ウギャーちゃんは、推定15歳。三毛のおばあちゃん猫です。
3年前まで、お外で長いこと暮らしてきました。
真由美さんがお母さんと暮らすS市のアパートに、夏になると現れて、いろんな人からご飯をもらって、可愛がられていた猫でした。冬場は潜り込む家があったと思われます。
温厚そのもので、怒った顔など見せたことがありません。
若い時から、鳴き声が「うぎゃ~~」という、なんとも渋い声でした。
そのウギャーちゃん、3年前のある日、「うぎゃ~うぎゃ~」というただならぬ鳴き声を聞きつけた真由美さんが駆けつけるも見つからず。
翌日、植え込みの中に倒れているのを見つけた真由美さんが動物病院へ運びこみました。
交通事故による骨盤骨折。2か月入院して、なんとか歩けるまでに回復しました。
が、もう外には戻せないと、真由美さん宅に迎え入れられました。
骨盤の位置がずれたままなので、ウンチが詰まった時は、真由美さんがゴム手袋でゼリーをつけて掻きだしてやります。
また、慢性腎不全なので、家で毎日点滴とお薬。ウンチが固まらないよう、おなかのマッサージも欠かせません。
ウギャーちゃん、独特の野太い声なので、動物病院へ行ってひと声鳴くと、待合室じゅうが大笑い。ちょっとした人気者なのですって。
ウギャーちゃんを保護したばかりの時、北海道で働いている真由美さんの弟さんが、ちょうど実家に帰ってきました。
弟さんが、近所の友人の家に遊びに行くと、友人曰く、「可愛がってたノラが急に来なくなって、お母さん、落ち込んでるんだ」
「その猫なら、うちの姉ちゃんが助けて入院させて、今、うちにいるよ」と、弟さん。
ウギャーちゃんを、そのお宅に連れて行って見せたら、お母さんは涙を流して喜んでいらっしゃったそうです。
優しい町に住みつき、いろいろな人に可愛がられていたとはいえ、年をとって障害もあるウギャーちゃんに終の住処(ついのすみか)ができて、ほんとによかった!!
じつは、真由美さんちには、ウギャーちゃんのほかにも3匹の猫さんが。みんな、見過ごせずに、保護した猫ばかりです。
この5年間に、まる、プティ、ウギャー、チャリと立て続けにメス猫ばかりワケアリを4匹保護しているのです。
最初にやってきたのが、サバ白のまるちゃん。5年前の春のことでした。
当時、真由美さんは自宅でお父さまの介護中。弟さんも同居していました。
一家みんな、犬派で、猫には特に関心はなかったそうです。
まるちゃんは、アパートの駐輪場の自転車籠をねぐらとしていて、可愛がる人もいて、ゴハン大好きのよく太った外猫でした。
暴風雨のある日。電車も止まって、夜半にやっと帰宅した真由美さんに、お母さんが「猫の餌、ない?」と聞きます。
なんと、お母さん、暴風雨の中、駐輪場にいるまるちゃんが気になって、「行くとこないの?」と尋ね、「うちにくる?」と思わず声をかけてしまったのでした。
「お父さんの介護もあるし、だめじゃん」と大反対した弟さんが、「飼うのなら、トイレ買いに行かなきゃ」と動き回ってくれました。
真由美さんも、「飼うのなら、責任もってちゃんと飼わなきゃ」と、「愛玩動物飼養管理士」の資格を取りました。「今後、ボランティアもしやすくなるのでは」という思いもあったそうです。
「ごはん」という言葉にすぐ反応するほど、食いしん坊のまるちゃん、獣医さんから「ちょっとダイエットしましょうね」と言われ、ダイエット中です。
さて、その翌年、4年前の冬にやってきたのがサビ猫のプティちゃん。
アパートの下に突然現れ、まるちゃんが寝ていた自転車籠をねぐらとした、うら若い小柄の痩せた猫でした。
そのうち、どこかで育てていたらしい2匹の子猫も自転車置き場に連れて来て、籠の中で3匹丸まって寝るように。
用心深く、なかなかなつかなかったのですが、毎日ご飯を運んで、少しずつ手なづけ、里親募集のため、獣医さんへ。
子猫2匹は一緒にもらわれていきましたが、オトナ猫で真由美さん以外にはなついていない母猫のプティちゃんは、真由美さんちの猫に。
痩せて小さかったので「プティ」と名づけたのですが、今では、堂々たるサビ猫です。
その翌年、3年前にやってきたのが、ウギャーちゃん。
そして、去年の夏、真由美さんの職場近くの、都内平和島からはるばる連れてきたのが、サビ三毛の「チャリ」ちゃんです。
もともと工事現場の自転車置き場にいた子で、工事のおじさんたちに可愛がられていたのですが、工事現場が移って、つれて行ってもらったものの、もとの場所に戻ってきていろんな人にご飯をもらっていた子です。外暮らしは10年を超え、夏になると毛ははげ、冬になると鼻をぐちゅぐちゅさせていました。
真由美さんは、年末年始も、薬を飲ませに通っていましたが、去年の夏、また脱毛がひどくなったチャリを見て、「この子も年だしなあ」と思うといたたまれず、電車にのせて連れ帰りました。
推定年齢13歳くらい。
今では寒い冬も、真由美さんが「猫たちのハワイ」と呼ぶこたつの中で、ウギャーちゃんとまったりです。
そして、チャリちゃんを保護した平和島で、この冬の初めにも、また一つの出逢いが。
見たこともない子が、衰弱してふらふらと通勤途上の道に出てきたのです。
すぐに、保護して、動物病院へ。
「私、いつも、洗濯ネットとトートバッグを持ち歩いているんです。それさえあれば、SOSの猫に出会った時、病院に運んであげられるから」と、真由美さん。
瀕死のその子は、手を尽くしてもらったものの、5日目に病院で眠るように亡くなりました。
「でも、その子のために何かしてあげたいと思って」と、真由美さんは、ペット火葬をして、お骨を家に大事に置いています。
平和島で出会ったから、「ピース」くん。
どんな猫生だったのか・・・。でも、最後に真由美さんに出会って、よかったね。
お骨になったけど、ここは、ピースくんの終の住処です。
真由美さんは言います。
「生き物を飼うって、責任をともなう。この子たちに出会うまでの私は、自分のことしか考えないで生きてた。でも、いまは、お仕事にも張り合いがあるし、ちゃんと生きなきゃと思います。猫のために頑張ろうと思えば、風邪もひかない(笑)。とくに年寄猫は、お金も手間もかかるけど、その可愛さといったら、ほんと格別です。穏やかだし、心が通い合うし、お留守番もよくしてくれるし。年より猫を引き受ける人がもっともっとふえてほしいですね」
ウギャーちゃんはじめ、元ノラの4匹さん、あたたかな終の住処でどうぞ長生きしてくださいね!
お知らせひとつ。
昨年9月の道ばた猫日記「
ボクの妹」で紹介した、美術館の通い猫虎之介と瀬奈ちゃんの仲良しぶりが、今日夜19時から、「まさはる君が行くポチたまペットの旅」(BSジャパン)で、放映されます。来週と、2週続くそうですよ~
写真
道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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なんて優しいご家族。何て幸せなねこさんたち!
by るんたた 2017-02-07 16:48
ウギャーちゃん、優しい家族に恵まれて本当に良かったですね。読んでいて胸がいっぱいになりました。お世話は大変だと思いますが、頑張ってください。
by ゆーこ 2017-02-07 17:01
年をとってからこんなに優しいおうちで暮らせて本当によかったです。みんにゃ長生きしてくださいね!
by さりゅ 2017-02-07 17:36
ウギャーちゃん、しっかりと生きている証がお顔にでていますね、とってもいいお顔!(*^_^*)
とーっても優しいご家族のお家で暮らせて本当に幸せですね。まるちゃん、プティちゃん、チャリちゃんも!!真由美さん、素晴らしいですね!読んでいて感動して涙がでました。真由美さんのご家族も………ピースくんもきっと喜んでいますね(*^_^*)真由美さんのお家に絶対絶対猫の恩返しがあると思います!!佐竹さんのブログで紹介される方々は本当に素晴らしい方々ばかりですね!!尊敬致します。
そして……美術館の猫ちゃんですね!仕事でまだ帰宅していないので録画を家族に頼みました!家族はリアルタイムで観ているはずです。うれしい情報をありがとうございます♪
by とも 2017-02-07 19:17
るんたたさん、ゆーこさん、
さりゅさん、ともさん、コメントありがとうございます!
「道ばた猫日記」の1ファンだった自分と我が家のニャンズが、こうして取り上げていただけるとは、夢のようです……
我が家のニャンズはみなお外暮らしだったので、今でも洗濯ネットとトートバッグを持ち歩き、保護活動とねこ貧乏(笑)の生活は続けていくつもりです。これをきっかけに保護活動やシニア猫を家族に迎えることを考えてくださる方が1人でも増えてくださると嬉しいです。
そして佐竹さん!素敵な文章とお写真、本当にありがとうございました!
by あべんぬ 2017-02-07 21:21
まゆみさん、この前このブログを教えて頂いたゆみです。
チャリちゃんの元気な写真拝見できて良かったです
by ゆみ 2017-02-07 22:32
世の中の人がみんな佐竹さんや読者の皆さんのような人達なら、どんなにいいことでしょう。悲しいことにひどい人間はいくらでもいます。私も人に自慢できるような、立派な人間ではありませんが、せめて小さな命を大切にする心は忘れないでいたいです。
by ふみちゃん 2017-02-07 22:40
>るんたたさん
老猫に外暮らしはキツイもの。真由美さんのような方に出逢えて、ウギャーちゃんもチャリちゃんも、ほんとうにしあわせだったと思います。
by 道ばた猫 2017-02-08 07:16
>ゆーこさん
いろんな名前の猫さんに出会ってきましたが、「ウギャー」ちゃんほど、インパクトのあるお名前は初めて(笑)。じっさい、その「うぎゃ~」の鳴き声を聞いたら、もう忘れられなくて。
by 道ばた猫 2017-02-08 07:22
>さりゅさん
ウギャーちゃんは、元来の性格もあるでしょうが、愛されて、まさに「福猫」のお顔。
うちにも老猫がいますが、老いた猫の愛おしさは本当に格別です~
by 道ばた猫 2017-02-08 07:25
>ともさん
いつも洗濯ネットとトートバッグという話を聞いて、ほんとうに頭が下がりました。
「ちゃんと生きる」という言葉も、すごく胸に残りました。
by 道ばた猫 2017-02-08 07:32
>あべんぬさん
真由美さんは、子猫をきょうだいでもらっていただいたというコメントを下さっていた、あのあべんぬさんだったんですね! 写真展に来てくださったことで、猫の縁がこうして深まりました。ありがとうございます!
by 道ばた猫 2017-02-08 07:37
>ゆみさん
チャリちゃんのお外時代を知っていらっしゃるのですか!
おこたのなかの「ハワイ」で、まったりのんびりくつろいで幸せそうでした~
by 道ばた猫 2017-02-08 07:40
>ふみちゃんさん
猫好きでなくとも、「ほっておけない」「見過ごせない」という心は、誰もが潜在的に持っていると、信じたいですが・・・・。まず、捨て猫・虐待はとんでもない犯罪ということを社会に徹底してほしいですね。
by 道ばた猫 2017-02-08 07:49
いつも素敵なお話、ありがとうございます。
真由美さんの行動力、凄いですね。見過ごせない、ほっておけない優しい気持ちがわかるのか猫ちゃんも真由美さんに助けを求めて現れるのでしょうか?
私もねこちゃん大好きですが、いざ助けを求める猫が目の前に現れたら行動できるかわかりません。
せめて今うちにいてくれてる猫ちゃんたちは何があっても守り抜こうと思います。
美術館のねこちゃん、見逃してしまいました。来週こそは見たいです。
by 2にゃんこは宝物 2017-02-08 12:58
もう完全にNNNに認定されているとしか思えない(゚▽゚;)
by NNN都市伝説はありだと思う 2017-02-09 01:31
ゆみさん、チャリは元気にしていますよ!
肥満細胞腫が脚の付け根に見つかり、腎数値も高めなので、月1ペースでの血液検査で様子見てますが、良く食べ、ハワイで(笑)良く寝ています。
顔見知りの公園ネコの餌やりの方に会った時には、チャリは元気ですよとお伝えしてます。先日公園でゆみさんにお会いできて、このブログのことをお知らせできて、本当に良かったです!
by あべんぬ 2017-02-09 10:22
>2にゃんこは宝物さん
今家にいる子を終生大切にすることが、いちばんの基本ですとも。
2ニャンコさんとずっとお幸せに!
by 道ばた猫 2017-02-09 11:02
>NNN都市伝説はありだと思うさん
はい、真由美さんは、捨て猫をやさしい人のもとへ派遣するあのNNN(ねこねこネットワーク)に「優良物件」として認定されたのだと思います。うちも、以前は認定されていたらしく、次々と舞い込む時期がありましたが、この頃は年齢制限にひっかかった模様です。
by 道ばた猫 2017-02-09 11:07
あべんぬ、という名前で
何度かコメントさせていただいていました。
プティの仔猫2匹は、ソレイユとルナという名前をつけて、約3か月間毎日ご飯を与え保護しました。
そして、NNN……初めて聞きました!
茉莉子さんのブログに登場してきた方、全員「優良物件」に認定されてそうですよね(笑)
by あべんぬ 2017-02-09 12:02
私も猫好きですが、とても真似の出来ない活動をされていて、頭が下がります m(_ _)m
猫さん達も、幸せに暮らせて良かったですね♪一匹でも多くの猫さんが幸せになります様に…
by 猫の肉球 2017-02-12 00:00
>猫の肉球さん
同感です。「やむにやまれず」がきっかけでも、「ちゃんと飼う」ことを大切になさって、どの子にも愛を注いでいる…ほんとうに頭が下がります。
by 道ばた猫 2017-02-13 03:44
世の中 こんなにも心優しい暖かい人達がいらっしゃるなんて本当に胸がいっぱいになります
優しい人に出会えた猫ちゃん 良かったね 大変でしょうが無理のないよう頑張ってください
素敵な心温まるお話に出会えて私も幸せな気分になれました ありがとうございます
by 京都のキキです 2017-02-16 23:04
京都のキキさん、コメントありがとうございます!
4匹のニャンズの母はなかなかに大変ですが、毎日楽しんでお世話させてもらっています。
まるが家族になってから約5年間のネコ人生(笑)をこうしてまとめていただき、たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しく思います。
by あべんぬ 2017-02-23 08:35