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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2016年04月12日

ロンドンからやってきた猫

ここは千葉県匝瑳(そうさ)市の里山地帯にある農園「Hive and Barrow」。略して「ハイバロ」。
農園主はイギリスで知り合って結婚した、イギリス人のギブスさんと銚子市出身の貴子さん夫妻。「日本で自給自足のように暮らしたい」というギブスさんの夢を叶えるため、6年前に帰国。二人で山地を開墾して作った有機農法の農園です。
帰国した時、イギリスから連れてきた猫は3匹。お年を召した2匹はこの地で一生を終え、「ネコ」という名の8歳の雄猫が残りました。

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ネコくん、日本猫と変わらないように見えますが、心もちムッチリ体型でしょうか。
ハイバロでは、「ザ・プラウマン(農夫という意味)」というカフェを週末のお昼だけ開いています。ネコはカフェ猫ではない、母屋暮らしの自由猫なので、運がよければ、敷地内を散策したりカフェに立ち寄ったりする彼に会うことができます。

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ネコは、ロンドンのど真ん中のアパートでギブスさん夫妻が暮らしていた頃の保護猫です。
貴子さんにロンドン外猫事情をお聞きしてみましたら、日本でいう「ノラ猫」はいないとのこと。ただ、人に飼われるのが性に合わず自由な外暮らしを自らの意志で選択する猫もいて、そんな猫たちは近隣の人たちがみんなで面倒を見ているそうです。寒くなるとどこかの家にもぐりこむ気ままな暮らしです。
「猫を邪険にする人はいないのですか?」と聞けば、こんな明快な答えが。
「いません。もしいたとしたら、みんなが放っておかない。ひどい目に遭うことになります」とのこと。さすが動物愛護の先進国ですね。

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ネコくんは、そんな自由猫たちのいる路地にふと現れ、「なんだか変わった新入りがいる」と人々が言いだした頃、ギブス家にするりと入り込み、その日から我がもの顔で暮らし始めたのだとか。
どう変わっていたかというと、ネコくんは他の猫とコミュニケーションをとることができず、その日に食べるものもこだわりを持って自分で決める「我が道を行く猫」だったのです。
ロンドンの獣医さんは、ネコくんに「アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)」という診断を下しました。つまり、猫づきあいがうまくできない、こだわりの強い、少し変わった猫ということ。(そんな診断があるのだ、と驚きました。だって、そんな猫さん、たくさんいますよね。うちにも1匹。飼い主もその傾向かも)

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そして、ネコくんは、ロンドンから遠く日本の農村へ。飛行機旅では死ぬほどの思いをしましたが、着いたのは見たこともない大自然。すっかりハイテンション猫になってしまったとのこと。
農園見回り、森や竹林の探検、バードウオッチング、昆虫採集、木登り、日光浴、農作業の邪魔・・・。楽しき日々を送っています。
農園では、外国野菜やハーブを中心にたくさんの作物を作っていますが、唯一作ることのできない作物があるそうです。

それは、イチゴ。
なぜなら、イチゴはネコくんの大・大好物で、イチゴ畑を作ったら、収穫前にすべて食害に遭ってしまいそうだから。

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近郊で採れる甘くて柔かいイチゴを、ときたま貴子さんからおやつに一粒もらうのですが、なんともしあわせそうにペロペロと完食。
おやつをもらう前は、「high five!」とタッチをします。

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昨年11月、貴子さんは車で近くを走行中、道ばたにしゃがんでいた白い仔猫を見つけました。家猫かもしれないと、その日は通り過ぎたのですが、2日後、大雨の前に行ってみると、同じところにしゃがんでいたので、保護しました。

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いまや天然娘にすくすく成長した「キャット」ちゃんです。
キャットちゃんは、ネコおじさんが大好きなのですが、相手にされません。

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きょうは、竹林の探検から帰ってきたネコくんを、草むらで待ち伏せ。さて、どうなるでしょう・・・。

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チュッと鼻先にごあいさつできました。そさくさと立ち去るネコくん。
そのあとも、キャットちゃんはめげることなく、カフェのテラスを通りかかったネコくんを、上から奇襲作戦。

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ちょっとだけ相手にしてもらえました。
この調子で少しずつ仲良くなれるといいですね。
なれる気がします。春ですもの。

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カフェ「ザ・プラウマン」のランチは、採りたての野菜がいっぱい。一つ一つ違う野菜本来の甘さには感激です。
金~日のみ開店。前日までの完全予約制となっています。(℡0479・75・4618)  とても分かりにくい細道の奥なので、予約時に住所・道順を確かめてください。

         ☆   ☆   ☆

さて、お知らせふたつ。
・ハイバロから車で十数分の、猫のいる美術館として猫好きに人気の松山庭園美術館で、15日からいよいよ「猫ねこ展2016」が始まります。私も里山猫写真2点を出品しています。
・同美術館で1~2月に展示させていただいた「房総猫」写真展の様子が、本日12日、BSジャパン「ポチたま」2時間スペシャルの中のポチたまニュースで放映されます。観ていただけましたら、うれしいです。


写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

はるばるロンドンから移住してきたネコくんと貴子ママに保護されたキャットちゃんは匝瑳の自然の中で伸び伸びと暮らしていて幸せですね。

前の週のちゃい子ちゃんとエッピョンくん兄妹も海辺で自由に暮らせて羨ましいです。

我が家にピーとナッツの兄妹がいますが、ある公園で生まれて母猫から子別れしたときに保護しました。
里親を見つけて連れて行った翌日に2匹で脱走してひと月以上も林の中で暮らし、我が家へ戻って来ました。

2匹は今はマンションに住んでいますが、林の中よりもコンクリートの中の住まいを選んでくれました。
自然の中で飼ったらどんなに楽しいかと思いますが、夢のまた夢です。

松山庭園美術館の「猫ねこ展覧会」に行ったときは絶対「ハイバロ」さんに予約をしてお伺いしたいと思います。
ネコ君、キャットちゃん待っててね。

by チセママ 2016-04-12 17:47

ネコ君、遠路はるばるとご苦労さま!でもきっとロンドンより、今暮らしている農園のほうが空気が何倍もきれいだと思うよ(私もロンドンに住んでいるので、空気の汚さには辟易しています)。それにしても「猫アスペルガー」のネコ君が、キャットちゃんと鼻を合わせている写真、ほんとうにかわいいですね。(ネコ君はき「あれは待ち伏せチューだ、襲われた!」って言うかもしれないけれど)気持ちがなごみます。

by ゆーこ 2016-04-12 21:26

私の英語の先生に聞いたら、日本でいう地域猫的な猫たちのことはネイバーフッドキャットって言うそうです。直訳すると「近隣猫」「ご近所猫」ですね。
イギリスには英国王立動物虐待防止協会 The Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals (RSPCA)があるので、困窮者でも非常に安くペットの治療が受けられるし、虐待などもアニマルポリスが厳しく取りしまっているのだそうです。うらやましいです。

森の中でのびのびと暮らしているネコくんにキャットちゃん、いいなあ。いい表情だなあ。素敵だなあ。
会いに行きたいな!

by nona 2016-04-12 23:58

今回も素敵なファミリーですね。 ねこくんがいちごを食べる姿がかわいくて。猫が苦手なねこくんの鼻チュー姿も素敵です。キャットちゃんの「押し」があればきっと仲良くなれそうですね。 うちの猫、もちろん呼んでも来ないけど、諦めたころに知らん顔で足元を通り過ぎ、しっぽで人の足を撫でて行くのがたまりません。ツンデレめ~っ!

by さりゅ 2016-04-13 08:02

>チセママさん

森林浴と同じくらい、おうちの中で愛情を降り注いであげれば、しあわせ度は同じと思います~
ザ・プラウマンは、珍しい西洋野菜も食べられるし、デザートもとってもおいしい! ぜひ。

by 道ばた猫 2016-04-13 10:32

>ゆーこさん

ロンドンにお住まいなのですか! 郊外にはポターの描くトムくんのようないたずら猫がいるのでしょうか。そういえば、トム君もネコくんも、日本猫よりは丸顔のような・・・・。

by 道ばた猫 2016-04-13 10:38

>nonaさん

ご近所さん・・・いいヒビキですねえ。必ず見守る人たちがいて、病気や年取った時はすぐに手が差し伸べられる。日本中のどこでもどんな猫にも、そんな保障を与えてあげたいですね!

by 道ばた猫 2016-04-13 10:45

>さりゅさん

犬のように、ツーカーの即対応でない、自分勝手なところも猫の魅力ですよね! じらされてれて、はぐらかされて、それでも、かわいいなあ~と思う飼い主(笑)。

by 道端猫 2016-04-13 10:49

いちごをうまーいと言いながら食べているみたいで可愛いですね~。
自由猫をみんなで面倒をみる・・日本では夢のまた夢のような気がしてしまいますが、いやいやそれが本来あたりまえのこと!日本も必ずそういう日がいつかくると信じたいですね。
ねこくん、日本へようこそ~。可愛い妹ができてよかったね!

by ちぃこ 2016-04-15 19:36

>ちぃこさん

ネコくん、英国ではパイナップルと梨も食べていたそうで、日本でイチゴの味に目覚めたそうです。
銘柄にはこだわりがあるそうですが(笑)。日本でもパブリック猫がもっと認知されてほしいですね!

by 道ばた猫 2016-04-17 22:28

ねこくん、日本にようこそ。
ねこくんのステキな顔の表情癒されます。
猫としてのプライドを持った生き方をしてるね。
イチゴを方張るときのこりゃたまらんと美食家の一面もありそう。
キャットちゃんときっと仲良くなれますとも。
うちのくらがころを威嚇?してもころはまたまた恥ずかしがっちゃってと気にしないと同じかも。
ステキな猫生活してね。
日本も英国を見習うと言いなと思います、ホントにね。
まわりに幸せをふりまいてね、お幸せに。
応援してます。

by 紫音 2016-04-18 05:56

>紫音さん

ネコくんへの応援、ありがとうございます!
カフェを舞台に、草の根の国際交流。人間も猫も。いい感じです。

by 道ばた猫 2016-04-19 09:47