事場7匹はほんとうに誰もができることではないですよね。何を見過ごさず、何を大事に暮らしていくかという石川さんご夫婦の価値観が同じことが素敵でした!
by 道ばた猫 2016-02-11 00:55
これでいいよ
by 小野川華奈 2016-02-12 21:29
>華那さん
これでいいよ。猫たちの気持ちになっていってくださったのかな。
猫の気持ちのなって考えるってことを忘れない猫ブームであってほしいですよね~
by 道ばた猫 2016-02-14 10:33