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[猫ブログ] いろいろな連載と、ときどきお知らせ。

道ばた猫日記

2017年09月19日

「めぐりあい」その3・・・しあわせな猫

先週のワタちゃんに引き続き、大阪中崎町の古民家カフェ「ピピネラキッチン」のゆいこさんが手を差しのべてくださった猫のお話をご紹介します。

その猫、ノリくんは、今は天国です。
ちょうど1年前の9月12日に旅立ちました。
ですから、1枚目のこのピピネラ看板猫しじみちゃんの写真以外は、すべて、ゆいこさんと里親さんのノリコさんにお借りした写真になります。

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でも、「しあわせな猫」として、私はどうしても皆様に、ノリくんの短い一生をお話したかったのです。

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路地でカフェをやっているゆいこさんのところには、ときたま、神様から「いよいよ困ったら、あそこに行きなさい。親身になってくれるから」と言われて訪ねてきたような捨て猫や放浪猫が訪れます。しじみちゃんもそうでした。

そして、5年前のその日も・・・。
夕方、お店を終えてドアを開けたゆいこさんが見たのは、お店の真ん前の路上にぽつねんと座っている1匹の黒猫でした。
「ほんとうに、訪ね当ててやってきた、という感じでした」と、ゆいこさん。

ガリガリに痩せて、でも、頬だけが腫れあがったその猫は、「助けてください」というふうに、ゆいこさんを見上げました。
鼻水は垂れ、よだれも垂れ、ヒゲは折れ曲がっています。

すぐさま、獣医さんへ。点滴入院をして元気を取り戻したのですが・・・。
この子は、猫エイズと猫白血病のダブルキャリアでした。年齢はまだ1歳くらいのようです。人馴れしているので、元飼い猫かもしれません。

先住猫たちと一緒にするわけにはいかず、別室での隔離保護となりました。
海苔のように黒いから、名は「ノリ」に。
陽があまり当たらない部屋で、まだ若いのに他の猫たちとも遊べず、ふびんでしたが、しかたがありません。
「ひなたぼっこして、家じゅうのびのび遊び回れるような、「ふつうの猫」の毎日を送らせてやれたら」と、ゆいこさんはいつも思っていました。

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保護して1年8カ月。
ある日、ゆいこさんの友人のノリコさんが、17歳の娘アスカちゃんといっしょに、ノリくんに会いに来ました。
アスカちゃんとノリくんは、バッチリ気が合って、長いこと一緒に遊びました。

帰り道の母娘の会話。
「お母さん、ノリくん、ひとりぼっちの部屋でかわいそう。うちの子にしよう」
「うん、いいよ」
「病気ふたつ持ってるけど」
「いや、べつにいいんじゃないの」

その2日後に、ノリくんは、アスカちゃんちにやってきました。
「もしかしたら、寿命が短いかもしれないけど、寿命とか治療が大変とかということに重きは置いてなかったです。ただ、寿命の限り、のびのびと、普通の生活をさせてやりたかった」と、ノリコさんは言います。

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そして、はじまった「ふつうの猫」の暮らし。どの部屋も出入り自由で、好きな場所で好きなだけひなたぼっこでき、寝るときは大好きなアスカちゃんと一緒。

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ゆいこさんち時代から引き続いての、自宅でのネプライザー(薬液吸入器)使用や補液の皮下点滴にもとても協力的でした。ネプライザーでの吸入はボックスの中でするのですが、入る時もシッポを上手に丸めて入り、終わったら「もういいの~?」と出てくるおりこ うさん。

ノリくんは、どうも自分をアスカちゃんの「彼氏」と自認していたようです。
人間の彼氏をアスカさんが連れてきたときの、ノリくんの顔と言ったら。「エッ、ボクじゃないの」と言いたげだったとか。

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そんなしあわせな暮らしは2年続きました。
ノリくんは「ボクは病気やから」ということがわかっていたようです。だから、アスカちゃんのお布団に潜りこんだり、好きな場所でひなたぼっこしたりするのがうれしくてたまらないようでした。

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台所で、ノリコ母さんにおねだりも。

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でも、ダブルキャリアの子は、極端に免疫が低く、いったん具合が悪くなると、手を尽くしても一気に衰弱してしまいます。

今夜がヤマと思われた日、ノリコさんは仕事を休み、アスカさんも学校を休みました。
そして、ノリくんは「しあわせな、ふつうの猫」として、天国へ戻っていきました。

ゆいこさんは、ノリコさんにこう聞いたことがあります。
「ほかに保護猫がたくさんいるのに、なんでノリくんなん?」
ノリコさんはこう答えたといいます。
「うん、ノリやねん。・・・・・ノリやねん」

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ピピネラキッチンで、ノリくんの思い出話を、ノリコさんとゆいこさんに聞かせていただいた日。
ゆいこさんが、しんみりしてしまった雰囲気を変えるかのように、きっぱり言いました。
「ヘタにダラダラ生きとる子より、4年でも、ノリくんの一生は、ずっとギュッと濃縮されてしあわせだった!」

ヘタにダラダラ・・・は、うちを含め、耳の痛い飼い主さんも猫さんも多々いるでしょうが(笑)、それもしあわせに違いないのですが、大笑いしたことでした。

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写真を見ただけでもかわいいかわいいノリくん。
しあわせなめぐりあいをもって、たくさんたくさん愛された、しあわせな一生でした。
そして、ノリくんのようにけなげに自分の与えられた寿命を生ききった猫と暮らしたノリコさん母娘も、目に見えない大きなプレゼントをノリくんから受け取ったのだと思います。


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道ばた猫日記ライター紹介

佐竹 茉莉子(さたけまりこ)

フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。

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カテゴリ: 道ばた猫日記
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みにゃさまのコメント

ノリちゃんのお話を読んで、我が家のタロにゃんのことを思い出してしまいました。ちょうど5年前、白血病を発症して3か月で亡くなりました。4歳でした。雨の中、妻が鼻水と目やにでぐじゅぐじゅになっていた子猫を拾ってきました。白血病のキャリアとわかり、いずれ発症するのではと覚悟していても、いざ発症して日々衰弱していくのをみているのはつらいものでした。ほかの5匹の飼い猫のまとめ役的存在だった彼の姿が甦り、しんみりしています。

by ムヨク 2017-09-19 14:49

今回も素敵なエピソード、ありがとうございます。

ノリコさんの、「うん、ノリやねん・・・、ノリやねん・・」、物凄くわかります。

by 桜さくら 2017-09-19 15:09

佐竹さん
これから仕事に行くのに
涙が止まりません・・・

素敵なお話を
ありがとうございました。
ノリちゃん、とっても可愛らしい。

猫と人との
『めぐりあい』
わたしも信じています。

巡り合った
うちの子がもっと愛おしく感じます。

by よーこ 2017-09-19 15:10

我が家のそらが亡くなった時に、あまりの悲しさに、カウンセラーの方に話を聞いて頂いたことがありました。その方によると、そらは、短い命とわかっていたそうです。でもどうしても私と娘に会いたくて来てくれたそうです。ノリくんもきっと同じように会いに来てくれたんだと思います。私はそらに会えて、短い間でしたが本当に幸せでした。ノリくんもきっとママやお姉ちゃんに会えて、幸せだったと思います。今頃は天国でまた会うために、生まれ変わる準備でもしてくれていたらいいですね。

by ふみちゃん 2017-09-19 16:00

たくさん愛された猫は、神様からも求められて、早く天国に行ってしまうのだというような話を読んだ事があります。
ご家族とノリくんの日々は、簡単に想像できない、濃いものだったのでしょうね。
でも、シアワセな時間だったことは分かります。
切ないけど、素敵なお話をありがとうございます。

by ふ〜みん 2017-09-19 16:30

我が家にもめぐり合いがよくおこります。場所が変わっても不思議とめぐり合い、4匹を見送りました。微力ですが、これからもニャンコのために頑張ります。病気になって見送ることは本当につらいことですよね。でも私も夫もたくさん幸せもらいました。ノリ君もきっと幸せだったと思います。そして我が家の見送った4匹と、現在元気な3匹の子達もきっと幸せだと思いたいです。

by ぺったんの母 2017-09-19 16:49

茉莉子さん、今回も心温まる素敵なお話をありがとうございます。FIPで保護してから約1か月で旅立った部長のことを思い出しました。
少しの時間でも、自分を最後の家族に選んでやってきてくれたのが嬉しかったですね。
ノリちゃん、短くも濃い猫生を謳歌して、きっと幸せだったと思います!

by あべんぬ 2017-09-19 18:23

>ムヨクさん

タロちゃん。あずみさんの絵の中で、会いました。愛らしい猫さんでしたね。
我が家のミュウミュウも、ドブにおちていた猫で、白血病のキャリアで数カ月の命と言われましたが、12年半生きました。天使のような子でした。

by 道ばた猫 2017-09-20 02:51

>桜さくらさん

ノリやねん。しみじみ、よくわかりますね~
うちも、ケンジやねん、ナツコやねん、菜っ葉やねん。

by 道ばた猫 2017-09-20 02:54

>よーこさん

画家のますむらひろしさんが「猫は可愛がった分だけせつないもの」と言っていましたが、「せつない分だけかけがえがない」とも思えますね。うんと可愛がってあげてください。

by 道ばた猫 2017-09-20 02:58

>ふみちゃんさん

これは私見なのですが、寿命が長いことを切望するのは、ニンゲンだけのような気がするのです。猫たちは、超越して、ただただ「今を生きている」気がします。そして「めぐりあい」に関しては、すごい特殊能力を持っているような・・・。

by 道ばた猫 2017-09-20 03:03

>ふーみんさん

たしかに。間際の子は、「お空に帰っていくんだ」というような、澄んだ目をしていますものね。
うちも、みんなきれいな目で旅立ちました。

by 道ばた猫 2017-09-20 03:11

ぺったんのお母さま

「見送った子たちも現在の子もきっとしあわせ」・・・・こういうことこそ、ほんとうの人と猫の共生であり、めぐりあうことの幸せだと思いました!

by 道ばた猫 2017-09-20 03:16

>あべんぬさん

「部長」さん、どんな猫生だったのか、わかりませんが、最後にあべんぬさんちの子として見送ってもらえて、ほんとうに心安らかでしあわせだったと思います。ありがとうございます。

by 道ばた猫 2017-09-20 03:22

ノリくん、しあわせな猫生でしたね。ノリくん、ノリコさん、ゆいこさん、アスカさん、みなさんなんて素敵なのでしょう!!
神様の「いよいよ困ったら……」ノリくんの「訪ねてやってきた」「アスカちゃんの彼氏自認」……クスッとほっこりしました(*^_^*)
佐竹さんの文章も素敵で心にじわっとしみいる温かいお話を今回もありがとうございました!

by とも 2017-09-20 06:57

>ともさん

猫って、ときどき「エッ」って顔しますよね~
うちは「はあ?」って顔もしますし、「いい加減にして」って顔もします(笑)

by 道ばた猫 2017-09-21 22:16

いつも読ませて頂いてます。

写真からも愛情が伝わってきますね
ジーンときてしまいます。
でもダラダラ生きてる猫って?いるのかなぁ~
つっこんでスミマセン…

by しゃこ 2017-09-22 09:00

>しゃこさん

ダラダラ猫、うふふ、たしかに。あれは、ゆいこさんなりの愛情表現なんですよ~。だから大笑いしたんです(笑)。ダラダラしてても、一生懸命。どんな寿命の長さでも、しあわせであれば、いちばん。

by 道ばた猫 2017-09-23 08:14

出会いは別れがついてますね 涙

by にゃんママ 2019-04-07 01:57

出会いは別れがついてますね (涙)  沢山 出会い、今は天国で遊んでいる子、元気にしているかな?
今、膝でゆっくり寝ている子も 保護からだいぶ痩せて半分に成っていますが 毎日懸命に
生きようとしています 一日 一日を大切な時間を一緒に過ごして最期まで見守ります  
のりくん 幸せだったね 天国で 家の子達と仲良くしてね

by にゃんママ 2019-04-07 02:07