大阪での仕事が夕方終わり、夜の新幹線まで3時間。
向かったのは、中崎町。昭和レトロな路地風景の残る大好きな町です。
そこで、とびきりキュートな看板猫に会いました!
少し開いたガラス引き戸から宵の路上にオレンジ色の灯が漏れて、店先の緑が手招きしているような「ピピネラキッチン」。
そこで迎えてくれたのは、黒猫しじみちゃんでした。
築100年のこの古民家カフェに住むしじみちゃん。左耳カットのさくら猫さんみたいです。
人なつこいこと、この上なし。足元で「にゃあん」と愛らしい声で鳴いて見上げます。
「人間大好き、猫嫌いの子なんです」と、店主のゆいこさん。しじみちゃんがやってきたときのこと聞かせてくださいました。
6年前のある夜。
ゆいこさんが店じまいをして帰ろうと引き戸を開けると・・・お店の真ん前にちょこんと座っていたのは、小ぶりの黒猫。
界隈の路地猫のTNRを続けていて、中崎猫たちはみな顔なじみですが、この子は見たことがありません。
「お腹空いてるの?」と、てのひらからごはんをあげたら、警戒心もなく手から食べるではありませんか。
飼われていた子が捨てられたのだと思いますが、ゆいこさんは笑って言うのです。
「きっと神様から、あのお店にお行きと言われて、訪ね当ててきたのだと思うの。ほんとうにそんな感じで座っていました」
とりあえず保護しなくちゃ。
でも、困った! 家にはすでに保護猫が3匹。この店は、ペット不可の物件です。
そこでボランティアの方に一時預かりをしてもらって、TNRをすることに。
ところが、しじみちゃん、大の猫嫌いで、預かり先の猫たちとうまくいきません。それに、こんなにひとなつこいと、路上生活では虐待や連れ去りなどが心配です。
そこで、ゆいこさんは、京都在住の大家さんに手紙を書きました。「しじみちゃん1匹だけ、店で面倒を見させてはもらえないでしょうか」
答えはOK。
きっと真心のこもった手紙だったのでしょうが、話のわかる大家さんですね~
店猫になったしじみちゃんの恩返しが始まりました。
「いらっしゃいませ」のごあいさつ。
いちばん賑わうランチタイムには客席をまんべんなく回って、膝の上にぴょこんのわけへだてない大サービス。
帰る時にはお見送り。戸が開いていてもけっして外には出て行かないという、看板猫にぴったりの子だったのです。
チャームポイントは、2本の八重歯。
「多岐川裕美に似てるでしょ」って、ゆいこさん。
ゆいこさんは、6年ほど前から、路地猫たちの避妊去勢手術を個人で続けてきました。その数、なんと70匹!
町内会長さんに町ぐるみの地域猫活動を頼みましたが、当時は理解してもらえず。やっと最近、協力体制がスタートしたところです。
保護猫の譲渡会も定期的に開催してきました。(現在いったん休止中。また再開の予定)
店内で売られているしじみちゃんイラストのチャリティーバッジは、どうぶつ基金に寄付されます。
この次はゆっくり昼間に来て、すぐ売り切れるおいしいと評判のおばんざいランチを食べなくては!
見送るしじみちゃんに後ろ髪ひかれつつ、走ってもう一つの目的地「空堀商店街」へ。
再会したい猫がいるのです。
4年前の初冬、空堀を歩いていたとき、目に入ってきたのが、開店間もないカレー店「旧ヤム邸」の店先の手書き板。
「2階にはたろうがいてます」
あのときは、たしか猫のイラストは描いてなくて、「たろうって、犬? サル? 人間の赤ちゃん? もしかして猫?」と気になり、
お店に入って「たろうって、誰ですか」と聞いたのでした。
「猫です。その辺をうろついていて、保護したばかりなんです。ふてこい子ですが、よかったら会ってやってください」との返事に、ほかに客のいない2階で小さなたろうをかまいながら、カレーを食べたのでした。
あのたろうくん、どうしているかな。噂では、立派な看板猫になったとか。
おお、なんと味わいのある風格ある猫に。
1階は賑わっていますが、わざわざ2階に上がる人はそんなにいないと見えて、またもやたろうくん独り占めの至福の時間。
「たろうくんのちびっちゃい時、知ってるんんだよ。また会いに来たよ。立派になったねえ」と話しかけると、向かい側のソファに座って、じっと耳を傾けていました。
天井裏や大きな梁のある2階で、自由自在に過ごすたろうくん。まるで、ジャングルの王者のようです。
お店のHPには、オーナーがこんなことを書いていらっしゃいます。
「開店する前の、(夫婦で)手作りの内装作業中にどこからともなくあらわれた、一人ぼっちの子猫。その子、たろうを迎え入れ、店と共に成長していくことにしました」と。
短い大阪散歩でしたが、こんな路地猫にも会いました。
植木鉢の陰にはきれいな水と猫ゴハン。
声をかけると立ち止まって「にゃあん」と答えてくれるなつこい子たち。
「あれま、こんなおへちゃな子でも写真撮ってくれるの。よかったね、クロ、もっとええお顔せな」と、路地の住人。
大阪の下町には、「猫可愛がり」という言葉がぴったりの猫愛が漂っていました。
・ピピネラキッチン
大阪市北区中崎3-2-10
月曜定休
・旧ヤム邸
大阪市中央区谷町6-4-23
月・第2火曜定休
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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関西弁がほんわかなじむ路地裏に、路地猫たち。一緒に暮らしているのが当り前な雰囲気がいいですね。みんなこころがあったかい。
猫の天国ですね~~
by あずにゃん 2016-10-04 16:52
猫と人が幸せに一緒に過ごせるお店に街、心が温かくなります。その影には、たくさんの手術や町内での説得、里親探しなどもあってこそ、ですね。素敵なお店なのに。。。遠いのが残念です。
by さっちゃんママ 2016-10-04 18:35
可愛い子がたくさんいますね~
by ふみちゃん 2016-10-04 19:47
途中できれてしまいました。すみません。本当にどの子も可愛いですね。大阪は優しい人が多いのでしょうか。どの子もみんな、安心して暮らせる町であって欲しいです。
by ふみちゃん 2016-10-04 19:52
>あずにゃんさん
私の経験では、よそ者に親切にしてくれる町は、たいがい野良にもやさしい町でした。
大阪は、道を聞くと、一緒に歩いて教えてくれます~ 東京では地図に描く人が多いけど。
by 道ばた猫 2016-10-05 00:05
>さっちゃんママさん
そうですね~ 路頭に迷う猫をなくすために、いろんな人がいろんな町でいろんな努力をしてくれているんだと思います。
by 道ばた猫 2016-10-05 00:10
>ふみちゃんさん
路地を共有する町文化が根付いているからか、外猫もけっこう悠然と暮らしていました。その土地に合った可愛がられ方でみんな安全に暮らしてほしいですね~
by 道ばた猫 2016-10-05 00:19
しじみちゃん、名前とぴったりの可愛いにゃんこですね。ゆいこさんの保護活動には頭がさがります。
路地裏のにゃんこ達は愛情たっぷりもらっているのですね。みんないいお顔してますものね。いいお話ありがとうございます。
by ぺったんの母 2016-10-05 10:14
>ぺったんのお母さま
はい、みんないいお顔でした! しじみちゃんはいかにも女の子らしい可愛さで、たろう君は人生相談受け付けますみたいな頼もしさでした~
by 道ばた猫 2016-10-06 04:40
ピピネラキッチン、今日行ってきました(^^)
店主さんからこちらのブログのことを聞いて見にきました♩
しじみちゃんはほんとに懐っこい子で、可愛いお腹を見せてなでなでさせてくれて嬉しかった〜!
地域みんなで猫たちを見守っていることをこちらのブログで知れて中崎町がますます好きになりました(*^_^*)
by たま 2016-10-08 22:27
しじみ母、ピピネラyuicoです。
ご挨拶とお礼が遅れまして申し訳ありません。
こんなに素敵な記事にして下さって大感激しております。
いつもは写真写りあんまり良くないしじみちゃんが
どの画像もホントに可愛くて・・・
本当にありがとうございます。
またお目にかかれる日を楽しみにお待ちしております。
上に書き込んで下さったたまさん、今日はありがとうございました!
またしじみちゃん撫で撫でしに来てくださいね(ノ´∀`*)
by yuico 2016-10-08 23:05
>たまさん
ほんとうに、しじみちゃんは看板猫の鑑ですよね!
夜の黒猫もミステリアスですが、昼間のよく働くしじみちゃんにもまた会いたいです。
by 道ばた猫 2016-10-11 01:10
>yuicoさん
猫話、楽しかったです。
中崎町は、子どもの頃に遊んだふるさとの路地の懐かしい匂いがしました。また、寄ります!
by 道ばた猫 2016-10-11 01:17
今日は しじみちゃん に会えて、とっても癒されました(^O^)
猫大好きの私たちは、ついつい しじみちゃんの可愛さに足が止まってしまいました!
また会いに行きます(^^)
ランチも美味しかったです!
by まっこい 2016-10-19 15:00