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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2017年04月18日

風になった風(ふう)ちゃん

風ちゃんは、雑木林の中にあるギャラリー「風草(かぜくさ)」の看板猫。

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ここを訪れる人たちに愛されてきました。ちょっとツンデレではありましたが。

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私も、風ちゃんがコナラの木々の間を散策する姿や、下草の上でうたた寝する姿に出会うのが、とても楽しみでした。

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雨上がり、外に出たがってた風ちゃんに「散歩に行こうか」と声をかけて一緒に林に行ったら、はしゃいだ彼女が一気に高い木に駆け上ったこともありました。

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林は、印旛沼を見下ろす崖の上にあります。ギャラリーのオーナーは、陶芸家の美子さん。
風ちゃんは、17年前、ガリガリの姿でこの崖を必死に登ってきて、猫嫌いだった美子さんを「私の飼い主はこの人」と決め、陥落させたのです。(道ばた猫日記「崖を登ってきた猫」)

そして、広い林を我が庭としたのでした。

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朝になると、雑木林の光のなかへ。
印旛沼が暮色に染まるまで、美しい自然の中で過ごします。

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美子さんが大好きで、甘えたくなると足元に付きまとい、抱っこをせがみます。
胸に顔を埋めて眠るのが、風ちゃんにとって至福のひとときだったのです。

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そんなしあわせな風ちゃんでしたが、「巨大結腸症」という病気が判明し、6年前に大腸の3分の2を切る大手術を乗り越えました。
術後がうまくいかず、再手術。
いっときは、調子がよくなったと思われたのですが、やはり体調は思わしくなく、病院通いの日々でした。

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今年2月に風草に行ったとき、風ちゃんは子猫のような軽さになっていて、その澄んだ目を見ると、すでに旅立つ準備に入ったことを感じさせました。

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旅立ちは、大好きな風ちゃんの遊び場の林が、野スミレやタンポポやキンポウゲで春色に刺繍された、気持ちのいい日。
その2日前まで、食べて、自力でトイレにも行って、ふだんとそう変わりなく過ごしていたとか。
容態が急変してからは美子さんの膝に抱かれ、最後に大きく息を吐いて旅立ったそうです。まるで「さようなら。ここにきてとってもしあわせだったよ」と言うふうに。

風ちゃんは、いま、17年前に彼女が登ってきた崖の上に眠ります。

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風ちゃんを愛した友人たちと共に、きのう、林の中のベンチで、風ちゃんを偲びました。
さらさらさらと、コナラの新芽が風にそよぐたび、そのあたりを風ちゃんが歩き回っているよう。

「風ちゃん、風になったね」
「うん、さっきからずっとこの丘で遊んでる。病気から解放されて」
「すごくしあわせな猫だったね」

そのことを、口々に美子さんに告げると、2週間泣いてばかりだったという美子さんにほんのり笑顔が戻りました。
「そうね。あの子は風になって、ずっと私のそばにいてくれるのね。あの子に選んでもらって、あの子と暮らせてしあわせだった」

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風ちゃんは、風になりました。これからも、大好きなママと一緒です。


☆お知らせ3つ

・今発売中の「猫びより」5月号特集「猫様の教え」で、道ばた猫日記でご紹介したあのゴンちゃんとリオくん、再び登場。
真琴つばささんのインタビューも担当しました。おばさまが遺した「片目・鼻づまり・歯なし・猫エイズキャリア」のミーちゃんを看取った話の中で、
「障がいを嘆くこともなく、ふつうに暮らした彼女に生きる基本を教えてもらった」という言葉がとりわけ印象的でした。

・長野県飯田市の「アートハウス」で「里山の子さっちゃんと仲間たち」展、23日まで展示中です。

・今週金曜21日から、千葉県匝瑳(そうさ)市の、猫のいる美術館「松山庭園美術館」で、毎年恒例の「猫ねこ展覧会2017」が始まります。今年は、7月30日までと会期たっぷり。私は、サチとゴローの2点を出品しました。


「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。

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里山の子、さっちゃん
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。

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写真

道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

数年前、こちらのブログでギャラリー風草さんを知り、遊びに行って風ちゃんと出会いました。
食事をいただくわたしの前で寝そべって、たくさんなでさせてくれて、とっても可愛い子でした。
ギャラリーもとっても素敵で、ご紹介いただいたことに感謝です。

最近、知り合いの犬猫さんたちの訃報を何件か知って、哀しい気持ちになる日々が続いています。

風ちゃんは風になったんですね。
もう風草さんにいっても会えないのは寂しいけれど、風を感じることで風ちゃんを思い出すことにします。

by あやねこ 2017-04-18 13:17

心より風ちゃんのご冥福を祈ります。
風草と美子さんと風ちゃん、美しくやさしく穏やかなあの場所を思い出します。

風ちゃんと雷ちゃんの魂に守られて、風草はもっと神秘的な場所になりそう。
たくさんの人たちの往来とともに、草も木も風も澄み渡る場所に。

美子さん、元気出してね。笑顔でいてね。

茉莉子さん、ありがとうございました。
風のように飛びまわって、猫とにゃんげんをつなげてくださっているのですね。
飯田のアートハウスの写真展も素敵でした。

by あずみん 2017-04-18 14:50

風草に行くといつも愛嬌をふりまいてくれた風ちゃん。とてもチャーミングでした。印旛沼を望む丘の雑木林をそよがせる風になったんですね。美子さんの胸に抱かれて最期を迎え、とても幸せだったと思います。いつかお線香をあげに伺いたいと思っています。安らかに。

by ムヨク 2017-04-18 15:33

風草に行くと、風ちゃんに会うのが楽しみでした。
可愛い鳴き声で美子ママをに甘えている声が今でもハッキリと聞こえて来ます。

時々抱っこもさせてくれました。
長いしなやかな毛ざわり、私の好きなピンクの鼻と白い口元、本当に美猫でしたね。
本当に寂しくなりました。

風草の庭の木々のささやきに、風ちゃんの遊んでいる姿を思い浮かべ、ご冥福をお祈りします。

by チセママ 2017-04-18 17:06

風ちゃん、風になったんですね。崖を必死に登って、見事幸せを手に入れたお話はとても素敵で、感動しました。印旛沼周辺は自然が豊かでとても良い所です。きっと今は、病気から解放されて元気に走り回っていると思います。我が家のそらにあったら仲良くして欲しいです。

by ふみちゃん 2017-04-18 17:09

風になって、雲間から雨を降らせ花を咲かせてくれることでしょう。きっと、美子さんにまた会いに来てくれると思います。

by まる 2017-04-18 20:22

>あやねこさん

また、ゆっくり風草に、風に吹かれに行ってください。そして、愛らしかった風ちゃんを思い出してやってください。風草には、クックちゃんという黒猫もいるのですけれど、シャイすぎて、姿を見せない幻のネコなんです~

by 道ばた猫 2017-04-19 05:01

あずみんさん

そうですね、光と風とやさしさの溢れる神秘的な場所に、いっそうなりますね。
いろんな人の思いを結びつけて。また、風草で会いたいですね~

by 道ばた猫 2017-04-19 05:05

>ムヨクさん

ほんとうに、最後を大好きな美子さんの胸の中で、迎えられて、病気で苦しんだとはいえ、充分にしあわせな一生でした。印旛沼を見下ろすお墓は、自由猫風ちゃんにぴったりです。

by 道ばた猫 2017-04-19 05:10

>チセさん

そうそう。風ちゃんの甘え声は、ほんとうに愛らしかった。子猫のようでもあり、哲学者のようでもあり、貴婦人のようでもあり、いろんな貌を見せてくれましたね~

by 道ばた猫 2017-04-19 05:14

>ふみちゃんさん

そら君と、風ちゃん。お空で会ったら、きっと愛され自慢をし合うことでしょう。
みんなみんな、いとしい猫たち!!

by 道ばた猫 2017-04-19 05:18

>まるさん

そうですね! 「ここがわたしのおうち!」と決め、のびのび遊びまわった地で、自然に還る。なんてしあわせな猫でしょうか。

by 道ばた猫 2017-04-19 05:22

ふうちゃん、とても良い猫生だったでしょうね。クールなお顔で甘えん坊さんなのがまた可愛いですね。風になったのですね。読んでいて涙があふれました。窓から外をみている写真が特に好きです。ふうちゃんの表情がたまりません。アートハウスさんも松山庭園美術館さんも行きたいです!

by とも 2017-04-19 06:56

>ともさん

崖を登ってくるまでにどれだけの放浪があったのかわかりませんが、大人猫で現れて17年。
いい猫生だったと、祝福したいです。

by 道ばた猫 2017-04-19 21:56

子供の頃まるで、トトロのような景色の中で育った私は少し歩かないと小さな商店もなく
家の周りは森みたいで、なんだか懐かしくなりました、その頃同じような森を自由に生きる猫のクロちゃんが家に居て彼女も森に暮らし家を宿とし暮らしてました。あの自然とクロちゃんを思い出し幸せな時代が懐かしくなりました。

by りんりん 2017-04-20 08:11

旅立つ準備をしている時のふうちゃんの眼差しと、ふうちゃんよりちょっとだけ先に旅立った ちー子の眼差しが重なりました。思い出すと悲しいけれど、ニャンコってすごい、ジタバタしないし、なんて立派なんだろうと思います。

by ぺったんの母 2017-04-20 15:09

>りんりんさん

私も森や川や原っぱに囲まれて育ったせいか、自然の中にいる猫の表情が一番好きです。
森に暮らした思い出、素敵な財産ですね!

by 道ばた猫 2017-04-20 20:15

>ぺったんのお母さま

ほんとうに!
猫って、恨まず、愚痴らず、他の猫生をうらやまず、長生きしたいとじたばたせず、自然に還る。
見事だなあ~って、いつも思います。

by 道ばた猫 2017-04-20 20:21

まりこさん、るいさん、ちせさん、そして、あずみさん、たくさんたくさんの風を可愛がってくれた皆さんありがとう御座いました。

by 風 2017-04-21 21:58

風草の代名詞のようだった風ちゃん。風草のお庭で風になり、木漏れ日になり、雨の滴になり、いつも美子さんを見守ってくれていると思います

by ruinekoか 2017-04-22 18:53

>風ちゃん

たくさんの思い出をありがとう。
ルカちゃんや風太くんも引き連れて、風草で風になってたんと遊んでね。

by 道ばた猫 2017-04-22 23:38

>ruinekoさん

まさに風ちゃんを見ていたら、「ひたすらに自分の生を生き、淡々と自然に還る」という動物の本来の姿がわかりますね~ 感謝。

by 道ばた猫 2017-04-22 23:43