「ひろって! ひろって!」と通行人に来る日も来る日も営業する、小さな野良猫がいました。そんな様子をいつも遠巻きに見ていたけれど、その日、猫は自分の足元に擦り寄ってきて......。
1年後にあらわれた猫
それは飼い主の村山さん(仮名)の奥さまの通勤路でのこと。次に猫を飼うなら三毛猫がいいなぁという奥さまの想いを見透かしたかのように、その猫はやってきました。1年前に先代猫の「ともこ」がなくなり、ペットロスも経験しました。それでも目の前のご縁を大切にと、ご夫婦はその猫を保護することに決めたのです。
チラっと。
お気づきかもしれませんが、まだまだ猫と距離感があります。どこまで仲良くなれるかな?
猫は人慣れしていたこともあり簡単に捕獲することができました。しかし家に連れて帰ると一変、「ここはどこ?あなたはだーれ?」とパニックを起こし、ずいぶんと部屋の「隅っこ」にろう城したそうです。そんなこともあって名まえは「すみこ」に決定。保護して16年(だから推定16歳)が経つこの日の取材でも、その片鱗を私にも見せつけてくれました......。ご夫婦のインタビュー後、いざ撮影!と意気込んでみたものの、一向に部屋の隅っこから出てきません......。いやいやいや! 普段はリビングでくつろぐって! 書斎ではアクティブに動き回ってじゃま猫になるって、聞いていたけど!?『動け!動いて!どうか動いてください!』
でも今日は気分が乗らないみたい。......日を改めるとします。
隅っこが大好きなすみこです。
すみこの取材は、私の友人のキャットシッターを通じて実現しました。友人から「警戒心がなく、マイペースで甘えん坊よ」と聞いていたので、カンタンに取材が行えると踏んでいたのですが......、まだまだ私に修行が足りなかったようです。キャットシッターさんって一体どんな手を使って初対面の猫さんと仲良くなるのでしょうか?ごはんのお世話をするから仲良くなるの?すみこの攻略法を聞いておけば良かったなぁ。
すみこの食生活
16歳にもなると勢い良く一気に完食とはいかず、間隔をあけながらの食べ方に変わっていきました。朝はドライフード、夜はウエットフードの2回。昔はウエットフードの方が好みだったみたいですが、いまはドライフードの方をよく食べるとのこと。ご長寿であるひとつの要因に、腎臓ケアのフードを早めに導入していることが考えられます。かかりつけの獣医師さんと相談の上、今後悪くなるであろう腎臓に早めの対策をとれたのは、キャットシッターの『水をすごく飲みますねー』という何気ない一言から。第三者の存在、キャットシッターならではのナイスアシストもあったのですね。
ごはん!
ごはんの場所。
水と猫草の場所。
箱があれば、
入っちゃうよねー。
2度目の訪問でわかったこと
撮影日を改めた結果、旦那さまの膝の上でリラックスするすみこ、村山家の日常を見ることができました。さらには一緒に映画を楽しむ姿も。奥さまいわく、すみこが真剣に見入る映画は芸術的にとても評価が高く、商業的にも大ヒットする作品になるそうで「評論家猫」として家族は一目置いているそうです。
お互いの趣味が合い、特に猫扱い・子ども扱いするわけでもなく尊敬し合える仲、こんな関係もええなぁ。
お互いのペースを尊重し干渉しないこと。そして、第三者(キャットシッター)の目もあってすみこは隅っこで長生きする!それがズバリ!答えですね。
映画に見入るすみこと旦那さま。
同じ趣味があるっていいなぁ。
なんとも味のある顔のすみこちゃん。好きなタイプだけにきみに2度会えてうれしかったぁ。
「
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写真
猫又トリップライター紹介
ケニア・ドイ
1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。
http://kenyadoi.com
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