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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2016年10月25日

信州の猫館長さんその2・・・・椋鳩十記念館のむくにゃん

長野県天竜川の河岸段丘上にある、昔ながらののどかな美しい村喬木(たかぎ)村。
ここには、村の出身である児童文学者の椋鳩十(むくはとじゅう)さんの村立記念館(図書館と村民ギャラリーを併設)があります。
秋晴れの午後、そこを訪れると、なんともフレンドリーな茶トラさんが迎えてくれました。

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猫館長さんの「むくにゃん」氏です。推定年齢は3歳。正式に任命されて、人当たりよく働き、報酬(猫ゴハン)を得ている猫なのですよ。
大原館長さんにお聞きすると、「もともとは迷い猫だった」とのこと。

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今年1月22日の朝、スタッフが出勤すると、駐車場の車の下から、見たこともない茶トラの猫が走り寄ってきました。粉雪が舞う寒い朝のこと、寒さでブルブル震えています。
あまりのひとなつこさに、どこかの飼い猫の猫かと、しばらく様子を見ましたが、猫はどこにも行かず、人を見てはにゃあにゃあすり寄っています。

それで、いったん館で保護し、飼い主を捜しましたが、わかりませんでした。軒下に段ボールを置いてやり、日中は温かい芝生の上で過ごすように。
そのうち、来館者の人気者となり、「館の猫にして」という子どもたちの要望もあって、猫館長にしようという動きとなりました。
「いろんな方の集まる場所ですから、最初は館内には入れないようにしていたのですが、皆さん可愛がってくださるので、館内出入り自由にしました。苦情はひとつもありません。猫アレルギーのお子さんが来館する時は、むくにゃんには外回りしてもらってます。今は、私と一緒に車で出勤して、一緒に自宅に帰ります」と、大原館長さん。

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館内にあるむくにゃんアルバムには、保護当時の写真がありますが、今の堂々たる面影はなく、心細げです。

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猫館長就任の正式辞令は、4月1日。
芝生の上で行われた任命式では、職員と子どもたちが見守る中、猫館長という要職を任命されたむくにゃん氏は、お祝いの猫ご飯を食べるのに夢中だったとか。
ちなみに、人事通知書ならぬ「猫事通知書」に書かれている業務内容は「図書館利用者への接待や各種イベントへの参加」とあります。人間大好きで物おじしない猫館長のこと、イベントはさぞかし盛り上がることでしょう。

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お天気の良い今日も、芝生の上で昼ご飯をもらって、食べた食べたとご満悦。そばにある「猫館長の椅子」は、大原館長さんの手作りです。

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食後は、猫館長専用通路を通って、ちょっとそこまで見回りに。

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「すぐ下の畑の持ち主さん、隣の校長さん宅、ともに、むくにゃんが立ちいってときにはおトイレを済ませてしまうことを、了解を得ています」とのこと。村を挙げて愛されている猫館長さんなのでした。 

館内には、大原館長の愛情こもった手作りの猫ハウスがあるのですが、「あんまり入ってくれなかった・・・」と、館長さん。

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なぜなら、むくにゃん館長のいちばんのお気に入りの場所は、大原館長の膝の上らしいのです。

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「仕事にならん」と言いながらも嬉しそうな大原館長さん。こんな話をしてくださいました。
「むくにゃんにまつわる不思議が3つあるんですよ」と。

1つ。むくにゃんがやってきた1月22日は、椋鳩十の誕生日だったこと。
2つ。鳩十の代表作の一つである「モモちゃんとあかね」は、長女あかねさんが飼っていたモモちゃんという猫が主人公での実話で、老いゆく猫との絆が描かれています。単行本のイラストは青い目の白猫なのですが、実際のモモちゃんは、茶トラだったとのこと。
3つ。むくにゃんがやってくる前からあった、記念館のキャラクターは、メガネをかけた茶トラ猫「むくにゃん」だったこと。

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「むくにゃん、かわいい~~」と、図書館にやってくる子どもたちにすぐ囲まれてしまうむくにゃん。
むくにゃんがやってきてからの来館者数は一気に倍増したそうです。

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「猫館長に親しんでもらうことが、人と動物の間に通い合う愛情を描いた鳩十文学に、より親しんでもらうきっかけになれば」と、館では願っています。
鳩十の辞世の詩は「松風になりたい」ですが、願い通り村を吹き抜ける松風になった鳩十さんが、さまよっていた茶トラを「人と猫の共生のシンボル」としてわが記念館へいざなったのでは、と思えてきました。

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【椋鳩十記念館・記念図書館】
長野県下伊那郡喬木村1459-2
火曜~日曜 10時~18時(土日は17時閉館)


写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

椋鳩十 懐かしです
たしか小学校の国語の教科書に「片耳の大シカ」が載っていて、図書室でほかの本も読んだ記憶が・・・
不思議なご縁でやってきたむくにゃん
とーぜん椋鳩十からとった名前なんでしょうが
体もしっかりムクムクですよね(^-^;
椋鳩十記念館の館長さんはやっぱり動物にやさしい方なんですね
また行ってみたい場所が増えました

by にゃにゃ 2016-10-25 13:32

茶とらの子はフレンドリーな子が多いですよねそれにしても不思議ですね。まるで椋鳩十さんが猫に生まれ変わって来たとしか思えません。こうした事ってあるんですね。

by ふみちゃん 2016-10-25 16:32

シートンなどの動物文学が大好きなので、椋鳩十作品も読みました。ぜひむくにゃんにも会いに行きたいものです。

by るんたた 2016-10-25 16:42

椋鳩十さんは鹿児島にも縁の深い方です。県内の小学校の図書室には全集が置いてありました。
小学生の時、夢中で借りて読みました。懐かしいです。 
猫館長のむくにゃんはきっと椋鳩十さんに差し向けられた猫さんなんですね。元気で長生きして本好きさんを増やしてください(^^♪

by さりゅ 2016-10-25 22:11

生き物を愛した椋鳩十の記念館にぴったりの猫館長の記事、
地域の野良猫問題で気持ちが沈むことの多い者にとって、めげずに頑張ろう!と顔を上げられる話題でした。ありがとうございます。

by 桜さくら 2016-10-26 05:30

>にゃにゃさん

鳩十の動物物語は、今でも教科書に載っているんでしょうか・・。
「ムクハトジュウ」って言葉の響きも子どもの私には、不思議な温かさが感じられました。

by 道ばた猫 2016-10-26 08:54

>ふみちゃんさん

猫にまつわる不思議な話。けっこうあるんですよね。一冊の本にしてみたいなあ。
スピ本になっちゃうか(笑)。

by 道ばた猫 2016-10-26 08:59

>るんたたさん

ぜひ! 一応猫事書に書かれた任期は来年3月末までなのですが(飼い主の館長さんが定年なので)、そのあとも猫館長は通いたいだろうからどういう形になるかなあ~と、館長さんはおっしゃってました。

by 道ばた猫 2016-10-26 09:03

>さりゅさん

そうですね、鳩十は大学卒業後ずっと鹿児島で過ごしたのでしたね。最初に学校の教員になって、真夏にふんどしひとつで授業をして、すぐクビになった話が信州人らしいなと思いました。

by 道ばた猫 2016-10-26 09:10

>桜さくらさん

長野市をはじめ、長野県は、みんなで地域の猫を見守る意識が高いそうです。「クレームは来ませんか」という問いに、不思議な顔をされました。広まってほしいですね!

by 道ばた猫 2016-10-26 09:13

はじめまして。
ねこ自慢という番組でむくにゃんが取り上げられていてこのブログに辿り着きました。
番組では椋鳩十が飼っていた猫がモモという茶トラであるとの紹介でした。
モモの生まれ変わりだといいなーと思いました。むくにゃんに会いに行ってみたいです。

by ゆず 2021-12-02 16:11

むくにゃんかわいい

by アイス 2024-02-27 14:33