広島出張のあった先週、久しぶりに倉敷に泊まることにしました。
といっても、着くのは夜、しかも、そぼ降る雨。それはそれで楽しむことにします。
観光名所よりは古い商店街が好きな私は、宿に荷物を置き、夜の町を少し歩くことにしました。
あ、さっそく岡山県のPRをしている猫さん、発見。
やぎひげがとってもチャーミング。
よく見ると、3匹いました。
ファミリーでしょうか。きつい顔つきでもなく、堂々とお店の前にいるのを見れば、ここでご飯をもらっているようです。
町角には、人待ち顔の猫さんも。
美観地区に通じる昔ながらの商店街に、わたし好みの喫茶店がありました。もちろん、とっくに店じまいの時間です。
2階の丸いテラスがレトロで、いい感じ。
ガラスのドアから、何の気なしに店内の薄灯りに目をやると、なんと、愛らしい子猫がいます! 2か月くらいの子でしょうか。
思わず、中で片付けごとをしていたママさんに、「その子、かわいい!」と手真似でメッセージを送ってしまいました。
すると、ママさんは、にっこり笑って、「どうぞ」と、店内に招き入れてくださったのです。
「かわいいでしょう。この子は、ひと月前に保護したばかりだけど、この店の副店長よ。『麻耶』って名づけたの。店長は、ほら、そこにいます」
と、ピアノの前の椅子に座る、どっしりした大猫さんを紹介してくれました。。
「桃の花の咲くころに来たから、『もも』。オスですけどね。9年前にフラッと現れたのだけど、その時すでに10歳近かったから、もう18歳くらいのおじいちゃん」
まやちゃんは、店の前で、モモちゃんとにらめっこをしているのを、保護したのだとか。捨てられたばかりなのか、手のひらに乗る小ささだったと言います。
営業中の店長さん・副店長さんぶりを見たくて、翌朝の開店時間を聞くと、
「朝8時には開けてます。本当は9時からだけど、ご近所さんたちが8時からいらっしゃるの」
というわけで、翌朝、8時に再訪しました。
ご近所さんが、モーニングを食べに、雨の中、次々と来店。
自動ドアが開いた隙に、モモ店長がするりと朝の散歩に出かけます。
外に行ってしまったももちゃんが気になってたまらないまやちゃん。
まやちゃんは、ももおじいちゃんが好きで後追いするのに、モモちゃんは、「こんなちびっこ」と、うざがって全然相手にしてくれないのです。
いつもはひと廻りするそうですが、雨なので、しかたなく、隣の商店の軒下で道行く人を眺めるももちゃん。
「ももちゃん、おはよう」と、いろんな人が声をかけてくれます。すっかりこの路地の「顔」なんですね。
お向かいのタバコ屋さんに雨宿り場所を移したももちゃん、ここでも「おはよう」と声をかけてもらっています。
なんていい風景なのでしょう。
「濡れるから、もう中にお入りなさい」と、ママさんに連れ戻されたももちゃん、ちょっと不満げです。
朝の散歩の後のももちゃんの定位置は、奥の予約席と決まっているようです。
窓から見える、裏庭の大きな一枚岩は、昔、ここが海だった名残りだと、ママさんが教えてくれました。
朗らかできれいなお声のママさん、シャンソンをずっとなさっていたそうですが「80歳でやめました」とのこと。
えっ、80を超えていらっしゃるなんてとても思えない身のこなしと声の張りにびっくり。娘さんに手伝ってもらってこの店を続けているそうです。
看板に「カメラ」の文字があるのは、ご主人がかつて、ここでカメラ店を営んでいらしたから。
倉敷では、美観地区・準美観地区ともに、昔の看板を遺していて、それが町歩きの楽しみの一つにもなってくれます。
ママさんの接客の温かさに加え、ご近所さんたちの間で、
「気ぃつこうてくれて、ありがとう」「若い人たちが町のためにようしてくれて助かる」といった、優しい言葉が飛び交うのをそっと聞きながら、おいしいコーヒーをゆっくり飲んで、こんな気持ちのいい朝は久しぶりと思えました。
「ももちゃん、またきっと来るからね。元気でね」
そうささやくと、ももちゃん、大きな音で「ゴロゴロゴロゴロ」と返事してくれました。
この次来る時は、まやちゃんはすらっとした美人さんに、ももちゃんは、ますますシブい男になっていることでしょう。2匹の距離は縮まっているかな。
駅に急ぐ道すがら、雨の中の倉敷猫に遭遇。とげとげしさのない町で暮らす猫は、みないい顔をしています。
次は岡山を歩きます。ここでも少ししか時間がないのですが、猫に遭えるでしょうか。山陽の猫、来週に続きます。
「道ばた猫日記」から書籍が生まれました。
『
里山の子、さっちゃん』
動物たちはやさしく、気高い。助け合い、ともに生きる猫たちの物語。
『
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』
フェリシモ猫部の心温まるブログ、完全版として待望の書籍化!
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道ばた猫日記ライター紹介
佐竹 茉莉子(さたけまりこ)
フリーランスのライター。路地や漁村歩きが好き。町々で出会った猫たちと寄り添う人たちとの物語を文と写真で発信している。写真は自己流。著書に『猫との約束』『寄りそう猫』『猫だって……。』『里山の子、さっちゃん』など。朝日新聞WEBサイトsippoにて「猫のいる風景」、辰巳出版WEBサイト「コレカラ」にて「保護犬たちの物語」を連載中。
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なんとも落ち着く所ですね〜そして猫ちゃん達の平和そうな顔❣️
カフェでは良い出会いがありましたね
by ふにゃたも 2017-10-24 12:08
良い街ですね。人も猫も優しい表情で、のんびりと穏やかでいられるっていいですね。こうした街で暮らせば、自然と心が癒されていくんでしょうか。猫に理解の足りない所に住む私にはかなり羨ましいです。
by ふみちゃん 2017-10-24 14:39
ステキなステキなお話有難うございました。私も男の子だけどモモちゃんとなずけた保護猫がいました。ほんとうは百次郎とつけたのですが、気が付いたらモモちゃん、モモちゃんと溺愛してました。(笑)
by ぺったんの母 2017-10-24 15:14
偶然こんなにたくさんの猫ちゃんと出会えるなんて羨ましい…
岩合さんのよう(=^ェ^=)
私も出会いたいなぁ♪
by あか 2017-10-24 15:23
どの子もかわいいですね〜
最後から2枚目の子!好みです(*´艸`*)
なかなか他所の土地には行けませんがこうして疑似体験で楽しませていただきます。
by 16にゃんず 2017-10-24 17:20
偶然こんな素敵なお店に巡り合えるなんてさすがですね(*^-^*)
佐竹さんにはきっと猫神様が導いてくれてるんですね♪
by ミミチロ 2017-10-24 19:17
佐竹さん
毎週火曜日が、私の大事な大事な時間になっています。
ブログありがとうございます。
私は岡山市に住んでいます。
いつも、行ってみたいなあと想いを馳せるばかりでしたが、なんと明日にでも行ける場所を、佐竹さんが、紹介してくださっている!
嬉しくて嬉しくて。やっぱりあったかくって。
今日はフー子の命日でした。2年が経ちます。
毎回こころの中でいっぱい話しているけれど、今日はコメントにしたくなりました。
2歳になるさんちゃんとはっちゃんがいまは一緒にいてくれます。
あらためて、佐竹さん
いつもありがとうございます!
by じゅんこ 2017-10-24 21:10
わぁー!なんて素敵な町なのでしょう!
最初の岡山県アピールの子もおめめキラキラ、なんて可愛いお顔♪
モモおじいちゃんも元気で貫禄もあって素敵!まやちゃん、モモおじいちゃんにはうざがられているようですが(笑)とても良いお家にめぐりあえて良かったね(*^_^*)やはり猫ってセンサーが働くのかな?
まさに道ばた絵日記、とーーっても素敵なお話と写真をありがとうございました(^-^)
by とも 2017-10-25 07:09
岡山の美観地区は会社の旅行で訪れましたがバタバタと時間がなく、いつか再訪したいと思っている場所です。こんなに優しい時間が流れているんですね。その時は猫さんを探しつつゆっくり散策したいです。ももちゃんの貫禄が素敵です。
by さりゅ 2017-10-25 07:46
>ふにゃたもさん
そうなんです。猫たちが安心している街は、人々も安心できる街。
相互作用なのだと、改めてつよく思いました。
by 道ばた猫 2017-10-25 10:25
>ふみちゃんさん
猫問題は人間問題って、よく、言われますが、結局そういうことなんですよね~
ニンゲン関係の真っ只中に、猫たちは暮らしているわけですから。なんとか、全国共通理解を進めたいですね。
by 道ばた猫 2017-10-25 10:29
>ぺったんのお母さま
ぺったんといい、百次郎といい、なんて素敵なネーミング!
「花」ちゃんとか「すずめ」ちゃんとかいう名のオス猫にも出会ったことがあります~
by 道ばた猫 2017-10-25 10:34
>あかさん
わたしの町歩きのコツは、昔風の名前の通りを歩くことなんです。「本町「「中央町」「昭和町」「鍛冶屋町」「門前町」といった・・。そういう町には、昔ながらの「共生」が根付いていることが多いです。
by 道ばた猫 2017-10-25 10:38
>16ニャンずさん
ぜひ、これからもブログ上で疑似体験を楽しんでください! 励みになります。
最後から2枚目の猫さんは、勝気そうだけど、人恋しそうな若い子でした。朝ごはんをくれる人がくるのを待ってたみたいです。
by 道ばた猫 2017-10-25 10:42
>ミミチロさん
そうなんです。猫が居心地よさそうと思う嗅覚は異常に(笑)発達してます。
やっぱり、前世は、ノラ猫だったみたいです。
by 道ばた猫 2017-10-25 10:44
>じゅんこさん
さんちゃんとはっちゃんが、今はそばに。フー子母さんも安心してると思います。
今回の「ウエダ」さんもですが、次回の場所も、きっとじゅんこさんのお気に入りになると思います。(もうご存知かも、ですが)
by 道ばた猫 2017-10-25 10:49
>ともさん
最初の子、バックの文字が背中にかぶって、遠目にチビ怪獣みたいに見えて、とってもかわいかったんです。近寄っても、無邪気にこっちを見てたので、商店街でかわいがられてるのだと安心しました。
by 道ばた猫 2017-10-25 10:52
>さりゅさん
喫茶店「ウエダ」は、美観地区の手前で、準美観地区になるのですが、あさ、法被姿の若者がゴミを拾って回っていました。観光人力車をひく若者たちが、ボランティアで、毎朝、我が町をきれいにしているそうで、喫茶店にいらした年配のご近所さんが「あの若い人たちは、挨拶もようできるし、町はきれいにしてくれるし、ほんとに大助かりじゃ」と言っていたのが心に残りました。
by 道ばた猫 2017-10-25 10:58
古き良き素敵な街並みですね〜。ビールののぼりの一部になっているようなキジトラちゃん可愛い❤️味のあるお顔のももちゃんが、ママさんに連れ戻される姿ものどかでほっとする光景ですね。どの子も、のんびり穏やかに暮らしているのが伝わってきます。街灯に照らされ、雨に濡れた路面もキラキラ美しく✨猫に優しい街は、やっぱり人も住みやすい街なんだろうなぁと思いました。今回も素敵な猫日記をありがとうございます。ウエダさん、いつか行ってみたいな〜^^
by kimiko 2017-10-25 21:08
>kimikoさん
ウエダのママさんいわく、まやちゃんは、保護した時は「ものすごーく、ぶちゃいく」だったそうです(笑)。いつか、ぜひ。
by 道ばた猫 2017-10-25 22:59
ウエダのももちゃん七夕の日に虹の橋を渡りました
彼ほど人を惹きつける猫さんはいませんでしたしこれからも現れないでしょう
ももちゃん、ありがとうね
膝の上に乗ってくれた時の暖かさ忘れないよ
by りお 2019-08-09 05:24