三毛猫たまちゃんは、一度見たら、忘れられないお顔です。
まるでお習字の筆でいたずら書きされたような鼻からあごにかけての黒い線と、緑色の瞳がとってもチャーミング。5歳を過ぎて、ここウダガワ家の子になったのは、先月のことです。
パパとママと、社会人の3人のお子さんがいるウダガワ家にとって、たまちゃんは初めての猫でした。
団地から一軒家に引っ越したのを機に、動物を飼おうということになって話し合い、末っ子のマサコさんの「猫がいい!」という願いを叶えることに。
それで、浦安市の保護猫ラウンジ「キャットラウンジME」に何度か足を運び、マサコさんが「この子!」と決めたのがたまちゃん。
MEにいたときのたまちゃんはというと・・・・。
愛らしいお顔をしているのに、ろうたけた表情も見せ、いつもひとりで高いところから、ひっそりとみんなを見下ろしている猫でした。
ご飯タイムにも下りてこず、デリバリー孤食を続けていました。
そんなたまちゃんを可愛いと思ったマサコさんが手をのばすと、ペロペロとその手をなめてくれ、スリスリもしてくれました。
おとなしそうで、甘えんぼさん。初めての猫にはぴったりと、家族一致でたまちゃんに決めました。
(最初、パパは、「えっ、マサコはなんでこんな変わった模様の子を気に入ったの?」と思ったそうですが)
トライアル申し込みの時、一家はたまちゃんのつらい過去を知りました。
たまちゃんの最初の飼い主さんは、男の人。仕事で長時間の留守も多く、たまちゃんはひとりでお留守番をがんばっていたそうです。
そのうち、たまちゃんのご飯代も捻出できない経済状況となってしまい、飼い主さんは3年間可愛がっていたたまちゃんを
泣く泣く手放すことを決めました。
相談に乗ってたまちゃんを引き取ってくれたのは、ひとり暮らしの年配の女性でした。その方もたまちゃんをとてもかわいがってくださったに違いありません。
でも、その家に来て2年たったある朝、たまちゃんがいくら待っても、飼い主さんは起きてはくれませんでした。
小窓が開いていたのにたまちゃんは外に出ず、訪ねてきた人が発見するまでの40時間、
たまちゃんは飼い主さんの傍らにいたと思われます。
行き場のないたまちゃんを保護したのは、「楓ちゃんのクリスマス」で紹介した楓ちゃんを保護したボランティアのかたです。
たまちゃんは一時預かりさんの家を何軒か転々とした後、MEに預けられました。
2度もつらい思いをして家をなくしたたまちゃんを保護主さんはとても不憫に思い、「できれば、たまちゃんだけをずっと愛してくれる家庭に」と、里親になるかたへの希望条件を添えました。
MEにきてほどなく、たまちゃんはマサコさんに気に入られたというわけなのですが、私には、タマちゃんがマサコさんを選んだような気もします。
さて、ウダガワ家の猫となったたまちゃんは・・・・。
やってきたばかりのときは、ガツガツとした食いしん坊ぶりを見せました。昔、お腹を空かせていた時期の名残でしょうか。排泄は猫トイレでちゃんとした後、なぜかすまなさそうに部屋の隅っこに隠れていたそうです。
それで、トイレの後は、「猫トイレを使えてえらかったね~」と褒めておやつをあげていたら、体重が増えてしまい、獣医さんから「甘やかし過ぎです」といわれてしまいました。それでも、おやつをあげずにいられない甘々のパパなのです。
そんな一家に囲まれて、最近はかなり安心した様子を見せるようになったたまちゃん。
早起きで、なんと5時40分にみんなを起こして回るのですって。
とにかくひとりになるのを寂しがり、誰かのあとをついて回ります。トイレに入っても、ドアの前で待っているそうです。
消防士のパパは、家にいることが割合多いそうですが、みんなが出払ってしまったときなどは、たいへん!
布団やシーツの奥深く潜り込み、誰かが帰ってくるまで、飲まず食わず、トイレにも行かず、じっと隠れているそうです。
月に一度、動物病院で定期検診を受けるのですが、そのときもパ二クリまくります。
キャリーで移動中、大声で叫び続け、診察台ではおとなしくなるものの、キャリーで家に着くまで、またまた大声で鳴き叫びます。
だから、検診に行った日は疲れ果てて、帰るなり猫ベッドでぐったり。
「ひとりにしないで」「どこへつれていくの」という、飼い主さんとの分離不安が、たまちゃんの記憶の中に、いまだ残っているのでしょうか。
それも、時間が経てば、ゆっくりと薄れていくことでしょう。
だって、ウダガワ家の全員、たまちゃんに、メロメロなんですもの。
どんなにメロメロかというと、パパが言うには・・・。
「私が家にいるときは、仕事先の家内と次男と娘に、10時、お昼、3時と、Lineでたまちゃんの様子を知らせるんです。『ご飯ちゃんと食べたよ~』って食べる前と食べた後のお皿の写真送ったり、『いま、ウンチしたよ~』とか。毎日おんなじことですけど、みんな待ってる。すぐに『よかったね~』とか返ってきます。家内が家にいるときは
、私と次男と娘に、連絡きます。ええ、10時とお昼と3時に必ず(笑)」
「お昼休みに『今のたまちゃん』って画像が送られてくると、午後の仕事も頑張れるんです」と、マサコさん。
下のお兄ちゃんはといえば、ネットでたまちゃんの喜びそうな猫ご飯を見つけると、つい箱買いしてしまうのだとか。
マサコさんの腕枕で、子猫のようにくつろぐたまちゃん。
「この前、突然、腕に前足を絡めてきてギュッとしがみついてきて、びっくりしました」と、マサコさんはうれしそうに教えてくれました。
ママは言います。
「たまちゃんをしあわせにするのはもちろんですけど、それ以上に、私たちがたまちゃんから、ものすごくしあわせにしてもらってるんです。
社会人5人だと、そんなに会話もなかったのに、いまは、よく話し、よく笑い、毎日が楽しい。
仕事が終わると、みんなまっすぐ家に帰ってきて、まっさきにたまちゃんに話しかけます。たまちゃんのために清潔にと、マサコが自室の掃除をよくするようになったのも驚き。きょうだいで口げんかをしていても『たまちゃんが見てるよ~』というと、ぴたっと収まります。たまちゃん効果って、すごいです!」
ところで、MEではおとなしい猫というイメージだった、たまちゃん、このごろ、けっこうオテンバをし始めたとか。
タンスの引き出しをこじあけたり、ピアノの鍵盤の上に飛び乗ったり。ベッドの上で、ジャンプしたりでんぐり返ったり。
「ここは、あたしのずっとのおうち」ってわかって、心がほどけた証ですね。
たまちゃん、もう安心していいんだよ。
家族みんなに甘えて、うんとしあわせになろうね。
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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たまちゃん、何度も寂しい思いをしたんですね人間だって大好きな人と離れるのは凄く辛いもの、たまちゃんは本当によく辛抱したんですねでもこれからは、大丈夫・二度と寂しい思いをすることはないよ。温かく優しいみんなに囲まれて、うんと幸せになろうね。
by ふみちゃん 2016-03-22 19:37
道ばた猫日記、大好きです。楽しいお話ばかりじゃないけど、じんわりしたり、ほっこりしたり…。今回のたまちゃんも、温かい家族に出会えて本当に良かった。こちらまでシアワセな気持ちになりました。
by ふーみん 2016-03-22 20:30
たまちゃん、良かったね。
優しくステキな家族ができて、これからもうんと甘えて幸せになってね。
辛い事もあったけど私今は幸せだからと幸せを噛み締めているようにも私には思えます。
うちのコロンボも幸せだよと思ってくれてたら嬉しいです。一緒に暮らしはじめて4ヶ月が過ぎワクチン、去勢手術も終え毎日一緒に遊んでてますます可愛くワンパクになってます。
たまちゃんのグリーンの瞳印象的でステキです。毛色のキレイなこと可愛がられてるのがすぐわかりました。
たまちゃんの物語の続き知りたいです。
宜しくお願いします。
お幸せにね、たまちゃん。
by 紫音 2016-03-22 23:07
今日は愛猫の命日です。ちょうど1年前に亡くしました。たまちゃんと同じように、可愛らしい三毛猫でした。あの子が逝った日に、こんな素晴らしい猫日記を読むことができるなんて。たまちゃんと同じように、あの子も天国で幸せに暮らしているんでしょう。
たまちゃん、どうかご家族といつまでも楽しく幸せに暮らして下さいね。
by きなこ 2016-03-22 23:47
きゃ~、なんて可愛い柄~!!お目目の色もきれい!!これは一目惚れしちゃうわ…。
たまちゃん、もう寂しい思いをすることはないからね、お留守番も病院も、安心してて大丈夫だからね。
by ららねね 2016-03-23 04:53
>ふみちゃんさん
きっと子猫の時に保護してくださった最初の飼い主さん、引き受けた次の飼い主さん、身寄りのなくなったたまちゃんを保護してくださったかた、一時預かりのリレーをしてくださったかた、里親探しの舞台となったME、いまのたまちゃんをまるごと愛してくださるウダガワ一家。いのちをつないだ方々に心から感謝ですね~
by 道ばた猫 2016-03-23 12:41
>ふーみんさん
ありがとうございます。
人間 ➡ 猫 という一方通行では語れない猫の物語を、猫の気持ちをできる限り代弁しながらこれからも発信していきたいです。
by 道ばた猫 2016-03-23 12:46
>紫音さん
しあわせだよ、ということを、一気に表現する子と、じわじわ表現する子と、保護猫さんはそれぞれですよね~。うちの菜っ葉ちゃんは一年ほどかかりました。コロンボちゃんも、じわじわタイプかな?
by 道ばた猫 2016-03-23 12:50
>きなこさん
きなこさんの胸の中には、愛らしい三毛さんの思い出がいっぱい大切にしまわれているのですね。
この世でも幸せで、天国でも幸せなことと思います。
by 道ばた猫 2016-03-23 12:54
>ららねねさん
ららねねさんも、ひとめぼれのキュートなたまちゃん。MEのオーナーによると、カメラ目線を絶対にくれなかったそうですが、たしかに、そう言われてよくみれば、一枚目の写真以外はどれも微妙に目線外されてましたね(笑)~
by 道ばた猫 2016-03-23 12:58
たまちゃんとってもきれいなグリーンの瞳。一目ぼれしてしまうのも納得の魅力的な猫さんですね。
つらいこともあったけれど、これからは幸せがずっと続くから安心してね! 猫さんそれぞれにストーリーがあるんだと思うとみんなみんな幸せになってほしいです。。
by さりゅ 2016-03-23 14:16
たまちゃん、本当に可愛いですね!
ご家族のみなさんの寵愛ぶりがうかがえます。
たまちゃんから幸せをもらってるっておっしゃってますが、私も日々同じことを感じています。
我が家の愛猫はなちゃんは家族の中心にいていつも私たちを幸せにしてくれます。
猫ってやつは、可愛くて仕方ないですね~(笑)
by はなママ 2016-03-23 18:39
意志の強そうな目をした、可愛い女の子ですね。
小さな体で、なんども心細い思いをじっと、静かに我慢してきたのですね。
でも、最近はオテンバをし始めたときいて、ほっと安心しました!
ずーっと待っていた、自分の本当の居場所が見つかって本当によかったね!
by ちぃこ 2016-03-23 20:29
皆さま、沢山の素敵なコメントありがとうございました!!!!
取材を受けて舞い上がってしまったウダガワ一家でした(笑)
佐竹さんにお会いできて、こんなに素晴らしい記事を書いて頂き、とても嬉しいです!!!!ありがとうございます!!!!
またまた、たまちゃんに幸せもらっちゃいました(笑)
これからも、家族みんなでたまちゃんを大事に、大事にしていきます!!!!
仕事中もたまちゃんの事が気になってしょうがないマサコでした(笑)
by たまちゃんのママのマサコです 2016-03-23 21:12
>さりゅさん
そうなんですよね。私たち一人ひとりにストーリーがあるのと同じに、猫にもそれぞれストーリーがある。だけど、猫はつらい思いをしても、耐えてる。えらいなあ。
by 道ばた猫 2016-03-23 23:03
>はなママさん
ほんとに、猫ってやつは(笑)。同感です。
まったく、そこにいるだけで、心がまあるくなります~
by 道ばた猫 2016-03-23 23:10
>ちぃこさん
じつは可愛いお顔のたまちゃん、保護猫ラウンジ時代に武勇伝があって、ほかのメス猫さんとケンカして怪我したこともあったとか。自分の居場所を見つけるのに必死だったのでしょうね。
by 道ばた猫 2016-03-23 23:18
うちにも、突然、飼い主さんがご自宅で倒れ、そのまま…となり、大変な思いで保護をした猫がおります。
私がたまに数日、留守をして帰ってくると、この子だけずーっと後をついてくるんです。他の子は、そこまではしないです^_^;
たまちゃんのエピソードは、泣けます。切ないです。幸せになれて、ほんとに良かったね(^ ^)
by 毛玉 2016-03-23 23:19
>たまちゃんママのマサコさん
たまちゃんには、これからもきっと、まだまだたくさんのしあわせをもらえますよ~
(たまちゃんがおばあちゃんになってもね!)
末永く、お幸せに。
by 道ばた猫 2016-03-23 23:22
>毛玉さん
大変な思いで保護してくださって、ありがとうございます!
やっぱり、その子もひとりが不安なんですね。ぜひ、ウダガワ家みたいに甘やかしてください!
あ、他の猫さんの手前、そうもできないか(笑)。ほどほどに。
by 道ばた猫 2016-03-23 23:34
たまちゃん、本当によく頑張って耐えたね。
ごめんね、涙がとまらない
by ☆里☆ 2016-03-24 04:49
たまちゃんの幸せぶりと、ウダガワ家の方々のお喜びの様子が心を温めてくれます。こうしてみんながわんこやにゃんこを家族にして大事にしてくれたら、殺処分なんてしなくてすむのにね。その日が来るまでがんばろう。
by るんたた 2016-03-24 10:48
たまちゃんへ
これからは楽しい事がたくさん待っています。
良かったね!!!
by まる 2016-03-24 12:38
たまちゃん、堂々としたニャンですね。とっても立派です。
どのワンもニャンも幸せに!
by ルシファー 2016-03-24 16:22
もう胸がイッパイ( ノД`)…
たまちゃん、良かったね。
ウダガワ家の皆さん、ありがとうございます。
たまちゃんに、ウダガワ家の皆さんに、沢山の幸あれ\(^o^)/
by 銀の翼 2016-03-24 22:45
>☆里☆さん
ほんとうに、たまちゃん、一人でよく耐えました。
ご褒美に、これから、いっぱいしあわせになってもらいましょう~
by 道ばた猫 2016-03-24 23:17
>るんたたさん
同感です! たまちゃんも保健所持ち込みにならなくてよかった。
いろんな心あるかたたちによって、つないでもらったいのちです。どんなケースも、すぐにつないでもらえる仕組みができますように!
by 道ばた猫 2016-03-24 23:21
>まるさん
なにしろ5人からの寵愛ひとりじめですからね!
少しぐらい、ワガママ猫になってもいいと思います(笑)。
by 道ばた猫 2016-03-24 23:24
>ルシファーさん
試練は女を強くする。
人間も猫も、おんなじかもしれませんね~ いいお顔です。
by 道ばた猫 2016-03-24 23:27
>銀の翼さん
じつは、家に出入りのおじいちゃまが、猫を迎えるのに大反対だったとか。それを根気よく説得したのが、ご長男。たまちゃんは、家族の絆も強めましたね~
by 道ばた猫 2016-03-24 23:30
最初のたまちゃんの顔を見るなり、クスッと笑ってしまいましたが過去のたまちゃんのことを知って
本当にたまちゃんなりに苦しかった事がわかります。保護された子達、それぞれいろんな過去を背負ってるんだな~、って思うと頬ずりしたくなっちゃいます。でもこんなに大事にしてくれる家族に出会えて
本当に良かった!!最後の写真は、たまちゃんのドヤ顔に見えちゃいます(笑)どう?私の大好きな家族よ!!って。
by りんりん 2016-03-27 12:34
>りんりんさん
そうなんです! ふふ、最後の写真のたまちゃん、誇らしげですよね。
あとは、のんびり長生きしてほしいですね~
by 道ばた猫 2016-03-27 21:39