[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

熊本・大分地方の被災された方たち、そして、家をなくしたり、逃げ出して戻れなくなっている犬猫たちに、一日も早く平穏な日々が戻りますよう。
被災地へのエールも込めて、今週は、町田家の猫たちの物語をご紹介します。



町田家の猫、まずは、キジトラの「恵瑠（える）」くん。ちょっとビビりの甘えん坊で、Ｌ字を描いて2回尻尾が曲がっています。



えるくんのきょうだいでサビ猫の「華菜（はな）」ちゃんは、人懐こくて温和な甘えん坊さんです。
４年前の寒い土曜日に時間を巻き戻してみましょう。

「子猫2匹拾ってきちゃったんだけど」
帰宅したお父さんがそう言ったので、ルカさんは驚いたのなんの。
家族が犬猫を拾ってくるたびに「もう絶対に犬猫を拾うな！」と厳命していたお父さんだったからです。
「もう5匹も猫いるのにどうするつもり？」と呆れる思いのルカさんでしたが、2匹を見たとたん、すぐにこう思いました。「哺乳瓶とミルク、買いにいかなくちゃ」と。子猫たちはあまりにも小さく、あまりにも可愛かったのでした。

お父さんの話は、こうでした。
夕方、畑の中の狭い農道を車で走っていると、前方に子猫のなきがらが横たわっていました。かわいそうに、車に轢かれたようです。
せめて脇の草むらに置いてあげようと車を下りました。
すると、草むらから、子猫が2匹飛び出してきたのです。人恋しい様子から、3匹で捨てられたばかりだったのでしょう。
「ごめんよ、うちにはもう５匹も猫がいて、連れて帰れないんだ。ごめんよ」
2匹に謝りながら、心を鬼にして車を発進。
走りながらも気になってバックミラーを見るや、目を疑いました。なんと、2匹が必死に車を追いかけてきているではありませんか。生まれて程ないのに、ほんとうに死に物狂いのの顔つきで。
お父さんは、すぐに車を停め、2匹を抱いて車に乗せました。こんないたいけな子たちを置き去りになんかできない。即決でした。

仕事から帰ってきたお母さんも「拾っちゃったんだからしようがない」と、ひと目で子猫にメロメロに。



ミルク係は、ルカさん。3時間おきに哺乳瓶で授乳し、お尻を刺激して排尿を促し、夜は一緒の布団で寝ました。
そのせいか、2匹は大きくなった今も、ルカさんに毎日抱っこをせがむ甘えん坊です。
最近になって、お父さんから「連れて帰っちゃえば、お前たちは絶対に飼うにきまってると、あのとき思った」と聞かされ、「やられた～」と思ったルカさんです。

町田家にとっては、11年前によそからもらい受けた白猫の「桜（さくら）」くんと白黒の「柚（ゆず）」ちゃん兄妹が、最初の猫でした。



そのあと、当時はまだ家にいたルカさんのお兄さんが拾ってきた白黒の「桃（もも）」ちゃんが増え、さくらとゆずに可愛がられて育ちました。



さらに6年前には、お母さんが拾ってきた黒白の「紗良（さら）」ちゃんとキジトラの「凛（りん）」ちゃん姉妹が仲間入りして、5匹に。



いくらなんでも、もう増やせない！という状況の4年前に、お父さんが、えるとはなを連れ帰ったのでした。



そして、ももちゃんが旅立った後の去年、ノラ母さんが庭に置いていった兄妹猫、茶トラの「茶々（ちゃちゃ）」くんと黒ネコ「萸憂（くう）」ちゃんを保護して、気がつけばなんときょうだい猫4組、計8匹の多頭飼いに。



「新しい猫は、まず先住猫と別の部屋のケージ、同じ部屋のケージ、ケージから出す、といった手順で徐々に馴れさせていくんです。いちばん古株の白猫さくらが、とっても面倒見のいいお兄ちゃんなので、8匹きょうだいのようにみんな仲良し。眠くなると、自然にきょうだいペアでくっついてますが、何匹かでよく猫団子に もなりますよ」とのこと。



その、みんなから慕われているさくらくん、昨年秋から急に痩せてきて、食欲もどんどんなくなり、嘔吐するように。病院で診てもらったところ、「末期の肝臓がん」と診断されました。
11月の時点で、「このままいくと、余命10日」との宣告。
「残された日々、片時も離れずそばにいて、つらくても目をそらさず看取ろう」という覚悟を決めたルカさん。
だけど、奇跡がおきました。
「自分のチカラで日に日にさくらは回復して食欲が戻り、吐くこともなくなったんです。　痩せてはいますが、8匹の中でいちばんよく食べ、機嫌よく暮らしています」



4月4日、さくらくんはゆずちゃんと共に11歳の誕生日を迎えることができました。
「さくらは、やさしくて強い子です。きっと来年も誕生日を迎えることができると信じています」と、ルカさん。

新しい子猫がやってくるたびに、せっせと毛づくろいをしてやっていたさくらくん。いまは、周りの子たちがお返しにせっせと痩せたさくらお兄ちゃんの背中を毛づくろいしてあげているそうです。



ルカさんは言います。
「死んだきょうだいの分も生きたい！とばかりに、必死で車を追いかけて走り続けたえるとはな。その姿を見て、すぐに手をさしのべてくれた父。そして、いま、明るく頑張って奇跡を見せてくれているさくら。さくらをいたわる猫たち。そんなみんなに感謝でいっぱいです。私、じつは猫アレルギーなんです。一年中、目のかゆ みや鼻水と格闘していて、『もうこれ以上猫が増えるのは勘弁してくれ～』っていうのが本音なんですが（笑）、猫って、どうしてどの子もこんなに可愛くて、いろんな境遇に置かれながらもこんなにも一生懸命に生きる姿を見せてくれるんでしょうね～」