5年前の道ばた猫日記「古い町の古い店の古い猫」で、ご紹介した喫茶店の外猫みーちゃん。
あのとき、すでに20歳の大年増でしたが、5年を経て、25歳を迎える今、まだまだお達者です。
お客のいないときや猫好きの客だけのときは、よく店の中でママのお膝で甘えています。
25歳と言えば、もう化け猫の部類(失礼!)。美魔女というべきでしょうか。
目も耳も、かなり悪くなっているようですが、しっかりした顔つきと目ヂカラを見れば、まだまだ元気でいてくれそうです。
私がみーちゃんと出会ったのは、とある夕方。近くの出版社に用があって、駅への近道を通るためにこの界隈にさしかかったのでした。
すると、夕闇のなか、大きな白黒猫が右を見て、左を見て、それから右を見て、悠然と通りを渡っていくではありませんか。
あとをついていき、この喫茶店に一緒に入っていったのです。みーちゃんが案内してくれなければ、前を通ってもきづかないくらい、ひっそりとたたずむ古い店でした。
店内はまさにわたし好みのレトロさで、運ばれてきた珈琲のおいしかったこと!
まだ、みーちゃんがこの界隈を闊歩していた10年前のことです。
10年が経ち、用心深いみーちゃんはもうめったに道を渡らなくなりました。
それでも、この前の朝、、マスターが店に来るときに、前方に、通りを渡って店の方に戻ってくるみーちゃんに遭遇したそうです。
「ちゃんと、右を見て、左を見て、それからまた右を見てわたってたんだよねえ。びっくりしました。『みー』って呼んだら、すぐ気づいて急ぎ足でやってきてね、『目も耳も悪いなんて、おまえ、嘘じゃないか』と」と、マスターは笑います。
いい感じに飴色に年を経たこの店は、いい感じに年を経た猫によく似合っています。
マスターご夫妻がみーちゃんの面倒を見るようになってから、22年。その前に、みーちゃんは鰻屋さんの路地で3年ほど路地猫として暮らしていました。
いろんな人におやつをもらっていましたが、マスター夫妻もあげるように。ある日、店までついてきて、以来、店の外にいついてしまったというわけです。
小屋を作ってもらい、通る人たちからも、店の客からも可愛がられ、若い頃はマスターの自転車の後ろの籠に乗って町内ひと回りが日課でした。。いまよりもっとこの町がのんびりしていて、路地猫も多かった頃のこと。
「この町で路地猫はすっかり見かけなくなりました。飛び出して交通事故で死んだ子もいるし、もらわれていった子もいるし。みーは、この町の25年を見てきたんだねえ」と、マスターは感慨深げ。
年と共に、みーちゃんは店のなかに入れてもらう時間が長くなりました。
みーちゃんの面倒を見始めてからの22年、マスターご夫婦は、旅に出たのは、たった一回だけ。それも箱根への一泊で、みーちゃんが気になって気になって、早々に帰ってきてしまいました。
毎朝、店にやってきてマスターがまずすることは、みーちゃんの目と鼻を拭いてやること。みーちゃんは慣れたもので、お顔を突き出して待つのだとか。
店は土日が休みですが、マスターは、朝昼晩、ゴハンを届け、みーちゃんの様子を見に来ます。
なまりをほぐしたものにカツブシを振りかけたゴハン。煮干しをさっとゆでて頭をとり、刻んだゴハン。ささみをゆでたゴハン。一日3回、たっぷりの愛情ご飯です。
寒い時期は、毎日ベッドにホカロンを入れてやります。もちろん、雨よけはバッチリ。
みーちゃんは、店に入りたいときは、外で鳴きます。
店から出たいときは入り口に立って、振り返ります。
いずれも、すぐに気がつくマスターです。
住宅事情から、みーちゃんを自宅に迎えることのできないご夫妻ですが、家猫にけっして引けを取らない暮らしぶり。
「骨格がしっかりした大猫で、賢くて、ストレスもないから、ここまで長生きしてるんだと思います。でも25歳だから、いつ何時ふっと旅立つかわからない。その覚悟はできてます」とマスター。そして、こう続けます。
「みーがいるから、私たちは、体が思うようにならないこの歳になっても、お店にやってくるのが苦にならない。雨の日も雪の日も、酷暑の日も。みーに、私たちは生かされているんです。みーがこうして元気でいてくれるから、がんばれる」
「そう。ふたりだけで、お店続けていたら、つまらなかったと思う。通る人やお客さんに可愛がってもらって、みーもしあわせだけど、私たちもおかげでしあわせ。この子は福猫。すごいお返しをもらってます。」と、ママさん。
最近は、なじみ客の間でも、触るといいことがある福猫の評判なのだとか。
最近は、サラリーマンのみならず、学生風の可愛がってくれる猫好き男子が増えたといいます。
「みなさんに可愛がっていただけるのは、本当にありがたいけど、もう25歳なので、寝ているのを起こされたり触られたりするストレスはなくしてやりたい」とのことなので、お店の場所や名前はここに書きません。みーちゃんに巡り合った方は、起きているときにそっとなでてやってくださいね。
福猫みーちゃんの恩返し、まだまだ続くことでしょう。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
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道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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自由な外暮らし、マスターやママさんたちとのふれあい、手作り愛情ご飯…。なんとシアワセなみーちゃんの生活❤️
そして、それ以上にシアワセをもらっていると言うマスターとママさん。ほのぼのあったかいお話をありがとうございます。
うちの子たちも、みーちゃんみたいに長生きして欲しいな〜。
by ふ〜みん 2017-04-04 16:12
すごいですね。25歳とは、なかなかいません。やはり生活する環境は大切ですね。そしてお互いを必要とする心、何だか普段忘れがちな、大切なことを教えてもらいました。/以前、書いた(うまそう)くんですが、先月に虹の橋を渡ったそうです。一歳の誕生日は迎えられないと、宣告されながら、3年間、本当によく頑張りました。今頃は我が家のそらと再会して、仲良く走り回っていると思います。天国ではそらの方が先輩なので、きっと先輩気取りでいると思います。
by ふみちゃん 2017-04-04 16:51
ここでは猫と人がゆっくりとした時間の中で25年間もそっと暮らしてきたんですね。夢のような、物語のような、そんな雰囲気を漂わす空間です。願わくば一瞬でも永く、この時間が続きますように。
by あずにゃん 2017-04-04 17:24
みーちゃんの武勇伝を書き忘れてしまいました。大型犬が近づいてきても、道の真ん中で5羽のカラスに囲まれても、まるで動じなかったという伝説を持っています。肝っ玉の据わった姐さんだったようです。
by 道ばた猫 2017-04-04 20:55
>ふ~みんさん
外猫で25歳って、驚異的ですよね~。
持って生まれた健康体もあるでしょうが、マスターたちに、そして、この町に愛されているという精神的な平穏が、みーちゃんの元気を保っているような気がしました。
by 道ばた猫 2017-04-04 21:01
>ふみちゃんさん
うまそうくん、1キロ足らずの小さな体で、よく頑張りました。えらかったね。冥福を祈ります。
そらくんといっしょに、天国で思い切り走り回ってね。
by 道ばた猫 2017-04-04 21:09
>あずにゃんさん
猫がいる。それだけで、その空間は、人間のあくせくしたリズムを、鎮めてくれますね~
ここは、本当に物語のような店なんです。
by 道ばた猫 2017-04-04 21:15
実家のねこのくろろは25歳で大往生しましたが、みーちゃんまだまだ頑張れそうですね! すごい! えらい! そしてお店のマスターも奥様も素敵です。こんどこっそり、福を分けてもらいに行きたいものです。
by るんたた 2017-04-04 21:17
>るんたたさん
クロロさん、25歳で大往生ですか! ご立派です。
うちのナツコも22歳ですが、まだまだ元気です。
みーちゃんもナツコも福猫です~
by 道ばた猫 2017-04-05 01:38
みーちゃん、25歳!すごいなぁ、まだまだ元気ですね♪マスターとママさんとみーちゃんが支えあって生きておられる感じがしてとってもうらやましいです。みなさんきっと、ずっとずっとお元気ですね!みーちゃんのお顔もきりりと意志を感じる良いお顔ですね。マスターとママさんの大きくて深い愛情がみーちゃんにもご自身にも幸せを運んでくるのでしょうね!感動いたしました。
by とも 2017-04-05 07:01
みーちゃん、すごいですね。貫禄というか、眼力がありますね!きっとまだまだ頑張ってみんなに幸せくれることでしょうね。いつまでもお元気でいて欲しいです。ちなみに私の母のネコちゃんは24歳で天寿を全うしました。最後のほうは随分と病院にお世話になりましたが、元気な頃はカラオケを楽しむ母の傍らで、いつもうっとり母の歌を聴いている子でした。みーちゃん頑張ってね♡
うちの子達も長生きして欲しいです♡
by ぺったんの母 2017-04-05 10:16
>ともさん
マスターは、ちょっと先の路地猫ゆきちゃん17歳にも、毎日ホカロンとご飯を運んでいるんですよ。
(ゆきちゃんも路地におうちがあって、みんなに可愛がられています)いい町です。
by 道ばた猫 2017-04-06 01:04
>ぺったんのお母さま
みーちゃん、毎日マスターにブラッシングしてもらってるので、ビロードのような毛触りなんです。
お母さまのところの猫さんも、24年間寄り添ってお幸せでしたね!
by 道ばた猫 2017-04-06 01:07