ナツコさんは、最近よく寝ます。
毛布の上やお日さまのあたる窓辺が大好きで、ひがな、うとうとうとうと過ごします。
きちんと毛布が敷かれているよりは、何枚かの毛布がぐしゃぐしゃっとしているカオスが大好きです。
2~3年前のナツコさんは、隣の農園に出かけては、ネズミやモグラを捕まえるのが日課でした。
意気揚々と、獲物をくわえて帰り、飼い主にプレゼントするのです。
飼い主は、「ナッちゃん、すごい、でかした!」とほめてやり、そっと獲物を逃がしてやるのでした。
ナツコさんの母さんの「モモ」は、立派なキジトラで、ノラの血筋。
にらみをきかせたゴッドマザーでした。
「飼い猫だって何があるかわからない。どんなことがあっても生き抜いていけるように」と、木登りや狩りやケンカの仕方をしっかりわが娘に教えました。
ナツコさんは、シャイで一人が好きな猫でしたから、ケンカなどしたことがありません。
でも、運動神経はバツグンで、ダダダダダッと木に駆け上って2階の窓から帰宅したり、また逆に出かけたいときは、玄関が閉まっていても2階の窓から車庫の屋根に飛び降りて、自由に外出していました。引き戸も自由に開けられるのです。
そんなお外大好きのナツコさんが、だんだん家にいることが多くなりました。
朝夕出かけても、庭先や玄関先で、ひなたぼっこをするくらい。
まだまだお達者なのですが、どうやら耳が遠くなったことを自覚して、遠出を控えるようになったようです。
反比例して、甘えん坊になりました。
飼い主がパソコン仕事を始めると、ドタっとそばで転がります。
寝てるふりをして、薄目でしっかり飼い主を観察しています。
「ナッちゃんは、いつまでもかわいいねえ」と言って撫でてもらうと、ゴロゴロゴロゴロ大音響でのどを鳴らします。
でも、プライドがあるらしく、他の猫がそばにいると、ゴロゴロ言いません。
夏が来るたび、飼い主はこの暑さを越せるかと、高齢のナツコを心配します。
去年はキジトラのとらおばあちゃんが、夏が過ぎた頃、ふっと旅立ってしまいました。23歳でした。
トラさんとは、長いこと反りが合わなかったのに、お互い年をとってからは、一つの猫缶を半分こして一緒に食べる仲になっていたので、とらがいなくなった後は、ナツコさんもちょっと元気をなくしました。
この夏も、食欲が落ち、頬がげっそりして、抱き上げるとふわっと軽いナツコさんでした。
ところが、涼しくなると、、何でもよく食べ、抱き上げるとずっしり重く感じるくらいに、大復活。
飼い主を驚かせています。
若い頃、農園を駆けまわって、バッタやらネズミやら天然のカルシウム分をしっかり摂って、基礎体力がついているのでしょうか。
今でも、動くものが目の前にあると、手を出してしまうナツコさん。
若いころと比べると、輪郭がだんだんボケていく感じです。動作もかなりスローモー。
それでも夕方や明け方に外に出たがり、すぐに手ぶらで帰ってきます。「おみやげなくて、ごめん」といった顔つきで。
飼い主は思っています。
最後の自由猫、と言っていいナツコさんには、延命治療など受けさせず、このまま好きなふうに老いさせ、好きな日に旅立たせてやりたい、と。
ナツコのような老い方を自分もしたいなあ、と。
まだまだ長生きしそうですけどね。
わが家のナツコさん、22歳です。
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
Instagram
やっぱり、佐竹さんのおうちの猫さんだったのですね。 読み始めて、ナツコさんというお名前と綺麗な三毛の毛色に見覚えがあると思っていました。 ナツコさん、私の理想の三毛さんなんです。
22歳、うらやましいです。うちの子は年齢不詳なのですがおそらく5~7歳だろうといわれています。
まだまだナツコさんの足元にも及ばない。どうか元気に、まだまだ長生きしてくださいね。
by さりゅ 2016-11-22 14:35
ナツコさん、若々しいですね。22才にはみえないです。私の実家には25才まで生きた三毛さんがいました。名前は(ミー)子猫の時、やっとご飯が食べられるようになった頃にお母さんを亡くしました。母さんねこを埋葬するときに、(ちゃんと育てるからね)と約束しました。母さんねこが守ってくれたのか、25年も病気ひとつせずに過ごしました。狩りも独学で覚え、野うさぎやりすまで捕まえてきました。最期は、お気に入りの座布団の上で、日向ぼっこしたまま虹の橋を渡って行きました。絵に書いたような大往生でした。お母さんを早くに亡くしたけど人間からこよなく愛され、大往生で猫生を終わり、本当に幸せだったと思います。私もこんな人生でありたいです。
by ふみちゃん 2016-11-22 14:49
人も猫もいつかは老いて最後を迎える。佐竹さん家の猫を通して大切な何かを教えていただいきました。あるがままに自然に、そんな風に生きて行きたいです(^-^)なっちゃん元気で!
by ムーミンママ 2016-11-22 19:49
なんか、じーんとしてしまいました。
これから寒くなります。
ナツコさんもみにゃさんも茉莉子さんもお元気でね。
by あずみん 2016-11-22 20:04
ナツコさん^ - ^
by はな 2016-11-22 22:37
さりゅさん
理想の三毛猫だということ、ナツコさんに伝えました。
ちょっと照れております(笑)。
by 道ばた猫 2016-11-23 00:04
>ふみちゃんさん
おー、25歳まで生きたミーちゃん!
やっぱり三毛は名ハンターで長生きが多いようですね~ それにしても、リスとは!
by 道ばた猫 2016-11-23 00:07
>ムーミンママさん
はい、私もナツコさんたちに大事なことを教えてもらってます。
当猫たちは「ペット」としてではなく、「猫」として一生を終えたいようです。
by 道ばた猫 2016-11-23 00:09
>あずみんさん
あと幾つ、ナツコさんと季節を過ごせるかなあ、と思うとちょっぴり切ないですが。あまりにも個性的な愛しい子なので。でも、考えたら、どの子もそうでした(笑)。
by 道ばた猫 2016-11-23 00:14
>はなさん
ナツコさんは、夜遊びから帰って、ぐうすか寝ています。今朝の地震の時もぐうすかでした・・・。
by 道ばた猫 2016-11-23 00:17
うちの子「だいち(茶トラの男の子です)」も20歳の高齢猫です。3年半前に結婚した旦那の連れ子ちゃんなのですが、今では私にばかり甘えてくるので旦那がちょっといじけています(笑)ずっと病気もせずにきたそうですが、1週間ほど前におなかをこわして初めて病院に行きました。しばらく調子が悪かったので、いろいろ考えて涙が出てきたりしましたが、今はなんとか元気をとりもどしてくれました。私も、あとどれくらい一緒にいられるかと考え切なくなることもありましたが、ナツコさんが22歳というのを見て、まだまだ元気でいてくれるかなぁと思えるようになりました。
by びとりん 2016-11-23 02:26
ナツコさん、いい表情ですね。
佐竹さんのもとで、気持ちを尊重してもらって、伸び伸びと生きて来られたからこそ、でしょうか。
幸せな猫の暮らしのお手本のようです。
我が家もいつかまた、猫と暮らすときには、こんな風に、幸せにしてあげたいです。
by さっちゃんママ 2016-11-23 16:10
>びとりんさん
だいちくん、復活、ひとまずよかったですね!!
まだまだ、ママに甘え足りないから、長生きしてくれると思いますよ(笑)。
by 道ばた猫 2016-11-23 21:46
>さっちゃんママさん
人間の都合で、恋をすることも子どもを産み育てることもさせてやれなかったから、
せめて、ナツコさんの性分に合った暮らしをさせてやりたいのです。
うちの周りは、22年前には畑や原っぱだったので、自由猫生活が続けられましたが。
by 道ばた猫 2016-11-23 21:53
ナツコさん、綺麗な三毛猫ですね。
私たちより、ぎゅっと凝縮した人生を生きている猫を見ていると、いろいろ考えさせられますよね。どんなふうに生きて、どのように終わりたいのか。
ナツコさんは、しっかり猫として生きていらっしゃる^ ^
飼い主と飼い猫ではなく、自由を愛する者同士という感じのする関係が素敵です。
それにしても、モモ母さんの迫力のすごいこと!思わず、はは〜て頭を下げてしまいそうですね^ ^
by ちぃこ 2016-11-25 20:03
>ちぃこさん
モモ母さんは、ふた月ほどは一心不乱に子育てをしていましたが、「はい、子育て終わり!」と決めてからは我が子が前を通っただけで猫パンチしてました(笑)立派な母さんでした。
by 道ばた猫 2016-11-27 00:12
ナツコさん、私にはキリリとしたお顔が若々しく見えて22歳のにゃんこさんとは……びっくりでした
by とも 2016-11-28 18:57
ナツコさんのように自由きままに自然体で私も年をとっていたいです!ナツコさん、素敵な猫さんですね!
by とも 2016-11-28 19:02
>ともさん
愛らしいナッちゃんはいつしか私の年齢を追い越して、「ナツコさん」になりました。
これから私が年を重ねていくお手本です。
by 道ばた猫 2016-11-29 02:47