アメリカでは、8月17日が「Black cats appreciation day」として定着してきているのだとか。「appreciation」とは、真価(を認める)とか感謝という意味。つまり、「黒猫感謝の日」ということですね。
その背景には、「黒猫は魔女の手下。不吉だ」という迷信に長いこと虐げられてきた黒猫たちへのお詫びもまじっていて、いまなお一部の人が持つ「黒猫は気味悪い」という偏見のために、里親探しで売れ残りがちな黒猫の魅力を世に知らしめるためもあるようです。
わが家の菜っ葉ちゃんをはじめ、私の知ってる黒猫さんはみな、温和で、ミステリアスで、賢い子ばかり。光の加減でチョコレート色にも見えるビロードのような色艶は、ほんとうに見飽きぬ美しさです。
黒猫2匹を抱っこしているこの背中の主も、黒猫をこよなく愛する男。念願叶って、「黒猫感謝の日」を前にした7月末に、保護猫を2匹一緒にもらい受けたばかりです。
前に回ってみると・・・。
おやおや、両手に花ならぬ、両手に猫で、ほんとうに嬉しそう。米国から来日して4年半のジオさんです。
右手に抱いているのが、オス猫のアヌビス。左手に抱いているのが、メス猫のトトです。もうすぐ4か月のやんちゃ盛り。掛けてあるネクタイを片っ端から落としてくわえて走り回ったりもしてくれました。正面から見ると、2匹は見分けがつかないので、尻尾で見分けるそうです。かぎ尻尾がアヌビスで、ふつうの曲がり尻尾がトト。
「アヌビスはちょっとかまってちゃん。トトはツンデレ。それぞれに可愛い。黒猫感謝の日には、みんな自分の飼ってる黒猫自慢をネットでして盛り上がるのだけど、もちろん、ボクもこの子たちの写真をアップして『いいね』をたくさんもらったよ!」
ジオさんは、やはり猫好きのとうこさんと一緒に暮らしています。
知り合った当初、外国人のジオさんが黒猫好きで、猫又や化け猫伝説などにもとっても詳しいことに、とうこさんはびっくりしたそうです。
それもそのはず。ジオさんは、子どもの頃からどんな猫とも仲良くなる大の猫好きなのでした。
「僕の育ったカンザス州の家には、いつも猫たちがいて、多い時は家の内外合わせて15匹いたことも。毎日、猫餌を納屋に持っていくのが僕の役目。学校からの帰りには、道ばたでボクを見かけた外猫たちが『あ、ジオが帰ってきた』とぞろぞろあとをついてきてた(笑)」
そんな猫好きジオ少年が、中でも一番愛したのは黒猫。
「子ども心に、こんなにも愛らしいのに、いわれもなく嫌われている黒猫がかわいそうで味方をしてやりたかったから」だとか。
高校生の時にホームスティをして日本が好きになり、大学時代に一年間の留学来日。大学を卒業して日本にやってきたのですが、猫のいた実家から離れて、4年以上にわたる「猫のいない生活」は我慢の限界でした。
とうこさんと暮らし始めてからは、いつも二人で「猫飼いたいね~~」。
外で、猫を見つけると、『猫ちゃん、猫ちゃん、うちにおいで~~』と見境いなくコナをかけまくってたジオさんでしたが、アパートはペット禁止。禁断症状を見かねた親切な不動産屋さんが、ペット可の今の部屋を見つけてくれたのでした。
「飼う時は、ノラか、保護猫を迎えようと思ってました。でも、この辺はノラはいなくて、保護猫の里親募集のネットで探し始めて最初に目に飛び込んできたのが、この黒猫兄妹だったんです。ジオも私もひと目で気に入りました」と、とうこさん。
アヌビスとトトは、都内下町でノラをやっている長毛三毛母さんがどこか物陰で産んで、餌を食べに通っていたカヨコさんの庭に運び込んだ子猫たちのうちの2匹。カヨコさんは、前から母さん猫を避妊手術させようとしていたのですが、しばらく姿を見せず、現れた時にはお腹が大きかったのでした。母猫は、玄関横に子育てスペースを作ってもらい、6匹を育てました。
カヨコさんは、文京区の保護活動団体「ぶんねこの会」の人たちの助けを借り、母猫は手術して元に戻し、保護した子猫5匹は里親を募集。(子猫1匹だけはどうしても捕まらず、今も母猫と暮らしています。大きくなる前にTNRする予定です。)
保護したうちの3匹は次々にもらわれていき、黒猫2匹が残りました。
すでに自宅には保護猫が2匹いるけれど、残った子猫2匹の里親が見つからない場合は、うちの子にするしかないかな・・・とカヨコさんは肚を決めていたそうですが、そこへ現れたのが「黒猫2匹ともください」と申し出た、天使のようなジオさんととうこさんだったのでした。
「黒猫が2匹やってきたよ」と、嬉しくてたまらないジオさんはさっそくアメリカのご両親にメール報告。
猫好きのお父さんの返信は、こうでした。
「I Iove them(僕だってその子たちを愛してるさ)」
猫好きのお母さんに返信は、こうでした。
「Grand child!(私の孫だわ!)Of course black cats!(やっぱ、黒猫だね!)」
ジオさんの黒猫好きは遺伝だったようです。
思わず、私はジオさんに聞いてしまいました。「猫バカって、英語でなんというんですか?」
ジオさんはちょっと誇らしげに答えました。
「Cat feverまたはcrazy for catsかな。ボクは、cat fever(キャットフィーバー・猫の熱烈愛好者)でもあって、Cat whisperer(キャットウィスパラー・猫の行動や心理がわかる人)でもある。ボクの故郷ではノラをいじめる人なんていなくて、いろんな家の庭に大きな餌皿が置いてある。犬猫の殺処分はほぼゼロに近づいていて、身寄りのない猫たちはセンターで終生安心して暮らせる。世話をするボランティアはいっぱいいて、ボクの父さんも猫餌をたくさん持参してよく通ってるよ。日本では猫ブームだけど、ノラも捨て猫も差別なく愛されてしあわせになってほしいな」
「兄妹で遊んで留守番ができるから、兄妹でもらってほんとうによかったです。アヌビスとトトは永遠の家族。仕事中もこの子たちのこと考えると、早く帰りたくて」と、とうこさん。「でも、2匹は、ジオの膝やお腹の上がたっぷりと広いから、彼のほうがお気に入り。うらやましい~」
ジオさんととうこさんのおうちでは、これからずっと末永く毎日「黒猫感謝の日」が続くようです。
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
Instagram
我が家も黒猫兄弟2匹(6歳)います!
生後すぐに捨てられていた4匹を保護、2匹はもらわれてゆきまして、残った2匹が黒猫でした。
黒猫は温厚、人懐っこいといいますが、まさしくです。ビロードのような毛並みがたまりません。
近所のおばあさんに「黒い犬、黒い猫は家が栄える」と言われました。幸運を運んでくるんですよ!
難点は…夜見にくくて、踏んでしまうことかな( ;∀;)
by みゆきママ 2016-09-06 15:55
私がもの心ついた頃、父が酔っぱらった勢いで近所から連れてきたのが黒猫でした。とても愛着があります。寝るときもどこに行くのも一緒でした。自分で初めて飼うことになったのも黒猫です。懐かしいですね。今はなぜかキジトラばかり。トラトラトラ+トラしろ。黒ちゃんいいなあ♡
by ぺったんの母 2016-09-06 16:51
我が家にもいました。可愛い黒猫が、お母さんは前に書いた(あらら~)のくろさんです。本当に甘えん坊で、どこに行くのもついてきました歩くときは気をつけないと足下にすり寄って来るので踏まないように注意したものです。ある日突然行方不明になり、方々探しましたが見つかりませんでした。名前は(坂本九)さんのファンであるために、(キュウボウ)でした。
by ふみちゃん 2016-09-06 21:03
日本では爪の黒い黒猫は福猫と呼ばれて、大事にされていたんですよね。
かの夏目漱石も福猫愛好家で、歴代爪の黒い黒猫を飼っていたそうです。
海外の文化が入ってきて日本の黒猫も肩身が狭くなりましたが、みんなが昔を思い出してくれたらいいな。
我が家にも元福猫がいます。年を取って毛並みに白髪が混じり始め、爪はほとんど白くなってしまいました。いまでは福猫ではなく、ただの黒猫です。
17歳ですが、心は子猫の甘えん坊です。
by すいすい 2016-09-06 21:19
最高のおうちが見つかってよかったですね
ジオさんが本当に嬉しそうで、こちらまでほっこりします
by さりゅ 2016-09-07 01:48
>みゆきママさん
たしかに夜は見えにくい(笑)。闇にまぎれて敵に襲われにくいから、性格が穏やか、という説もあるそうです。兄弟で2匹、しあわせですね!
by 道ばた猫 2016-09-07 05:56
>ぺったんのお母さま
トラトラトラ+トラ白、それでも黒も欲しい! 気持ちわかります。
すべての毛色の猫と一度に一緒に暮らせたら楽しいでしょうね~
by 道ばた猫 2016-09-07 06:02
>ふみちゃんさん
いなくなった猫は、いつまでも切ないものです。私にも覚えがあります。昔、ふっと消えてしまった猫、今でも、ひとめ会いたいです。
キュウボウ、人なつこいから、どこかの家猫になっていたらいいですね・・・。
by 道ばた猫 2016-09-07 06:08
>すいすいさん
うちの菜っ葉(市民農園で菜っ葉を食べて生き延びてた)も、全身黒い(ひげも爪も)福猫です。おまけに、白黒の福猫も、三毛の福猫も、サバ白の福猫までいるんですよ(笑)
by 道ばた猫 2016-09-07 06:14
>さりゅさん
そうなんです! ジオさんもとうこさんも、ほんとうに猫を見る目や抱く手つきがやさしくて、いい笑顔のカップルでした。保護主のカヨコさんは、二人に会うなり、「この人たちにもらってもらいたい!」と
心から思ったそうです。
by 道ばた猫 2016-09-07 06:18
ジオさんのがっちりした腕が、優しく優しく大切にアヌビスくんと、トトちゃんを抱いているのが伝わりますね。可愛くて仕方がないっていう感じで微笑ましいです。
黒猫の私のイメージはとにかく賢い!今は白毛が我が家を占めているので、つやつやの毛並みの黒毛がちょっと恋しいです。
by ちぃこ 2016-09-07 20:17
>ちぃこさん
そう、手が指が「かわいくてタマラナイ」って物語ってますよね~
白猫は白猫で、また、おっとり・不思議キャラのチャーミングな子が多いような・・・。
白毛Zたちを、つやつやの白毛にしてください。あ、目立たないか(笑)。
by 道ばた猫 2016-09-08 07:47
2年前、取材して頂いた黒猫のミキティこと、みきちゃんの母です!…我が家の黒猫みきちゃんは、とても心優しくて、娘の友達で猫が苦手な子が居ましたが「みきちゃん可愛いなぁ」って言ってくれます。こちらの目をしっかり見つめて、とても賢いです!真っ黒な毛並みも綺麗です!黒猫が不吉だなんて!みきちゃんは、我が家の幸運の女神です!癒しです!元気の元です!
by どんみきの母 2016-09-08 21:39
>どんみきの母さん
なつかしい! アサミちゃん、どんぐりちゃん、みきちゃん、みなお元気ですか~ みきちゃん、ほんとに優しくて、聡明な猫さんでした! ジオさんと同じで、アサミちゃんの猫を抱く手がとっても大事そうだったのが、目に残っています。
by 道ばた猫 2016-09-09 06:39
自宅と会社で複数猫飼っている、猫好きです。
何匹か黒猫もいて、他の毛並みに比べて黒猫は甘えん坊の傾向が強いように感じます。だから余計に可愛いのかも(笑) 艶々な毛が冬の陽射しで銀色に輝くのがとっても綺麗だなといつも思います。
黒猫に限らず、みんな猫さんたちが幸せになりますように!って、いつも願っています。
by ねこますたー 2016-09-12 10:08
>ねこますたーさん
自宅にも会社にも複数猫のいる猫持ちさんですか! いいなあ。たしかにうちの黒猫はひっそりべっちゃり甘えてきます(笑)。ほんとうに、毎日をすべての猫に感謝の日にして、しあわせになってほしいですね~
by 道ばた猫 2016-09-12 22:46
我家にも、黒猫のくぅちゃん4ヶ月の男の子が居ます!
とても、甘えん坊でいつも誰かの指をチュパチュパしています。
我家の王子様、黒猫最高です‼️
by 久美鯉 2016-09-14 09:28
>久美鯉さん
いつも誰かの指をチュパチュパの王子さま、くぅちゃん! 可愛い盛りですね~ 目に見えるようです。
ずっと仲良く、おしあわせに!
by 道ばた猫 2016-09-17 02:17
野良の黒猫を飼って一年間3ヶ月、野良だったとは思えない位に大人しく、甘えん坊で、お行儀がよく、可愛さしかありません。猫を初めて育てましたが毎日が幸せです。ありがたいです。皆の猫ちゃんが幸せであればと願わずにはいられません。
by はくちゃん 2016-10-26 20:07
>はくちゃんさん
わが家の黒猫菜っ葉ちゃんも(農園で大根の葉っぱを食べて生き延びていたノラ)、元ノラとは思えない甘えん坊で温和な子です.はくちゃんさんちの黒猫さんも毎日いっぱいしあわせをくれているのですね!
ほんとうに猫たちが皆しあわせに暮らせますように。
by 道ばた猫 2016-11-27 22:28
この黒猫きょうだいと出会ってから早5年、その節は私達のことを取り上げていただきありがとうございました。その後、この黒猫たちと共に祖国へ戻りましたが2匹とも変わらず元気に過ごしています。今日こちらでは黒猫感謝の日です。黒猫含め全ての猫たちが幸せに長生きしますように!
by とうこ 2021-08-18 06:44