一戸建ての3階、ランドリールームにお目当ての猫がいました。クリーム色でポイント柄、青い瞳のマロンは16歳の女の子。私が大きなカメラを構えて見つめると、そわそわと落ち着かないご様子。少し臆病な性格で、来客には気を許さないタイプだなとすぐにわかりました。
そんなときはゆっくり時間をかけて接するに限ります。撮影もなるべく遠目から、シャッター音にも気を使い、少し撮ったらその場を離れます。
撮影を中断して、まずは飼い主さんにお話を伺うことにしました。
どこか笑っているような。
でもそれは気のせい。
わたしたちの間には一定の距離があります。
マロン16歳
現在、2匹の猫と犬1頭と暮らしている太期(だいご)ご夫妻。この日は奥さまの量子(かずこ)さんと、近くに住む娘さん(ご長女)にも駆けつけていただきました。長女さんの応援は、私としてもたいへんうれしいし、頼もしい限り! なぜならこの連載の「あるある」なのですが、あまりにも昔のことで「幼少期を覚えていない」、多頭飼いの場合は「どっちだか記憶が曖昧」といったことがよくあるからなのです。しかもマロンを乳飲み子から育てたのは長女さんだったようなので、さらに応援はありがたい。
16年前、自宅の裏の空き地で夜が明けるまで泣きつづけた猫がいました。それまでずっと犬と暮らし、猫にまったく興味がなかった太期家でしたが、さすがに翌日の昼まで泣き続けられると気になって仕方がありません。意を決し、雑草をかきわけ声の出所を探すと、いました!小さな小さな手のひらサイズの子猫! その「ネズミみたい」なマロンとの出会いが太期家の転機となり、「猫もかわいいやん!!」といまでは猫も犬も大好きな、我らが猫部の一員に変貌を遂げたのでした。
マロンを保護したとき、率先して面倒を見たのは長女の方でした。生後間もない子猫は3時間おきの授乳が必要だと言われています。当時大学生だった長女は、この問題を「マロンと一緒にキャンパスライフを楽しむ!」というビックリな方法で乗り切ります。
(ここだけの話)紙袋に入れたマロンを大学に連れて行き、授業中はこっそり机にしまいこみ、休み時間に授乳と排せつを促すようにしたのです。たまにタイミングを外し授業中にごにょごにょ騒ぎ出したらさぁ大変!「ウンン」と咳き込んで泣き声をかき消してみたり、事情を知っているクラスメイトにも助けてもらったりと、忙しくも楽しい授業時間と授乳期間だったと回想していただきました。
子猫時代のマロン。携帯電話サイズだぁ!
家には先住の犬が2頭いたので、マロンは姉の部屋で囲うように、まさに「箱入り娘」として育てられたそうです。ああ、だから人見知りちゃんに育ったのかなぁと、ちょっと自分を擁護してみたり......さて、そろそろ撮影を再開しましょう。
いまからそっちに行くよ。
後ずさりするマロンと......、
あれ?
あなたはだーれ?次の章へ続きます。
実は、太期家にはもう一匹の猫又「チビ」がいるのですが、そのお話はまた次回!お楽しみに!
マロンの所作はどこか哲学的。さすが大学に通っただけのことはある。
「
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猫又トリップライター紹介
ケニア・ドイ
1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。
http://kenyadoi.com
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箱入り娘ならではの奥ゆかしさとやさしい顔ですね。日の光を浴びたふかふかの毛並みが印象的!娘さんの子育てエピソードはびっくりですが、案外先生たちもなんとなくわかってたんじゃないでしょうかね、とおもったりします。みんなのやさしい愛につつまれてのんびり猫又ライフをすごしてほしいですね♪
by あずにゃん 2016-05-12 09:52
優しい、仏さまのようなお顔でした。長女さんの同級生もこれを見て懐かしく思っていることでしょう。「みんなのやさしい愛につつまれて」というのは本当にその通りだと思います。
by ケニア・ドイ 2016-05-13 07:37
マロンちゃんの優しいお顔だちとふわふわの毛並みがとっても素敵ですね。周りの皆さんの愛情につつまれているのが伝わります。
ケニアさん、これからも心あたたまるエピソードを伝えて下さいね。楽しみにしてます♪
by こじぴ。 2016-05-15 10:07
こじぴ。さん
マロンさん、優しい顔してますよねー。
(でも初対面の人には塩対応…おさわりできません)
ご声援ありがとうございます!次回もお楽しみに!!
by ケニア・ドイ 2016-06-16 11:37