戸建ての一階、南向き。この家で一番日の当たる場所に三毛猫クラさんはいました。スリムな体型ながら鋭い眼光でこちらを睨みつけ「気安くさわるんじゃにゃいよ。」と前のめりな私を軽く牽制。日向ぼっこのおじゃまをするわけにはいけません。まずは15歳のクラさんの暮らしぶりを、飼い主の日下部さん夫妻にお伺いしましょう。
一番日当りの良い部屋
専用のお部屋を設けたのは今から2年前、クラさん13歳の頃。後からやって来た黒猫「チビ」(9歳)と反りが合わないこと(チビは好意を寄せているというのに......うぅ、悲しい話や)と、腎臓機能の低下がきっかけです。一時、獣医さんからは「覚悟してください」と宣告されたほど、クラさんの体は悲鳴をあげていました。それから「ストレスなしに過ごして欲しい」という家族の思いや、日向ぼっこが大好きなクラさんのために、この家一番の日当りの良い部屋を提供したのでした。
1日1回、輸液の皮下点滴は必須、ごはんも療法食に変えました。いま「死の宣告」から2年が経過しようとしています。ご家族とクラさんが真剣に向き合った結果に感動!太陽を浴びたクラさんが眩しすぎて、ハレーションを起こすのも不思議ではない。
神々しいっす!
腎臓サポートケア
生後3ヶ月でやってきたクラさん。それはご夫婦にとって待望の猫でした。戸建てに引っ越したら「動物と暮らそう」という夢は、インターネットの里親募集サイトで叶うことに。
初めての猫生活を振り返っていただくと、奥さまの泰子(やすこ)さんからこんな言葉が。
「食事にもう少し気を使っていれば......」
後悔があるのもわかります。私だって「一般食」と「総合栄養食」の違いも知りませんでしたしね......。みにゃさん日々勉強です!
現在、クラさんの食事は「腎臓サポートケア」(ロイヤルカナン)がメイン。それを小分けにして与えています。元々吐き癖があり一度に適量を与えてしまうと食べ急いで危険。家族が留守の時は「自動給餌機」を利用して食事量をコントロールしています。
ご主人は小説家
ご主人の匡俊(まさとし)さんはウィキペディアにも出てくる!小説家で、自宅で執筆することも多く、フルタイムで会社勤めしている泰子さんよりも猫たちに接する時間が多いようです。小分けして与えなくてはいけないクラさんの食事スタイルに、ご主人が対応できたことに納得。そのため(なのか?)猫たちはご主人を一番偉い人として認識、奥さまはいまだに「対等」の関係だといいます。結局、胃袋を掴んだ者の勝ちということでしょうか。
皮下点滴を始めて1年半はご主人に任せっきりでしたが、ここ半年は泰子さんも積極的になりました。はじめは「怖くて」射てなかった注射針も、「クラさんと一緒に過ごす貴重な時間が増える」と思えば苦ではない。膝にのせ両手で包み、ゆっくりと点滴を施す。
痛みを和らげるようにさすり、語りかけながら。
このたった3分間がクラさんを強くし、家族の絆も強くするのでした。
これが至福の時間。
クラさん、いつまでもお元気で。
「
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猫又トリップライター紹介
ケニア・ドイ
1972年兵庫県生まれ。ほとんど犬猫カメラマン。著者に「ぽちゃ猫ワンダー」(河出書房新社)、「じゃまねこ」(マイナビ出版)がある。新刊「ご長寿猫がくれたしあわせな日々~28の奇跡の物語~」祥伝社より絶賛発売中。現在、黒背景で行うペット撮影会「ドイブラック」を全国で展開中。
http://kenyadoi.com
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眼力のあるシャンとした美猫三毛さんですね。
必ずしも猫同士仲良くなるものでもないというのは人も同じですよね~~とミョーに納得です。
一時は覚悟して下さいと宣告をうけつつも愛情をたっぷり受け、輸液に身をまかせているのも信頼あるからこそですね~~。
陽の中のクラさん(ちゃんではないですね!)これからものんびりゆるりと過ごしてください!
by あずにゃん 2017-02-04 11:57
あずにゃんさん
目チカラありますよね。。
年を取るとわがままになる。でもこちらの要求も聞いてくれる。
「猫」ではなく「人間」に近づきあるのかも?
by ケニア・ドイ 2017-03-31 08:41