さら造くんは、15歳。
カメラマンの光造さんとダンサーの香織さんご夫妻の愛猫です。
さら造くん、何やらただものならぬ顔つきの猫さんですね~
それもそのはず、彼は当家の一大事を救った忠猫なのです。
まずは、さら造くんがこの家にやってきた15年前のお話から。
あるお寺の奥さんのところに、一人の老婦人がふとやってきて、こう言って去っていきました。
「そこの公園に子猫が3匹捨てられてるわよ」
気になって奥さんが行ってみると、茶色い紙袋がありました。
口は開いていて、中をのぞくと、黄色っぽいハンカチがクチャッと入っている・・・と一瞬思ったのですが、よく見ると、生まれたばかりの黄色い仔猫でした。3匹と言っていたはず、と、辺りを探しましたが、その子以外は見つかりませんでした。
その子は、「沙羅那」という名を付けてもらって、お寺の子になりました。「沙羅双樹」と「那由他」という仏教ゆかりの漢字を組み合わせた、「平らかにする」という意味合いの深い名前です。
いろいろな事情から、沙羅那くんは、お寺で飼えなくなり、奥さんの友人たちが懸命に里親探しをしたものの、どうしても貰い手が見つかりません。
友人たちの一人が、香織さんでした。
香織さんは、ペット可のマンションに移ったばかりで、犬を飼おうと張り切って犬探しをしている最中だったのですが・・・。
沙羅那くんの里親がどうしても見つからないので、「え、ワタシ?」という感じで、迎え入れたのでした。
「うちに来ると決まる前に、里親探しの相談で、はじめて子猫がうちにやってきたときのこと。まだ2カ月たってなかったころでしたけど、ソファーで寝ている旦那の首の下から出たり入ったり。あれで、旦那はノックアウトされてしまったみたい」
光造さんの家では代々男の名前には「造」がつくので、「さら造」と改名。
光造さんも香織さんも猫を飼うのは初めてなので、お互いどう付き合っていいか、手探りの同居となりました。
さら造くんが一歳になったばかりの頃。
香織さんは仕事で不在で、光造さんがお留守番中のある夜、光造さんはぐっすり眠っていました。
すると、さら造が「みゃ~~~おお、みゃ~~おお」と雄たけびのような鳴き声を始めました。光造さんは眠いので放っておきましたが、鳴き声は「ウギャア、ウギャア」とますます騒がしくなるばかり。
「もううるさいな、何!」と光造さんが身を起こすと、さら造くんは大騒ぎしながら、キッチンに走り、また戻っては、キッチンに走り・・・何往復もするのです。
あーーー! やっと気づきました。光造さんはやかんに火を点けたまま、忘れて寝てしまったのでした。
やかんはからっからになっていて、持ち手やふたのボッチの木の部分は焼け焦げていました。まさに火事寸前だったのです。
でかした、さら造。素晴らしい恩返しですね。以来、忠猫さら造と呼ばれるように。
香織さんいわく、
「さら造が小さい頃は、ダンスしながらステップの間を飛ばす『サーカスごっこ』や、腕に布を巻くとガブガブ噛んでいい『警察犬ごっこ』とかして遊ばせていました。これって、犬の育て方でしたね(笑)」
家族は、もう一匹。動物プロダクション所属で「女優」業をして引退後に引き取った、陸ガメのジニーさん。毎年、大きな無精卵を一個産むそうです。これも、彼女なりの恩返しのつもりかな。
ご夫妻が八ヶ岳の別荘に行くときは、さら造くんも同行します。
山のなかでは、野性が戻り、ふだんは見られない自立心が出るのだとか。
さて、水族館などのショー演出も手掛けるダンサー香織さんの日々を追ったドキュメンタリー映画「ダンスの時間」が、いま、渋谷のシアター・イメージフォーラムにて公開中。この後、全国順次公開となります。
監督は野中真理子さん。カメラは、香織さんの旦那さまの夏海光造さんです。
そして、なんと、映画の最後に流れるテロップには、出演陣に「猫のさら造」の名前も!
これが、さら造出演シーンです。
映画のパンフレットには、こうあります。
「ダンスとは、感じること。生きることを肯定すること」
猫だって、草だって、水族館の魚だって、ダンサーなのだとこの映画は語りかけます。とっても心地よい映画です。
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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さら造くんえらいなあ~。ワンちゃんが火事を知らせてご主人を助けた話はよく聞きますが、ニャンコも出来るんですね。ちゃんと恩返ししてますね。感動です!香織さんのさら造くんに注いでいるやさしいまなざしが伝わってきます。
by ぺったんの母 2016-09-27 16:30
素晴らしいです‼こんなこと犬だってなかなかできることではありません。我が家にも犬がいますが、彼女には鳩やカエルを吠えることぐらいしか出来ないです。今月の3日はそらの命日でした。あの頃は立ち直ることができる自信がありませんでした。でも、佐竹さんの優しい言葉や、大好きな小田和正さんやその身内の方の暖かい励まし、そして家族の愛情のお陰で何とかやってこれました。そらには、もしもまだメソメソしてたら、遠くから叱って欲しいです。
by ふみちゃん 2016-09-28 00:10
さら造くんお手柄でした! いろんなことを見透かしているようなグリーンの瞳と貫禄のある表情が素敵です。お年を感じさせないイケニャンですね。
by さりゅ 2016-09-28 01:14
>ぺったんのお母さま
ウギャアウギャアって、「寝てる場合じゃねえよお」って言ってたんでしょうね(笑)。
頼もしいです。もう、一人格という感じです。
by 道ばた猫 2016-09-28 09:50
>ふみちゃんさん
忘れえぬそら君との思い出にプラスして、また現在の犬猫家族との楽しい思い出を描き足していってください! 愛しすぎるからこそ切ない・・・猫好きの宿命でもありますよね。
by 道ばた猫 2016-09-28 09:56
>さりゅさん
とっても味のある賢そうな猫さんでした。
期間は短かったけど、お寺で修業を積んだのでしょうか・・・。
by 道ばた猫 2016-09-28 09:59