みにゃさまこんにちは。猫部部長です。
先日発表させていただいた通り、フェリシモ猫部は神戸市と提携し、ふるさと納税を活用した「猫の譲渡事業」を応援していくことになりました。「猫の譲渡事業」というのは、動物管理センターに持ち込まれた子猫を殺処分するのではなく、育てて新しい飼い主を見つける活動です。
神戸市では、平成24年度から猫の譲渡事業を開始していますが、残念なことに、まだ年間684頭の猫が殺処分されており(平成27年度)、その大半が生後すぐの子猫です。
生まれたての子猫を、すぐに譲渡することはできません。人間の赤ちゃんと同じで、生後数週間は数時間おきにミルクを飲ませ、手厚く面倒をみる必要があるのです。神戸市の管理センターでは、その人手や費用が確保できず、殺処分しているのが現状でした。
こうした授乳期の子猫を一時的に預かり、離乳できるまで育てる活動が、「ミルクボランティア」です。
今回は、神戸市でミルクボランティアの受け入れ先になっている、神戸市西区のライフ動物病院 物延(もののべ)医院長にお話を伺いました。(以下敬称略)
猫部
今日はよろしくお願いいたします。
早速ですが、ミルクボランティアの活動はいつから開始されたのでしょうか?
物延
2016年の3月に、生後3日の子猫を5匹預かったのが最初です。これまで約40匹のミルクボランティアを引き受けました。今病院にいる子猫は9期生になります。
神戸市西区 ライフ動物病院 物延医院長
猫部
ミルクボランティアというのは、具体的にはどのようなことを行うのでしょうか?
物延
動物管理センターに持ち込まれてしまった子猫を預かり、離乳できるまでミルクをあげたり、保温などの体調管理をしたりしています。だいたい、6週齢くらいまでは面倒を見る必要があります。
ミルクは3~4時間おきに与えています。生後すぐから2週齢くらいまでは、特に注意が必要なので、スタッフが自宅に持ち帰って世話をしています。
安心して夜間に寝てくれる週齢になれば、動物病院でお世話をしています。
授乳の様子
猫部
ミルクは3~4時間おきですか......。なかなか大変ですね。
その後は、動物管理センターに帰るのでしょうか?
物延
はい、動物管理センターに戻って、新しい飼い主を探すことになります。
お世話をしていると情がわいてしまって、管理センターに返すときにウルウルきちゃったスタッフもいましたけどね(笑)
あと、当院でも里親の募集はしているので、ここで新しい飼い主が見つかることもありますよ。
病院内に里親募集の張り紙
猫部
大変そうですけれど、やりがいもありそうですね。
ミルクボランティアというのは、誰でもできることなのでしょうか?
物延
ある程度の知識と経験は必要になります。
うちでは、病院の看護師5名で手分けして行っているのですが、みんな帝王切開で子猫をとり上げた経験もあったりして、子猫の扱いには慣れていたので、ミルクボランティアを引き受けやすかったと思います。
例えば、生後1~2週で哺乳力の弱い子は哺乳瓶でミルクを飲ませることができないので、カテーテルという器具を使ってミルクを流し込むようにするのですが、下手にやると肺にミルクが入ってしまって危険です。また体温管理の知識や、体調の判断、お腹のすき具合なども把握する必要があります。うちのスタッフは、お腹をさわっただけで、どのくらいミルクが必要かわかりますよ(笑)
カテーテル。想像以上に管が細くて驚く。
猫部
なるほど......。好きというだけでは、ダメかもしれませんね。
お手元にあるのは、子猫のカルテでしょうか?
物延
はい、これまで育てた子猫のカルテです。体重や、哺乳したミルクの量、健康状態などを細かく記載しています。
猫部
1匹の猫を譲渡できるレベルまで育てるのに、どのくらいの費用が掛かるのでしょうか?
物延
60日間育てようと思うと、ミルクやペットシーツなどの費用だけでも6,000円くらいは必要になります。その他、寄生虫の検査と駆除のお金や、人件費なども本当はかかります。
猫部
ミルクボランティアの活動に関して課題に感じていることはありますか?
物延
当院も含めて、神戸市のミルクボランティアは動物病院の看護師さんが中心になって行っています。現在、神戸市内の6件の病院が活動に参加していますが、どうしても受け入れ量に限界があります。
今後は、一般のボランティアの方も活動に参加できるような体制を作っていきたいと思っています。一般の方は、どのくらいできるか見極める必要がありますし、研修なども必要になるかもしれません。
猫部
確かに、ミルクボランティアをやってみたいという方はいると思いますので、受け入れ態勢が整うとよいですね。そして、費用的にも今は持ち出しが多いということですから、安定した予算の確保も、活動の拡大には必要になりそうです。
ちなみに、物延先生は神戸市獣医師会の副会長でいらっしゃいます。獣医師会として現在のミルクボランティアに協力されていますが、活動をどう捉えていらっしゃいますか?
物延
神戸市獣医師会としても、行政ともっと協力して、殺処分削減に取り組んでいきたいと私は考えています。
たとえば、神戸市獣医師会の会長もミルクボランティアに参加しているんです。彼はお酒の席で酔っ払っていても、突然「あっ、ミルクの時間だ」と言って席を立たれたりする(笑)
猫部
素敵なエピソードですね(笑)
行政、獣医師会、ボランティア、そして私たちのような地元企業が協力し合って、殺処分を減らすために活動していければいいなと私も思います。
最後に、猫部の読者の方にメッセージがあればお願いします。
物延
猫の殺処分を減らすためには、もちろん野良猫の不妊去勢手術も大切ですが、ミルクボランティアもダイレクトに殺処分の削減につながります。動物管理センターに持ち込まれてしまった子猫を、殺処分するのではなく、育てて、大事に飼う。命を助けるという気持ちを持って、猫を見てほしいと思います。
取材日当日病院にいた子猫。離乳の訓練中だそうです。離乳食がお鼻についていますね。
ライフ動物病院 http://www.life-ahp.com/
神戸市ではこうしたミルクボランティアや、その後の譲渡にかかる費用を「ふるさと納税」の仕組みを活用して集めています。ご寄付いただいた方には、返礼品としてフェリシモ猫部のグッズをお贈りしています。
ふるさと納税の詳細は、神戸市のホームページをご覧ください。
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みにゃさまのご協力、よろしくお願いいたします。